第二十話 本日のカレー
休みになると爆睡してしまう。
歳をとると早起きになるものじゃないのか・・
遅くなりましたが一本目です。
今日の夕飯はカレーにしよう。
車庫から原付スクーターを出し、一昨日も行ったスーパーに向かう。
みーちゃんに嫌いな食べ物があるのかわからないので、カレーならおそらくハズレはしないと思った。
スーパーに向かう途中に和菓子屋があるので、先に立ち寄っていく。
「あらゆー君、いらっしゃい」
「こんばんは」
この和菓子屋『うさぎや』のおかみさん(推定50)だ。
俺の事を小さい頃から知っている人で、俺の豆大福の消費量が多いため、週1くらいで会っている気がする。
「今日は30個でお願いします」
みーちゃんがいるので、普段は20個だが今日は30個にした。
注文を聞いて、テキパキとパックに詰めるおばちゃん。
店頭にあるぶんはほぼ買い占めた形だが、店ももうすぐ閉店だし構わないだろう。
「今日はちょっと多めなのね」
「ええ、お客さんが来てまして。豆大福大好きなんですよ」
「いいお客さんだね。いっぱい食べてもらいな」
そういうと、おかみさんは一つサービスで付けてくれた。
子供の頃から大体なんだかんだ言って、いつもおまけを付けてくれる。
「ありがとうございます」
「冒険者の方はどうだい?」
おかみさんはよく俺の近況を聞いてくる。
冒険者になった時から、ずっと心配してくれているのだ。
先日までの顔だと、余計に心配かけていただろう。
「とても楽しいですよ」
そういうと、おかみさんはビックリした顔で俺を見る。
明らかに表情が変わっているからだろう。
「冒険者になりたての頃の顔に戻ったわね。何かいい事でもあったのかしら?」
「そうですね。今まで気づいてなかったいい事に、最近気づきまして」
「ま、楽しくやれてるならそれでいいのよ」
いつも気にかけてくれるこの人は、俺にとってもう一人の母親のような人だ。
両親が遠くにいる今だから、なおさらそう思うのだろう。
おかみさんは豆大福の入った袋を渡してくる。
俺はそれを受け取ってお金を払い、店を後にした。
場所は変わってスーパー。
さてカレーの具材だが、メインの肉を何にしようか。
牛・豚・鶏。個人的に海鮮は無しだ。
癖のない鶏肉にしてみるか。俺が自分の分だけ作る時は大抵牛を使う。
とりあえず野菜のコーナーで、ニンジン・玉ねぎ。ジャガイモは入れない。
鶏肉のカレーならトマトも合うから買っていく。
それとサラダ用にレタスときゅうり。こっちにもトマトを入れるか。
肉のコーナーで鶏モモ肉。胸肉はジューシーさが足らないので、他の料理でも鶏はいつもモモ肉がいい。
そしてカレールーだ。みーちゃんに合わせて甘口のを二種類。二種類にすることで味に複雑さが出る。
後何か必要なのは・・
みーちゃん用にオレンジジュースでも買うか。
こんなものだろう。みーちゃんが待ってるし早く会計を済ませて帰ろう。
「ただいまー」
家の玄関のドアを開けて中に入る。
すると奥からパタパタと足音が近づいてきた。
「おかえりなさいなの!」
そう言ってみーちゃんが廊下の奥から走ってきた。
そしてそのまま俺の胸をめがけてジャンプして抱き付いてくる。
受け止めようかと思ったが、宙を飛んでいるようなので手は出さなかった。
「いっぱいあまいのかってきたの?」
「ああ、買ってきたよ。でももうすぐご飯だから、食べるのはその後でね」
「わかったのー。ごはんもたのしみなの」
なんて素直でいい子。
俺はみーちゃんが引っ付いたままリビングに向かい、豆大福の入った袋をテーブルに置いて、今度はキッチンに向かった。
さすがにここからは包丁も使うのでみーちゃんを横に下ろして、準備を始める。
まず片手鍋にお湯を沸かす。トマトを湯剥きするためだ。
沸くまでの間にトマトのヘタを取り、反対側に軽く十字の切れ込みを入れる。
鶏肉は洗って水気を取り、一口大に切る。
「みーちゃんもおてつだいしたいの」
側にいたみーちゃんがそう言ってきたので、ピーラーを渡してニンジンの皮むきをお願いする。
みーちゃんはキッチンの高さまで浮かんで、皮むきを始める。
俺の方は玉ねぎの皮をむいて、みじん切りにしていく。
お湯が沸いたらトマトを放り込み、ちょっと待ってから取り出す。
すぐに冷水で冷やし、切れ込みの部分から皮を剥いていく。
「できたのー」
みーちゃんも皮を剥き終わったのでニンジンを受け取り、頭を落として一口大に切っていく。
では炒めていこう。
その間にみーちゃんにはレタスを剥いてキュウリやトマトと一緒に洗ってもらう。
鶏肉とニンジンをオリーブオイルで炒めて、火が通ったら水を張って火にかけておいた鍋に入れる。今度は炒めていたフライパンでみじん切りにした玉ねぎを炒めていく。
いい感じの色になったらトマトを投入。つぶしながら炒め続ける。
ぐつぐつきたら火を止めて先ほどの鍋に入れる。
煮込む間にサラダを仕上げる。
大きなボウルにレタスをちぎって、スライスしたキュウリとくし型に切ったトマトを入れ、ドレッシングをかける。大雑把だが、サラダなんてこんなもんでいい。
後はカレールーを放り込んで、しばらく待てば完成だ。
「よし、食べるぞ!」
「たべるのー!」
そして致命的なミスに気付いた。
ご飯炊くの忘れてた・・




