第二百二話 今日も魚
「さて、そろそろ引き上げよう」
「いっぱいつってつかれたの」
焼き途中だった魚と二匹目の黄金の鮎も食べて、四人でひたすら釣りに興じたおかげで大量の川魚と追加で四匹の黄金の鮎が手に入った。
ちみっ子達に黄金の鮎をねだられたが、昼飯をBBQにしてさらにはおやつも奮発することで守ることが出来た。
たぶん黄金の鮎の味は上書きできただろう・・
「・・今日もキャンプでいいのよね?」
「ああ。今日はキャンプで、明日の午後にはダンジョンを出て福寿荘に行こう」
別にずっとダンジョン泊でも問題ないのだが、温泉の魅力に負けてしまっている。
ほぼ旅行のようなダンジョンアタックなので楽しくゆるくでいい。
レンや攻略組の連中から見たら怒られそうな話ではあるが、ダンジョンの楽しみ方なんて人それぞれだ。
それにちゃんとお土産だって用意してるんだしな。
「ちなみに次のダンジョンアタックが終わったら東京に帰ろうと思ってる」
「あれ、もう終わりなの?」
「・・もっと潜り続けるのだと思ったわ」
本来はその予定だった。
もっとゆっくり腰を据えて一階ずつ見て回るつもりだったのだが・・
「色々ありすぎてぶっちゃけもうお腹いっぱいだ。イベント的にも物理的にもな」
濃ゆい経験が多くてちょっとホームシック気味になっている。上野の連中と会って飲みに行きたい。
そして魚介類にもちょっと飽きてきた。毎日違うものを食べてるとはいえ、ほぼ魚介類の食事だしな。
さっきのBBQのときに食べた肉のせいで余計にそう思えてきている。
「みーちゃんもかえってきょーこをみたいの」
「ちゃんと録画されてるよね? 楽しみなんだから」
「停電にでもなってなけりゃ大丈夫だろ。まあそういうわけで次で切り上げます」
東京に戻ったら十五階のボスを倒す計画も立てないとだな。
けど倒したら倒したで二十階の攻略を手伝えとか言われそうだしな・・
であればウチの『ガーデン』の攻略を進めるのもいい。
もしくはまた異世界に行ってヨウにお土産を持っていってやるのもいいかもな。食べ物もそうだが、約束したいろいろな本を渡してやりたい。
・・そういえばヨウに家族のことを調べる約束もしてた。
どうやって調べたものか。ヨウのことは伏せならんし、ネットで調べられればいいが。
「ゆーちゃん、今日の夜ご飯は何にするの?」
いろいろと考え込んでいたら、ふーちゃんがそう尋ねてきた。
夕飯か。最初は鮎飯とかフライとか川魚で料理しようと思ったのだが・・
「何か食べたいものあるか?」
ちみっ子達に任せることにした。
この子達も魚介に飽きてる可能性もあるし、食べたいものを出してあげよう。
俺の言葉にちみっ子達は円陣を組んで相談を始める。
さて何が出てくるか・・
「けっかはっぴょー!」
話し合いが終わってこちらを振り向いたハマダみーちゃんがそう叫んだ。
ドキドキ・・誰が優勝するのか・・
いや違う。何が食べたいのか?
「らーめんにけっていしたの」
「ラーメン? インスタントのしかないけどいいのか?」
袋麺とカップ麺で色んな味を揃えているが、さすがに生麺は用意していない。
それはちみっ子達も知ってるはずなのだが。
「・・ゆーちゃんに楽をしてもらうためよ」
「今日はお料理はいいからゆっくりしてね」
・・ああ、うちの子達はなんて優しいのでしょう。
お父さん感動でちみっ子達を抱きしめてしまったよ。
「別に好きで作ってるんだから気にしなくてもいいんだぞ」
「じゃあ浮いた時間でみんなで遊ぼうよ」
「そうなの。おかたずけははやくやって、いっぱいあそぶの!」
よしわかった。おままごとでも深紅の響子ごっこでも付き合うぞ。
そうと決まればさっさとセーフエリアに行くとしよう。
ちみっ子達をおんぶとだっこと肩車して、スキップしながらピンクベアーを蹴飛ばしつつセーフエリアへと向かった。
・・ちみっ子達と食べたインスタントラーメンは世界一美味しかったです。
日付は変わって翌々日。
福寿荘でしっかりと温泉三昧をして、体調バッチリで臨む水神社のラストアタック。
次に来ることがあるかはわからないので、しっかりと楽しんでいこう。
一昨日のうちに地下十一階まで下りてポータルは開通してある。
そして地下十一階からはまたフィールドが変化する。
「きれいなみずうみなの!」
「・・初めてゆーちゃんと会ったキャンプの時を思い出すわね」
確かにちーちゃんと出会ったのはあのキャンプの時だったな。杏ちゃんは元気にしてるだろうか? またあそこにキャンプに行く計画も立てるか。
さて、この階からは湖フィールドとなる。
地図がこの階までしか無いので先のことがわからないが、まずはこの階からだ。
「ここでは何をするの?」
「ここでは採取だな。せっかく湖があるんだが今日はあっちだ」
俺は湖からそれた場所を指さす。
ちみっ子達が指差す先を見ると、そこには小高い山があった。
「ゆーちゃん、あそこでなにをとるの?」
「このダンジョンに入っていろんな魚介類を食べてきたが、まだ食べてないものがあるよね」
海の幸といえば魚ばかりではない。
釣ることが出来ないそいつらは、あの山で採取できるらしい。
さてどんなふうに生息しているのだろう。




