第十六話 ちみっこ
こんにちは。昨日はポッキーの日だったので久々に買って食べました。
製菓会社の戦略にはまりましたが、キンキンに冷やして食べるポッキーはとてもおいしいので、どうでもいいや。
とりあえず今日の一本目です。
さすがに最大限の警戒をしながら、ベッドに近づく。
・・あ、音楽消し忘れてた。
急いで音楽を止めるが、ベッドにいる何かが目を覚ましたのか、もぞもぞしだした。
カイザーナックルをはめている両腕でファイティングポーズをとり、少しずつベッドに向かう。
ヤバそうなら『神速』でとんずらしよう。
あと5m。姿が確認できそうな距離まで来た時、動いていた物体が起き上がり掛布団がめくれた。
戦闘開始!・・と思ったのだが・・
「ん~、おはようなの」
そこにいたのは5歳くらいの青い髪の女の子だった。
一応臨戦体制は維持しておく。
「えっと、君は誰だい?」
「みーちゃんはみーちゃんなの」
みーちゃん。愛称だろうか。可愛らしい。
一応言っておくが俺は幼女趣味ではない。
だが、俺はこのくらいの歳の子供がいてもおかしくない年齢だ。こんな小さな子供を見てると父性が爆発しそうになる。
「みーちゃんは魔物なのかい?」
ダンジョンにいるということは、恐らくそうなのだろうと思い聞いてみる。
今までそれ以外の生物がいたなんて聞いたことない。
「ちがうの! まものなんかといっしょにするなんてひどいの!」
「あれ!? えっと、ごめんなさい」
否定された上に怒られてしまった。
ぷくっとふくれっ面になるが、ただただ可愛らしいだけだ。
「みーちゃんはみずのせいれいなの。おにいさんのてだすけをするようにいわれたの」
突っ込みどころが増えてしまった。
水の精霊? 手助けをするように言われた? おにいさんて言ってくれた。
ちょっとプチパニックになりつついろいろ考えてると、みーちゃんが鼻をひくつかせてこっちに近づいてきた。
「なんかいいにおいがするの。あまいにおいなの」
甘い匂い? もしかしてさっきの豆大福か?
もう一つキャリーカートに入っているのを思い出し、取り出してみる。
「甘い匂いって、これの事かな?」
みーちゃんの前に差し出してみる。
するとみーちゃんの目がくわっと見開かれ、口の端からよだれが・・
「これなの! あまくておいしそうなにおいなの! きっとすばらしいものなの!」
「えっと、食べるかい?」
一度引っこめるという悪戯もしてみたかったが、みーちゃんの迫力に負けてそう聞いた。
「たべていいの!? ほしいの!」
「じゃあ、どうぞ。包んであるビニールは剥がしてね」
そう言ってみーちゃんに豆大福を渡した。一応精霊だとビニールが分からないかもしれないので、説明しておく。
手渡されたみーちゃんは豆大福を持ったまま、くるくると不思議な踊りを踊り始めた。喜びの舞だろうか?
「ありがとうなの! すわってたべるの!」
みーちゃんはそう言ってベッドに戻り縁に座ろうとするが、ベッドの高さが結構あるためなかなか登れない。
見かねた俺はみーちゃんのそばに行き、腋に手を入れて持ち上げてベッドに座らせた。
「おにいさんありがとうなの」
「どういたしまして」
満面の笑顔でお礼を言ってくるみーちゃん。おもわず父性が鼻から漏れそうになる。
みーちゃんはいそいそと豆大福の包みを剥がし始める。
剥がした包みを脇において、かぷりと豆大福にかじりついた。
「ん~、あまくておいしいの! ふわふわなの! これはきっとかみさまがつくったたべものなの!」
近所の和菓子屋のおばちゃんが作ったものだよ?
ここの豆大福は子供の頃から大好きで、ダンジョンに潜るときは必ずおやつに持っていく。
もうストックがなくなったから、また買いに行かないとな。
「みーちゃん、聞きたいことがあるから食べながらでいいから答えてくれるかい?」
「うん。いいの~」
こっちを向いてもぐもぐしながらそう言って頷く。
「みーちゃんは水の精霊であって、魔物じゃないんだよね? 精霊って何なの?」
「せいれいはだんじょんのおてつだいをするの」
「お手伝い?」
「そうなの。みずのせいれいたちはあんぜんちたいのみずのかんりや、だんじょんのかいそうによってはあめをふらせるの」
安全地帯・・セーフエリアの水場の事か。それと雨は確かに降る階層があるとは聞いている。
しかも精霊たちってことは、この子以外にも水の精霊がいるようだ。
「ほかにも、ひやかぜやつちのせいれいたちがいて、みんなでだんじょんのおてつだいをするの」
「そっかー、働き者でえらいなぁ」
そう言ってみーちゃんの頭を撫でてあげる。
するとみーちゃんは嬉しそうな笑顔になる。
「えへへーなの。それでね、みーちゃんはいっぱいがんばってるから、おにいさんのおてつだいをすることになったの」
「俺のお手伝いって?」
「けいやくをして、しょーかんされて、いっしょにたたかうの」
契約・召喚はまあなんとなくわかるが、この子戦えるの?
魔物の前で剣を振り回す姿を想像する。
下手したら剣と同じくらいの身長のみーちゃんだ。剣に振り回されて魔物には当たらず、泣いてしまう場面しか想像できない。
「みーちゃんは戦えるの?」
大事な事なのでしっかり聞いておく。
するとみーちゃんは重大発言をしてくれた。
「みーちゃんはみずのせいれいだから、みずのまほうがとくいなの。かいふくまほうもつかえるの」




