表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
我が家の地下にレアダンジョンができたんですが・・  作者: エクスボーン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/202

第三十五話 水辺のみーちゃん

 というわけでテントが完成した。

 ドーム型のテントで、俺とみーちゃん二人なら余裕で入れる。

 さらには二人分のローチェアーを組み立て、テーブルもセッティングする。

 基本的なモノはこれで完成だ。

 昼はバーベキューをするが、大きなグリルは使わずに卓上コンロを使う予定だ。


「ふぅ、とりあえずこんなもんだな」


 作業してのどが渇いたために、俺はクーラーボックスからスポーツドリンクを取り出す。


「みーちゃんも何か飲むか?」

「おれんじじゅーすがいいの」


 みーちゃんはオレンジジュースが好きだ。水の精霊だから水がいいというわけではないようだ。

 俺は500㎖のペットのオレンジジュースをみーちゃんに渡す。


「飲みきれなかったら、またクーラーボックスに入れておけばいいからね」

「わかったの」


 そう言ってみーちゃんはくぴくぴジュースを飲む。

 両手でボトルを持って少しずつ飲む姿を見てると、なんだか癒される。

 そして満足したのか、ぷはぁと言って口を離す。ちなみに五分の一も減ってない。


「やっぱりおれんじじゅーすはさいこうなの」

「・・そうだな。オレンジジュースは美味いよな」


 なんというか、こうしてみると本当にただのちみっ子だ。

 まあかわいいのだからちみっ子でいいのだろう。

 仮にみーちゃんが大人サイズだったとして・・いろいろ困ると思う。

 大きなみーちゃんを肩車してる画、大きなみーちゃんと一緒に寝てる画。

 ・・アウトだ。


「じゃあ、そろそろ水辺に行ってみようか」

「まってましたなの!」


 みーちゃんは飲みかけのオレンジジュースをいそいそとクーラーボックスにしまい、俺の手を取って歩き出した。

 俺もそのままみーちゃんの手を握って水辺に向かう。

 と言ってもほぼ目の前なので、すぐに到着する。


「きれいな湖だな。結構澄んでる」

「そうなの。あっちのいけもわるくないけど、ここにはかなわないの」


 あっちの池とは不忍池の事だろう。

 まあ、あっちはあくまで池だし、水質保持のためにJRや京成の地下ホームから湧水を汲み上げて放流していたはずだ。

 環境保全のために人の手が多くかかっている。もちろんこれはいい事だと思う。

 ただみーちゃん的にはより自然な方が好きなのだろう。


「きっとここなら、みーちゃんはふるぱわーをだせるの」

「ほう、具体的には?」

「みずのたつまきとか、おおつなみとか」

「少なくともダンジョン以外では使わないでね」


 こんなところで使われたら大惨事だ。

 どうやら水の精霊なのはダテじゃないようだ。

 と、みーちゃんはぱしゃぱしゃと水に入っていく。

 といっても、脛ぐらいまでの浅いところだ。


「ゆーちゃん、きもちいいの」

「あんまり深くまで行かないようにな」

「だいじょうぶなの。みずのせいれいはおぼれないの」


 そりゃそうだろう。水の精霊が溺れるとか・・

 そんな状況をイメージするが、シュールすぎる。

 俺が心配したのは溺れることではなく、目立つことだ。

 服を着たままの女の子がざぶざぶ水の中に入っていくなんて、さすがに騒ぎになる。

 別にみーちゃんが精霊である事を隠したいわけじゃない。

 ただ事情を知らない人間からすれば、通報クラスの出来事になりかねない。


「ほんとうはみずにもぐって、もっとたわむれたいの」

「んー、夜中にこっそりやるなら大丈夫かな?」

「いいの。これだけでもじゅうぶんきもちいいの」


 苦労を掛けるねぇ。いっぱい美味しいものを食べさせてあげるからね。

 とりまBBQだな。デザートにはいつもの豆大福も持ってきてる。

 ある程度準備したら、杏ちゃんを誘いに行ってみるか。

 今は十時半。もう少し遊んだらBBQの準備をしよう。


「ゆーちゃん、ぼーともうかんでるね」

「ああ、釣りをしてる人がいるみたいだな」

「おひるごはんにたべるのかな?」

「いや、たぶん釣れたら逃がすと思うよ。ここら辺の魚は食べるのには向いてないと思う」


 キャッチアンドリリース。スポーツフィッシングだな。

 釣りはほとんどやったことがないが、どうせやるなら海釣りがやってみたい。


「たべないのにつるなんて、へんだね」

「んー、まあ俺も釣るなら食べられる魚の方がいいけど、あの人たちは釣り上げることが好きなんだろうね」


 趣味なんて人それぞれ。人の価値観を否定しても仕方がない。

 ・・アレンで学んださ。


「みーちゃんは釣りは嫌い?」

「よくわかんない。さかなをとるなら――」


 みーちゃんが手を水面に向ける。

 するとバスケットボールほどの水が水面から浮かび上がる。

 その中には魚が泳ぎまわっている。急に水面から出て驚いてるようだ。


「こうすればとれるの」

「これは釣り・・いや漁?」


 とりあえずみーちゃんに釣りの楽しさを説明するのは難しそうだ。



 しばらく水辺で遊び、俺たちはサイトに戻ってきた。

 みーちゃんは水に濡れたが、すでに魔法で乾燥済みだ。ダンジョンの外でも魔法が使えるのは便利だ。

 さて、BBQの準備を始めよう。

 まずは食材の準備だ。

 と言っても、野菜は家で切ってきた。肉にも下味をつけてある。

 やることと言ったら、ビニール袋に入っているそれらを皿に盛りつけるだけだ。

 キャンプ飯に手間をかけて豪勢な料理を作る人もいるが、そういうのは俺は家でやる派だ。

 簡単に楽しく。不便を楽しむ。

 それが俺のキャンプのポリシーだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。これからも楽しみにしてます。
[一言] 小さい頃20%位のオレンジジュースとピーチジュースを混ぜて飲むのが最高に美味いと思ってたら、大人になってファジーネーブルなるものがあると知った大学時代の俺。 でもやっぱりノンアルコールの方…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ