第二十五話 やってきた者たち
三本目行きます。
次の日の朝。
セーフエリアでみーちゃんと寝袋に入り一泊した。
ここに潜る準備の時に、みーちゃんに子供用の寝袋(青)を買ってあげたら大喜びで抱き付かれた。
宝物のように大事に使ってる。
そのうち壊れるんだから、気にしないでいいなんて言うのは無粋だろう。
今も埃をはたいて奇麗に畳んで袋にしまっている。
そんな姿を見てるだけで昨日の疲れも吹き飛ぶ。
ちなみに『自由な人生』の面々はここにいないので、別のセーフエリアで一泊したのだろう。
さて朝飯だ。
さすがにカップ麺では足らない。なので大量に持ってきた袋麺を使う。
大きめの鍋にお湯を沸かし袋麺を五つ投入。今回は味噌味だ。
麺が茹で上がったら、粉末スープを入れて完成。
「このらーめんもおいしいの」
「外に出たら、ちゃんとしたラーメンを食べに行こうな」
みーちゃんは何でもおいしく食べてくれる。
とりあえずみーちゃんがお腹いっぱいになるまで食べてもらい、残りを俺が食べる。
さらに追加で五袋分作り、それも完食した。
一日の始まりの朝食はしっかりとらないとな。
「よし、今日も頑張るか」
「おー!」
二人で気合を入れてダンジョンに出発した。
昨日は約120羽狩った。今日はどうなるだろうか?
あれから二日過ぎた。
もちろんいまだにフラワージュエルは出ず、食料もなくなりかけてる。
増えるのは疲労とドロップの羽根ばかりだ。
仕方ない一度戻ろう。これ以上の無理はいけない。
朝から昼の狩りを終わらせてそう決断し、みーちゃんにも伝えた。
「いいとおもうの。ゆーちゃんのかおいろもすこしわるいし」
「そうなのか? それじゃ外に出たら一日ゆっくり休もう」
「そのほうがいいの」
自分で思っているよりも疲れが出てたらしい。
昼食は桜木亭でとることにして、出口に向かって走り出す。
現在カートはドロップアイテムの羽根でいっぱいなので、みーちゃんは肩車している。
すると間もなく大勢の人の気配がしてきた。結構な数の話し声も聞こえてくる。
「何だ? この階層にたくさんの冒険者が来るなんて?」
特に美味しい狩場でもないこの階層はほぼ通過のようなものだ。
それとも大勢でボス部屋にでも向かっているのだろうか?
通路の先の角を曲がると彼らはいた。
「あれ!? 龍二さん。レンも!?」
「おお豊。ちょうどいい時に会えたな」
「ゆーさん、お疲れさまです」
龍二さんやレン、彼らのパーティーメンバー、この前俺の戦いの時に集まってくれた冒険者たち。さらにはそれ以外の冒険者も多数いるようだ。
つまり百人以上いることになる。
「豊、ギルマスから話は聞いた。お前はいつも水臭いんだよ」
「そうですよ。どう考えても人手が必要なんですから、僕らを頼ってください」
「え、じゃあみんなもフラワージュエルを?」
こんな大勢が彼のために・・
これだけの人数がいれば可能性もグンと上がるだろう。
「そうだ。ギルマスからの要請でな。可能な人はお前たちを手伝ってほしいと」
「高倉さんが・・」
「豊、お前顔色が悪いぞ。無理しやがったな」
ちょっとギクリとした。
この人はこういう時には拳骨を見舞ってくるんだ。
しかし今はみーちゃんを肩車しているからか、拳骨は飛んでこなかった。
「あ、いや、ちょうど今から一度帰還するところだったんです」
「そうか、ならここに戻るにしてもしっかりと休んで来い」
「わかりました」
龍二さんから見れば、俺はまだ手のかかるひよっ子なのだろうか?
俺と龍二さんが話してる間、レンはみーちゃんにお菓子をあげていた。
帰ったら豆大福をまた買いに行かなきゃ。
「これだけいるんです、必ず見つかりますよ。むしろゆーさんはその後が大変でしょうし、今はゆっくりしてきてください」
「ああ、ありがとなレン」
俺は他の冒険者たちにもお礼を言って、地上に向かった。
見ず知らずの冒険者の為に無償で動く彼ら。
それはここが下町・上野にあるからか、そこで活躍する冒険者たちの人情というものなのか。
俺はここで冒険者をやってきてよかったと思う。
地下1階のポータルまで戻り、外に出る前にみーちゃんに洗浄魔法をかけてもらう。
毎日かけてはいたが、外に出る前には一応かけておいた方がいいだろう。
そのまま階段を上り外に出た。
数日振りの外の空気だ。天気も良く気持ちいい。
俺たちはそのまま桜木亭に向かった。
買い取りは後回しにしてまずは食堂に入り、料理を注文した。
俺はカツカレー、きつねうどん、唐揚げ定食を。すべて大盛りだ。
みーちゃんはオムライスとフルーツパフェを注文した。
数日振りのまともな料理だ。出来上がるのが待ち遠しい。
「相席いいかな?」
「え? あ、高倉さん」
俺の後ろから声をかけてきたのは高倉さんだった。
彼は空いてる椅子に座りコーヒーを注文した。
「ちょうど二人が戻るのを見かけてね。調子はどうだい?」
「さすがにまだですが、高倉さんが送ってくれた応援のおかげで可能性は大きく上がると思います。ありがとうございました」
「私は声をかけただけだよ。それが次々に他の冒険者たちにも広まって、あの人数になったんだ」
「それでもですよ。おかげで希望が見えてきたんですから」
と、そこで俺とみーちゃんの料理が運ばれてきた。
腹の虫を呼び覚ますいい匂いだ。
「とにかく今日はしっかり食べて、ゆっくり休むといい」
「はい。そうします」
高倉さんの言葉に頷いてしっかり食べ、さらにスタミナ丼、ポークソテー、ジャンボパフェを食べることにした。




