第十二話 あのブーツ
仕事に行く前に間に合ったのでアップ。
スマホで書く場合もあり、誤字・脱字が多々あるかもしれません。
気になるようなものがあれば修正しますので、ご連絡ください。
スマホの画面だと字が小さくて、おっちゃんである俺には読みにk。
昨日の祝勝会は盛り上がったが、酷いものだった。
いい大人たちが百人近く昼間から宴会をするってんだ。
ちなみに『桜木亭』の食堂には酒類は置いていない。観光客も食事する場所で冒険者達がへべれけになってるのは困るからだそうだが・・
上野の二十四時間開いてる飲み屋に予約もなしに突撃して、最大客席数80人の店に店の外までテーブルと椅子を出して、無理矢理百人近く入ったのだ。
店員さん顔真っ青で、慌てて近くの系列店にヘルプを要請してた。
そして始まる注文の嵐。料理は店に任せるしかないが、飲み物に関しては対応できなそうなので、ありったけの酒をテーブルに出してもらい、各自好きに割って飲むという荒業。
また生ビールも店員に頼らず、各自でピッチャーに注ぎに行ったり、ある馬鹿野郎は蛇口から水を飲むように、サーバーの下で口を開き、直接がぶ飲みしていた。
出すそばから消えていく料理や酒。系列店から車で追加物資が運び込まれるのも、一度や二度ではなかった。
道行く人たちには奇異の目で見られ、店員たちには勘弁してくれという表情をされ、一応主役であるはずの俺は、まったく酔えなかった。
宴会の開始時刻は昼の12時頃。終了は23時頃。いい加減にしろ。
おそらくとんでもない会計になってるはずだが、レンが涼しい顔でカード払いしてるのを見たときは戦慄を覚えた。
さらには全員で店を出た後にレンが、
『二次会行く人~!』
と言い出した瞬間、俺は逃げだした。
そして今朝。
俺はいつもの日課を終えて、朝食を済ませる。
今日はダンジョンには潜らない。重大な用事が出来たのだ。
昨日は車を上野公園に置いてきてしまったので、まずは歩いて取りに行く。
肩の荷が下りたからだろうか、今日は清々しい。
今までは地下5階で細々と狩りをしていたが、これからはさらに下に降りれるし、我が家に出来たダンジョンもさらに調査したい。
調査といえば、昨日のドロップアイテムのブーツ。あれも車にあるので、後で調べてみよう。
こんなにやりたい事が出来たのはいつ振りだろう。
究極の目的であるダンジョン制覇に向けて、冒険者を楽しみながら強くなっていこう。
駐車場に到着しブーツを取り出す。このブーツ、特徴としてとても軽い。色は赤、派手だ。
とりあえず調べるためにそれだけを持って、ダンジョンに向かう。
ダンジョン内でなければステータスウインドウを開けないからだ。
ちなみに今日の警備員さんは元木さんではなかったが、笑顔で挨拶をしておいた。
地下1階でブーツを履いて、ステータスウインドウを開く。
装備品欄に『疾風の靴』の項目が出ている。とりあえず名前はわかった。
さらに『疾風の靴』の部分をタップする。これで詳しい内容が見れる。
『疾風の靴。シロタイツ・マッチョ初回の討伐をソロで行った証。装備することでスキル『神速』を使用可能になる』
スキルを使えるようになる装備品なんて、すんごいレアだ。
しかもこれは初回ソロ討伐限定のドロップアイテム。道理で今まで確認されてないわけだ。
ステータスウインドウのスキル欄を見ると確かに『神速』が増えている。
『神速。一定時間、通常の三倍のスピードで行動できる』
だから赤なのか!
俺よりも、大佐か総帥にこそ相応しいのでは?
とりあえず試しに使ってみよう。
「神速」
体が軽くなった気がする。
少し走ってみる――おおっと!
一気に加速して壁に激突しそうになった。これは慣れるまで練習を繰り返さないと。
逆に、使いこなせたら強力なカードになる。
戦闘に限らず、通常の探索の時や移動時にも大いに役立ってくれそうだ。
これはいいものを手に入れた。こまめに消臭しよう。
ブーツの性能評価を終えて、再び車に戻ってきた。
これから今日本来の目的のために蒲田に向かう。
混み具合にもよるが、上野から約一時間ほど。ほぼ一本道だ。
電車で行ってもよかったが、車を回収する必要があったし、荷物を持って帰るのに車の方が便利だ。
90年代のベストヒットCDを聞きながら車を走らせた。
蒲田のある大田区は工場の街として有名だ。
世界に誇る技術を有する工場が多数あるが、ダンジョンが出来た後はさらに工場が増えた。
様々なダンジョン素材の加工、ポーションの製造、装備品の鋳造・鍛造などの工場だ。
日本のダンジョンの素材は8割近くがこの蒲田に集まる。
その製品の質の高さは世界が認めており、各国にダンジョン産の製品が輸出されている。
そんな町に今日は新しい武器を買いに来た。折れてしまった刀に代わる相棒を探しに。
俺は以前も訪れ、ロングソードや刀を買った店に来た。
他にも店はいくつもあるが、毎回ここに来てしまう。
初めて来たときは木造の味のある建物だったが、前回来るまでに建て直したらしく、鉄筋コンクリートの白い建物になっている。
店の名前は『柳商会』。
『ファースト』が出現した頃から装備品の製造・販売を始めた老舗だ。
俺は店名の書かれた紺色の暖簾をくぐり、中に入った。
俺はここで一つの転機を迎えることになる。




