第十三話 夢追うジジイ
書き始めて今日で一週間ですが、ここまでたくさんの人に読んでもらえるとは思いませんでした。
頑張って一日一話以上の投稿を目標に頑張っていきますので、これからもよろしくお願いします。
「いらっしゃいませ」
店内に入ると、若い男性店員が挨拶をしてくる。
俺以外にも数人のお客さんがいるようだ。
店の広さは学校の教室ほどあり、様々な武器や防具が陳列されている。
とりあえず俺は刀のコーナーに向かう。
やはり刀は人気があるのか、売り場が広くとられている。
鞘に施された装飾が美しく、眺めているだけでも飽きないほどだ。
とはいえ、重要なのは鞘よりも刀の方だ。気になった刀を抜いて、バランスやなじみ具合を見ていく。
またこの店は太刀だけでなく直刀も製造している。
反りのない刀身なので居合に向かないが、突きに向いた剣だ。海外の冒険者で刀を使う人は反りのある太刀ではなく、西洋剣のように真っ直ぐな直刀を使う人が多い。
「これだけあると迷うな・・素材によっても変わってくるしな・・」
通常の日本刀は砂鉄を原料とした玉鋼を用いているが、それ以外にも刃の部分にミスリルを使い切れ味を上げたり、ヘビーチタンを使って重量と共に威力を上げているものもある。
「お困りですか?」
先ほどの男性店員が声をかけてきた。悩んではいるので相談に乗ってもらうとしよう。
「今まで使っていた刀が折れてしまって、新調しに来たんですが・・迷ってて」
「そうでしたか。ちなみに今まではどんな刀を使っていましたか?」
「以前ここで買った『新月』っていう、確か大量生産されてるタイプのものです」
本来刀は刀匠が一本一本魂を込めて打つものだが、それでは値段も高くなってしまう。
冒険者は美術品として刀を飾っておくわけではなく、実際にそれで戦うのだ。
今回の俺のように壊れるたびに、数十万円かけて新調など出来るものではない。
ミスリル製の刀であればその値段でも仕方ないが、そういうものはレン達のような第一線で戦い、装備に金を惜しまない連中が買うものだ。
出来るだけコストを抑えるために、一級品以外は工場の機械で造られている。
だからと言って質が悪いわけではなく、俺のように数年もその刀で狩り続けて昨日役目を全うした『新月』のように、値段以上の働きをしてくれるものは多い。
そもそも命を預ける武器なのに、低品質なものを売りつけてくる店などすぐに潰れる。
「そうでしたか。『新月』は生産終了してしまいましたが、ベテランの人達の中には今でも『新月』を使いたがる方が多くいらっしゃいます」
「確かにいい刀でした。以前来た時に70くらいの店員のおじいさんに勧められて購入したんです」
「ああ、もしかすると祖父かもしれません。以前はよく店に出ていましたので」
「なるほど。ちなみにおじいさんは今は‥?」
「昨年・・経営から引退しました」
間を取るなよ。不幸があったのかと思った。
「もともと祖父は刀匠をやっていたそうですが、ダンジョンが誕生してからは冒険者の時代が来ると言って工場を立ち上げました。昨年父に工場と店を任せて、旅に出ました」
「旅?」
「はい。ダンジョンが誕生してからの祖父の夢は『伝説の武器を造る』だそうで、今は日本や世界を周ってそれにふさわしい素材を探しています」
カッコイイじいさんだ。
その歳でも夢を追い続けているとは脱帽するしかない。
恐らくじいさんの半分も生きてない俺が夢を諦めるなんて、飽きっぽい若者みたいなものだな。
「そのおじいさんが造ったのがあの『新月』だったんですね。納得の名刀だ」
「ありがとうございます。ちなみに次も刀を使われますか? 祖父が引退する前に造った一点物の武器が、他のジャンルにあるのですが」
「一点物か。それだと高いんじゃないですか?」
「それが・・」
店員さんは言葉を濁す。
もしかして失敗作なのか? いや、そんなものを勧めるとは思えないが・・
「実は『ロマン武器』なんです。かなり使い手を選びます」
何それ!? どんな武器だ、すごい気になる。
『伝説の武器を造る』なんて言う人が造ったものだぞ。面白いに決まってる。
「せっかくだから見せてもらうことは‥?」
「ええ、一応隣の部屋に展示してあるので、こちらにどうぞ」
店員さんについて隣の部屋へと進む。
そこにはガラスケースの中に展示されたいくつかの武器があった。
パッと見ると、売り物ではなく展示だけのようにも見える。
何故なら・・
「なるほど。ロマン武器、ね」
苦笑いをしながら一つ目の武器を見る。
「まずは『トライデント』です。通常の槍よりは威力が出るでしょうが・・」
三叉槍で有名なトライデント。三叉槍だと銛のようなタイプなら一般にもあるが、すべての槍に刃が付いている、ゲームに出てくるような槍は初めて見た。
「さらにはナイフの背が櫛型になっている『ソードブレーカー』、グローブに金属製の爪の付いた『ベアクロー』、金属製の小手とグローブが一体化した『カイザーナックル』、鎖の先に棘の鉄球が付いた『モーニングスター』、柄についているスイッチで電撃を纏わせる大槌『ミョルニル』などなど・・」
「・・おじいさんならいつかきっと伝説の武器を造れるよ」
思った以上にとんでもない人だった。ロマン武器とはよく言ったものだ。
ある意味で伝説の武器を既に作っている気もするが・・
しかし俺は、その中で気になるものを見つけていた。




