第二十一話 洗浄魔法
二本目です。
これから出掛けるので、三本目は書けたら上げます。
あれから一時間。ようやくご飯が炊けました。
カレーの匂いのする中でお預けなのは二人とも我慢できずに、豆大福を食べて気を紛らわしていた。
すぐに食べられないと知った時のみーちゃんの絶望感と言ったら・・
今は豆大福のおかげで機嫌は戻っている。
「さあお待たせ。今度こそ食べましょう」
「まってましたなの。いっぱいたべるの」
俺は席を立ちキッチンに向かう。みーちゃんもとてとて後をついてくる。
カレーの鍋と炊飯器を俺が持ち、みーちゃんに冷蔵庫に入れておいたサラダのボウルを持ってもらい、テーブルに戻る。お皿などは準備済みだ。
みーちゃんを席につかせて、俺はカレーを二人分盛り、サラダを皿にとって二人の席の前に並べる。
ちなみにみーちゃんの席は座布団3枚重ねの特別席だ。
みーちゃんはもう待ちきれないといった表情でカレーを見つめている。
俺も席に着き、
「では、いただきます」
「いただきますなの!」
二人で食べ始めた。
ご飯が炊きたてなので熱いが、美味いのでガンガン食べ進めていく。
「この『かれー』すごくおいしいの! あついけどおいしいの!」
スプーンを持ったままにこにこ笑顔のみーちゃん。
そうだジュース出すの忘れてた。
俺は冷蔵庫からオレンジジュースと麦茶を取り出し、コップと一緒に持ってテーブルに戻る。
みーちゃんにオレンジジュース、俺用に麦茶を注ぐ。
「みーちゃん、飲み物どうぞ」
「ありがとうなの」
みーちゃんはその小さな両手でコップを持ち、くぴくぴと飲む。
「あまくておいしいの! おそとはおいしいものがいっぱいなの!」
とても気に入ってくれたようだ。この様子なら嫌いなものもあまりなさそうだ。
さすがに小さいみーちゃんは食べる量が少ないが、それでも結構いっぱい食べてくれた。
俺は残りの約五合分を食べて満足した。
「ゆーちゃん、いっぱいたべるの」
「冒険者はいっぱい食べる人が多いんだよ」
「みーちゃんもいっぱいたべれるようになりたいの!」
「無理に食べ過ぎてもお腹が痛くなっちゃうから、みーちゃんは今くらいでいいんだよ」
フードファイターなみーちゃんは見たくありません。
『みーちゃんのいはうちゅうなの!』とか言い出したら泣くぞ。
サラダまできれいに完食して、食事を終えた。
「あらいものはみーちゃんにまかせるの」
「俺も一緒にやるぞ?」
「いいの。せんじょうまほうがあるの」
洗浄魔法! そんな便利なものが!
みーちゃんが大きめの水球を出現させ、その中にお皿や鍋を入れていく。
そしてすぐに取り出すと、汚れどころか水滴一つ付いていない、新品のようにきれいな食器や鍋が出て来た。
「みーちゃんの魔法便利だなぁ。俺も欲しい」
「だいじょうぶなの。みーちゃんはずっといっしょにいるんだから、やってあげるの」
何ですかその殺し文句は?
しかしこれはダメな父親の面倒を見てくれる娘のような構図が・・
とりあえず飲み物以外を片付けて席に戻る。
満腹なのでまったりとお茶を飲む。
みーちゃんも美味しそうにジュースを飲んでいる。
「さて明日の話をしよう」
「あしたはみーちゃんもおそとにでるの」
「そうだね。外に出れるようにするため、まずは俺が『ファースト』に行ってみーちゃんを召喚する。それまではここで待っててね」
「わかったの」
向こうで召喚したみーちゃんをたくさんの人に見てもらい、そこで初めて召喚したのだと思わせれば問題なく外に出れる。
後の問題はみーちゃんが精霊だということだが・・
「みーちゃん、他の人にダンジョンの成り立ちの話とかはしないようにしてね。パニックになっちゃうから」
「だいじょうぶなの。そういうおはなしはゆーちゃんだけにしかしちゃいけないって、だいせいれいさまにいわれてるの」
空気の読める大精霊様だ。
みーちゃんは基本的には召喚された精霊で、一緒に戦う可愛い仲間という認識にさせる。
召喚魔法自体は別に知られても問題ないだろう。
あとせっかくだし、召喚した後は地上に上がる前に地下6階以降を探索してみよう。
まあ探索とはいっても、地下18階まではマッピングされていて、桜木亭の電子掲示板を操作すれば印刷されて出てくる。
最前線の攻略組は情報を独占するような冒険者たちではなく、ダンジョンでの生存率を上げるためになる情報は惜しみなく報告している。
今回は『神速』の練習と、売却用の素材の回収だ。
みーちゃんをカートに乗せた状態でも問題なく走れるようにしないと。
ボスの攻略は一ヶ月くらいは空けてからにしたい。
あまりサクサク進むのも怪しく思われそうだし。
今は6月の初旬だから、7月までは別のことをしてよう。
みーちゃんをいろんな所に連れて行ってあげたいし。
「みーちゃんはダンジョン以外で行ってみたい所はある?」
「たのしいところや、しぜんがおおいところがいいの」
自然が多いってのは、みーちゃんが精霊だからかな。
俺はキャンプが好きだから連れて行けば喜ぶかもしれない。
美味しいものが食べれるところもいいかもしれない。
その為にもしっかりお仕事しましょう。
明日からもがんばってみーちゃんを育てていこう!




