第十話 シロタイツ・マッチョ
本日3本目。
政治家の街宣カーがうるさくて集中できない・・
ボス部屋の前に立つ。
レンたち冒険者は前の方から座っていき、出来るだけみんなが観戦出来るように並びだした。
「魔法剣」
刀を抜いて炎の魔法を付与する。
別にシロタイツは炎に弱いわけではないが、少しでもダメージを与えるためにも必要な事だ。
そして部屋の扉を開ける。
部屋の中央にはシロタイツがポージングをしたまま佇んでいる。
一歩でも部屋に入ったら戦闘開始だ。
目を閉じ呼吸を整え、集中力を高める。みんなには悪いが、応援の声が聞こえなくなるほどまで集中する。
そしてゆっくりと目を開く。前方のシロタイツを確認して・・一気に部屋に突入する。
「スラッシュショット!」
突入と同時に刀を横に一閃し、炎の斬撃を放つ。
しかも接近しつつ連射で放ち続ける。
スラッシュショットの威力は直接斬撃を加えるよりも威力は劣る。
それでも一方的に攻撃できるうちに、ダメージを少しでも与える狙いだ。
ポージング体勢だったシロタイツは最初の数発が直撃し、残りはガードしながら俺に向かって突っ込んできた。
すぐに両者近接距離に到達する。
シロタイツが放つ右ストレートを左腕のシールドでいなしながら、胴体に斬撃を加える。
ひるまずに左で殴りつけてくるのをなんとか躱す。
さらに斬撃を与えようとしたが、シロタイツの左ハイキックが飛んできた。
避けれる体勢ではないため、刀を持った右腕でガードする。しびれる痛さだ。
追撃しようとショルダータックルをかましてくる。
俺は奴の脇に飛び込むように前転をして回避した。
お互い体勢を整えて対峙して、一息つく。
右腕のしびれは取れてきた。刀を持つ手に力が入る。
さすがのパワー馬鹿だ。これで動きも遅くないのだから腹立たしい。
奴はかかって来いとばかりにポージングで挑発してくる。
長い戦いになりそうだ。
幾度かの攻防を終えて、俺は二本持っていたポーションを使い切っていた。
無論その分、奴にもダメージは与えている。
レベルが上がった分、俺の攻撃力が上がっているのは実感できるが、なにしろタフな奴だ。
前回までだったら俺はここで撤退しただろう。
「今回ばかりは引くつもりはない。むろん死ぬつもりもないがな」
俺はシロタイツに向かってそう言ってやった。
顔のないシロタイツにだったが、何故かニヤッと笑った気がした。
奴も決着を望んでいるのだろうか?
「魔法剣」
付与の効果が切れたので再度かけなおす。
正眼の構えのまま距離を詰めていく・・と、奴はダッシュで向かってきて、そのまま――
「飛び蹴り!?」
虚を突かれたが何とか躱す。
奴も躱されるのを前提にしてたようで上手く着地し、振り向きざまに回し蹴りを放ってくる。
それをしゃがんで躱し、左逆袈裟に切り上げる。
そこでシロタイツがよろけてチャンスができた。
俺は渾身の刺突を見舞う。
胸の中央に刀身の半分まで刺さった。
そのまま切り裂こうとした・・が、刀が動かない!?
筋肉で抑え込んでいるのか、抜くことさえできない。
シロタイツはその状態で右手を振り上げ――
ばきんっ!
刀を手刀でへし折った。
判断は一瞬だった。サブウエポンのダガーを引き抜かず俺は――
「魔法剣!」
自らの拳に魔法を付与してそのまま殴り掛かる。
シロタイツは食い込んでいる刃を抜こうとしていたが、まさか素手でかかってくるとは思っていなかったのか、反応が遅れる。
その隙にボディーに渾身の正拳突きを入れる。
さらに掌底でアッパーを狙うが、奴の右が俺の左頬に入る。
怯むな!
自分に活を入れ、こちらも右ストレートでシロタイツの顔面を殴りつける。
今度はシロタイツの左が俺の胸を叩く。
一瞬息が詰まるが反撃に奴の腹部を蹴り抜く。
こうなれば意地の張り合いだ。
どちらかが倒れるまで殴り合う。
戦闘というよりは喧嘩。命と意地を懸けた喧嘩だ。
一撃喰らうごとに俺の血が弾け飛ぶ。
しかしその分こちらも奴を殴り続ける。
攻撃力は向こうの方が上だ。俺の限界などすぐにやってくる。
それでも引けない。向こうだって限界のはずだ。
俺が膝を折らないのは、冒険者たちの見た夢を、俺自身が冒険者であり続けると誓った事、生きて帰ると約束したこと、それらを果たすためだ。
殴られ続けて顔面が血だらけになっていても、この拳はお前を殴り続ける!
「あああああああっ!」
渾身の一撃が奴の顔面を打ち抜く。
よろけるシロタイツ。ここが好機!
左足を踏み込むと同時に拳を突き出す。
狙い違わず、刺さったままの刃に命中して、シロタイツの胸に完全にめり込んだ。
その体勢で止まる二人。
ゆっくりと先に動いたのはシロタイツだった。
奴は俺から少し離れ、こちらを向いてサムズアップし、
消滅していった。
からん・・
シロタイツが消えた後には折れた刃と、ドロップアイテムらしきブーツが落ちていた。
しかし今の俺には拾う気力もなく、その場に倒れ込む。
勝った。
紙一重ではあったが、倒すことができた。
入り口の方から歓声が近寄ってきているのが聞こえる。
俺はやり切った。14年かかったが、ソロでシロタイツを倒した。
胸が熱くなる。もう泣いてもいいよな。
ただ、それはそれとして、
誰かポーションください。
戦闘シーンて書くの難しいですね。
とりあえずケリを着けれてよかったです。
焼き肉食べてきます。




