第百九十四話 黒くてテラテラしたアイツ
「とりあえずブリは切ればまだあるな。鍋の方はこれに追加でいいか」
食後に大精霊様に渡す分の準備を始めた。
ちなみにちみっ子達はお腹いっぱいに食べて、今は『深紅の響子』の食玩の開封をしているところだ。
みんなで楽しんだ鍋は野菜がきれいに食べられており、スープが少し残っているだけ。
残り物のスープではあるが、これにはしゃぶしゃぶしたブリの旨味も染み出している。ここに少し出汁を追加して野菜を煮込む。
煮込んでいる間に再びブリの切り身を取り出し、一人分のブリ刺しを切り出していく。
「一応ご飯も付けておくか」
最後に茶碗にご飯をよそって準備完了だ。
後は好きにしゃぶしゃぶしてくれ。やり方はさっき見てたのならわかるだろうし。
「大精霊どうぞ。コンロごと持っていってください」
俺がそう言うと、テーブルに準備されたしゃぶしゃぶセットがフッと消えた。
存分に一人しゃぶしゃぶを楽しんでおくれ。
夕飯関係の仕事がひと段落つき、俺も寝るまでのんびりとすることにしよう。
ちみっ子達は食玩の響子のフィギュアで遊んでいる。それぞれ必殺技のポーズ違いになっているようだ。
俺はそうだな・・ラノベでも読んでるか。積みラノベが多いのでどんどん読まないとな。
アイテムボックスから今まで読んでいたシリーズの続きを取り出して読み耽る。
こうして水神社冒険初日は終わっていった。
翌日、地下三階。
釣りに行きたがるちーちゃんとふーちゃんを宥めてこの階に降りてきた。
ここも変わらず海フィールドとなっている。確か地下五階まではそうだったはず。
ここではモンスターを狩る予定だ。釣りの主張する二人を差し置いてでも倒したい奴がいるのだ。
「イールドッグだっけ? どうしてそんなに戦いたいの?」
若干むくれているふーちゃんが疑問をはさんでくる。
現在ちーちゃんとふーちゃんは両手で抱っこしている状態だ。ご機嫌取りのためだ。
だけど当然、みーちゃんも自動的に付いてくる。今は首に手を回しておんぶしている。
両手が塞がっているのでぶら下がっているだけだが、軽く浮いてるのか重さは全く感じない。
「このダンジョンは魚だけじゃないってことさ。コイツのドロップ品もぜひとも欲しいんだ」
魚は美味いがそれだけでは飽きる。
なら肉を食えばいいでないかではマリーなアントワさんだ。
やはりこのダンジョン特有なものが食べたい。というわけでコイツだ。
「でてきたの!」
物陰からそいつは現れた。
犬・・なのだろうか。少なくとも顔やシルエットは犬だ。
だがその全身はウナギのように黒くテラっとしている。割と嫌悪感を感じる見た目だ。
犬型のテ◯フォーマーといえばしっくり来そうだ。
とりあえず戦うのでちみっ子達を下に降ろした。
「ワン!」
「鳴き声は普通に犬なのか・・なんかヤだわ」
大きさは中型犬ほど。地下三階に出るモンスターなので、ぶっちゃけ雑魚だ。
だが問題もある。
「・・アレ気持ち悪いわね」
「ああ、ウナギ同様体がヌメってるからな。ウナギの見た目であれば問題ないが、姿が犬じゃな・・」
体がテラっているのはそのヌメリのせいだ。
そのために打撃系の攻撃が通りにくい。カイザーナックルで殴る俺とは相性が悪い。
・・何よりヌメヌメを直接殴りたくない。
「ってなわけで、スラッシュショットの出番だ」
腕をシュッと振って刃を飛ばし、イールドッグを一撃で倒す。
貫通も乗っているのでコイツくらい余裕で倒せる。
ちなみに魔法でもいいのだが、よく効くのは土と風だ。火はその体のせいで相性が悪い。水なら刃にして飛ばせば多少効く。
そして俺が持ってる魔法は火と水――スラッシュショット一択なわけだ。
イールドッグは消滅して問題なく倒せたが、ドロップは魔石のみだった。
「出なかったか。まあドロップ率はあんまり良くないとは聞いてたけど」
「じゃあどんどんさがすの。ゆーちゃんがほしいものをいっぱいてにいれるの!」
「・・見た目はアレだけど、触らなきゃ問題ないわね」
「風魔法もどんどん使うよ!」
ちみっ子達もエンジンがかかってきたようだ。
全員一致で遠距離攻撃で殲滅を選んだ。あんなもんに接近戦をする奴の気がしれない。
その後どんどんと現れるイールドッグを各自倒していく。
他の冒険者がいないので狩り放題なのは嬉しい。
そして最初にお目当てをドロップしたのは八匹目だった。
「・・ドロップしたわ。あれは何かしら?」
ちーちゃんが倒したイールドッグから出たアイテムをみんなで見に行く。
そこには魔石と真空パックされた平べったい白いモノ――ウナギの身がドロップしていた。
「よしよしよし! こいつを待っていたんだ」
「これおいしいの?」
ウナギの美味しさを知らないちみっ子達の反応はイマイチ。
もちろん今日の夕食でうな丼を振る舞うつもりだ。
「美味いし高級な食材だぞ。お土産にする分も含めて大量にゲットしていこう」
「美味しいならいっぱい獲らなきゃだね。乱獲するぞー!」
外では乱獲なんて絶対にNGだが、リソースが回復したここなら乱獲も問題ない。
配る分も含めて目標は百個かな。何なら明日もイールドッグ狩りでもいい。
うな丼に期待を寄せて、腹を鳴らしながらイールドッグを倒していった。




