第百九十話 だんキャン△
翌朝、六時。
食堂と居間に死屍累々と倒れている参加者たち。
さすがに康介さんと女将さんは宿の仕事もあるので先に抜けて就寝したが、俺は最後まで参加するハメになった。
まあ眠くはあるが、そこは打ち上げ大好き冒険者だ。このくらいで倒れたりしない。
・・龍二さんに付き合わされるときの方がもっとカオスなこともあるしな。
宴会前に入ったはずだが、さすがに酒の匂いが酷いし目も醒ましたい。
今から朝風呂と洒落込もう。
温泉に入って宴会して朝風呂に入るとかなんて贅沢な話だ。
まあこれくらいのご褒美はもらってもいいだろうさ。
一度部屋に戻るとちみっ子達はまだ寝ていた。
流石にまだ早い時間だ。起こさないように着替えを持って再び部屋を出た。
「あらおはよう。いつの間にか部屋で休んでたのね」
部屋を出たところで女将さんに会った。先に休んだだけあって眠そうにはしてないな。
女将さんの言葉に俺は苦笑いをしながら返事をする。
「いやさっきまで食堂にいました。朝風呂に入ろうと思って一度戻ったんです」
「確かにお酒の臭いがするわね。けど二日酔いにもならないなんて大したものだね」
「冒険者をやってると朝まで宴会とかよくあることなんでね」
そう言うと女将さんは納得したのか豪快に笑った。
・・みんな寝てるしもうちょいトーンを落とそうよ。
「温泉はいつでも入れるから行っておいで。朝食は八時からにするからそれまでに出ておくれ」
「わかりました」
きっと朝食までに女将さんが食堂の惨状を何とかしてくれるだろう。
ゲ◯を吐いてる奴がいないことを願おう。
おれはそのまま風呂に向かい朝から温泉を堪能した。
「ゆーちゃん、きょうはだんじょんにいけるの?」
「・・朝まで騒いでたんでしょ。眠いならやめておいたほうがいいわよ」
風呂から上がり部屋に戻るとちみっ子達も起きていた。
俺が朝まで宴会に付き合っていたのはバレてるみたいで、体調を心配されている。
「問題ないぞ。無理はしないし、ダンジョン攻略ではなくて観光に行くようなものだからな。フィールドを見て回ったり釣りをしたり、特有の魔物と戦ったりするくらいだ」
「じゃああんまり深く潜らないの?」
「そもそも俺が潜れるのは十五階までだ。まだボスを倒してないからな。そこまで行くかどうかは追々考えよう」
水神社の十五階のボスを倒せば『ファースト』でも倒したことになり、ポータルも使えるようにはなる。逆に言えばここでボスを倒したら『ファースト』では戦えなくなる。
俺はあくまでもボスは『ファースト』で戦いたい。長年固執してきた思い入れのある場所なのだから。
・・まあまた撮影させてくれと言われるかもだけどな。
「・・泊まるところはどうするの?」
問題はそこだ。
やはりウィークリーマンションなどの空きが見つからない。
さてどうしたものかと考えたのさ!
「基本はダンジョン泊でもいいかなって思うんだがどうだ?」
「ずっと中にいるの?」
「2、3日おきに外に出て、その日はここに泊まりに来ようかなって。水神社は海や川のフィールドが多い分、モンスターのドロップも魚介系が手に入るそうだしな。手に入れた食材でセーフエリアで飯を作ってキャンプをと考えてる」
考えた結果がこれでした。
宿がないならキャンプだ! セーフエリアという無料キャンプ場があるんだから使わない手はない。
「・・ダンジョンをキャンプ場だなんて考えるのはゆーちゃんくらいなものよ」
「アイテムボックス様様だね」
「なんでももっていけるから、ふべんはないの」
そう、アイテムボックスにはキャンプ道具も調理器具もなんでも入っている。
あとはスーパーなどで野菜類や飲み物なんかを買っておけば問題ないだろう。
「あ、釣りをするなら釣り竿も買っていかなきゃだね」
「ところがどっこい。ギルドで貸し出しをしてるそうだから買わなくてもいいのさ」
調べたところ、冒険者であれば無料で貸してくれるそうだ。
ここの冒険者達は探索に行くよりも漁をするか釣りをする人ばかりらしい。
地元の冒険者たちはそもそも水神社で漁をするために冒険者になった人が多いんだもんな。
水神社が復活してリソースの心配がなくなったのだから、前のようにダンジョン漁業が再開されるだろう。
そして休みの日には釣り糸を垂らしてのんびりとするのかもしれない。
「・・どっぷりダンジョン漬けの日々になりそうね」
「しばらくダンジョン成分が無かったからな。心ゆくまで堪能しよう」
「だんじょんじゃんきーなの」
ジャンキーと言われるのは心外だが、そこにダンジョンがあるなら入るのが冒険者だ。
ダンジョン外では味わえない非日常が俺達を駆り立てるんだ。
モンスターとのバトル。上がっていくレベル。新たに覚えるスキル。そしてボスとの戦い。
金を求めるか栄誉を求めるか。はたまた探究心を満たしに行くのか。
そして今日も多くの人間がダンジョンへと入っていく。
そう俺達は――
「ダンジョンジャンキーだな・・」
全く反論出来ない事に気付いたのだった。




