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我が家の地下にレアダンジョンができたんですが・・  作者: エクスボーン


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第四十四話 彼の名前は

 中に入ってたのは一冊の本だった。

 一瞬例の日記が頭をよぎる。

 しかしすぐに違うということに気付く。

 おそらくこれはスキルブックだ。

 その名の通りスキルを覚えることのできる本である。

 聞いたことはあったが実物を見たのは初めてだ。


「これはとんでもないプレゼントをくれたもんだな」

「そうなの?」


 見た事もないのに、なぜこれがスキルブックと分かったか?

 答えは簡単だ。表紙にこう書いてあった。

 

『アイテムボックスの書』


 ファンタジーでおなじみのアレである。

 あったら便利ナンバーワンなスキルだろう。

 思っている通りのスキルであればもうこのカートは必要なくなるだろう。

 手ぶらでダンジョンに潜ることができるのだから。

 俺は早速ワクワクしながら本を開いてみた。


「・・読めねえ」


 本を開いてみたはいいが、全く見たことのない文字と様々な魔法陣が各ページぎっしり書かれていた。

 しばらく見ていると不意に頭の中に色々な情報が流れ込んできた。

 どうやら見るだけで自動的にスキルを覚えられるらしい。

 慣れない感覚でちょっと気持ち悪いが、それも数秒で終わった。


「これでスキルが覚えられたのかな?」


 随分と簡単で拍子抜けしてしまったが、とりあえずステータスウィンドウで確認してみよう。

 久しぶりに頭で念じて、ステータスウィンドウを開いてみる。

 そこにはしっかりとアイテムボックスのスキル名が記載されていた。


「さっきのはるーんもじなの。『じ』と『まほうじん』をくみあわせると、いろいろなげんしょうがおこせるの」


 みーちゃんがそう説明してくれる。

 俺は再び本に目を落とすが、中身は全て白紙になっていた。

 あのルーン文字と魔法陣が俺の頭の中に入ってスキルになったのだろう。なんて便利。


「この本はもう何の役にも立たないの?」


 みーちゃんに白紙になった本を差し出してみる。


「おえかきちょうにはなるの」


 おーけー。ただのメモ帳決定。

 まぁ一応ギルドに報告はしておくか。

 もし高倉さんが欲しいって言ったらあげちゃってもいいし。

 まあ今はそんなことよりも、アイテムボックスの練習をしてみよう。

 先ほど流れ込んできた情報には使用方法も入っていた。

 とはいえ簡単だ。

 ステータスウィンドウと同様に頭の中に念じると、目の前に黒い穴が開く。


「せいこうなの」

「そうだな。とりあえず何か入れてみよう」


 何を入れようか周りを見渡してみて、とりあえず手に持っていたスキルブックを入れてみることにした。

 穴に落ちるという感じではなく、穴に触れた時点で吸い込まれる感じだった。

 続いていつもお世話になっているカートを入れてみることにする。

 ちなみにアイテムボックスの穴は、直径が大体バスケットボールと同じぐらいだ。

 カートの方が大きいので普通なら入らないだろうが・・


「これも入ったな」

「なんでもはいるの」


 穴の淵に引っかかることもなく、吸い込まれる時に一瞬大きさが変わって飲み込まれていった。

 ○次元ポケットと同じように、しまうものの大きさに制限はないらしい。

 もちろん情報としては頭の中にあったが、実際に見てみると面白い。

 それ以外の説明として生物は入れられない、容量は無制限、中身の時間停止、内容物は頭の中にリストアップされる・・

 と、よくある仕様の(?)アイテムボックスだ。

 ひとつだけ他のアイテムボックスと違う点があるとすると、使えるのはダンジョン内だけということだ。

 外に出ると使えないので、外にアイテムを持ち出す場合は一度荷物を出してから外に持ち出す、またアイテムボックスにしまう場合は外からダンジョンに持ち込む必要がある。

 まあこんなスキルがダンジョン外で使えたら、えらいことになると思う。

 密輸し放題じゃん。

 いや、そもそもダンジョンを経由すればそれすら可能ではないだろうか?

 日本のダンジョンで何かしまったものを、海外のダンジョンに行って表に出す。密輸完了。

 やばくない?

 間違っても犯罪に使ってはならない。

 せっかくの大精霊様からのプレゼントなんだから、悪い使い方はするべきではない。


「ゆーちゃん、もうかーとはつかわないの?」

「そうだね。アイテムボックスがあればもういらないかもね」


 みーちゃんの問いかけにそう答えると、みーちゃんはちょっと悲しそうな顔をした。


「じゃあ、もうみーちゃんはかーとにのれないんだね」


 ほむ。

 確かにアイテムを積み込む必要がないので御役御免にも思えるが、みーちゃんを運ぶのにはあった方がいいのかもしれない。

 そうでないと移動中はずっと肩車になってしまう。

 別にみーちゃんは重くないので肩車したところで苦ではないが、アイテムボックスを手に入れたからとさよならするには愛着も多いので、これからはみーちゃんの移動用として新たなお役についてもらおう。

 俺はアイテムボックスの中から再度カートを取り出す。


「じゃあこれからはアイテムを入れないでみーちゃんの移動専用にするから、何か名前をつけてあげたら?」

「ありがとうなの!」


 みーちゃんは満面の笑みで俺にお礼を言うと、腕を組んでカートの名前を考え始めた。


「よし、おまえはきょうから『らいど○ん』なの。よべばどこにでもくる、すごいくるまなの」

「みーちゃん、その名前は色々ヤバいからやめよう。俺もその車好きだけどさ」

「しかたないの。じゃあ『だいふく』にするの」


 まあそれなら、みーちゃんらしくていいかもね。

 自分の好きな物の名前をつけてあげるくらいこのカートのことを気に入ってるんだな。

 

「じゃあみーちゃんはダイフクに乗ってくれ。ギルドに向かうぞ」


 無事にカートの名前も決まったところで、俺たちはギルドを目指して出発するのだった。

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