第百二話 女子高生とお茶をする
6階でのんびりと狩りをした俺たちは、約束の18時に間に合うように切り上げて地上に戻った。
夕暮れ時の桜木亭は今日も仕事終わりの冒険者たちで賑わっていた。
一応建物内に二人がいないかどうかを確認して、俺たちは建物の外で待つことにする。
「ゆーさん、お待たせしました!」
ダンジョン内で食べていたビスケットがポケットに入ったままだったので、それを割ってちみっ子達と鳩に餌をあげていると、元気な声で俺を呼ぶ声が聞こえた。
昼間に会った時と同じく学生服を着た女の子二人がこちらに駆け寄ってくる。
「すいません、結構待ちましたか?」
「いや、俺達もまだ到着したばっかりだよ」
ちみっ子連れとはいえ、女子高生と待ち合わせをするなんて生まれて初めてだ。
やましい気持ちなんて欠片もないが、青春を冒険者になるために費やした俺には眩しいものだ。
「どこで話を聞こうか? 他の人の耳がない場所がいいなら移動するけど」
そう聞くと近藤さんは竜胆さんを見た。その竜胆さんは首を横に振った。
思ったほど重要な話ではないらしい。
「ここでも大丈夫です」
「わかった。じゃあ中に入ろう」
さすがに表で立ち話もなんだし、食堂で飲み物でも飲みながら話を聞くとしよう。
俺たちは食堂入口から店内に入り、6人で座れる席に着いた。
「とりあえず飲み物でも頼もう。俺が出すから好きなの選んで」
「ありがとうございます!」
「いえ、相談に乗ってもらうのに出してもらうわけにはいきません」
竜胆さんはなかなか真面目な子のようだ。
近藤さんなんか早速メニューを手にしているというのに。
「子供に出させるわけにはいかないさ。顔を立てると思ってくれ」
「・・わかりました。ごちそうになります」
その言葉で納得してくれたのか竜胆さんも近藤さんと一緒にメニューを見はじめた。
ちなみにちみっ子達は俺が何かを言う前からメニューを見て、どのスイーツを頼むかで盛り上がっていた。
君達この後夕食だけど食べれるんだろうね?
注文を取りに来たお姉さんにそれぞれの注文をして、商品が到着するまでは今日の講師の感想を聞いてみた。
「ゆーさんの緊張した顔が面白かったです」
「精霊ということに驚きましたけど、この子達がとても可愛くてみんなほっこりしてましたよ」
そこまで緊張したつもりはなかったけど、知ってる人から見たらそう見えたのか・・
他の職種の講師の人たちを見た限りでは、緊張している人はいないように見えた。みんな慣れている人だったのかな?
他の講師の人たちはみんな俺よりも年齢が上に見えた。
確かに普通こういうところに来る人はベテランの人が多いもんな。そういう人達は人前で話すことにも慣れているのだろう。
しばらく話していると全員の前に商品が届いたので、いよいよ本題に入ることになる。
「あの、私がダンジョンに入ることはできますか?」
始めに竜胆さんは俺にそう聞いてきた。
しかし、彼女も冒険者志望だったのか?
「冒険者の資格は持ってる?」
「いえ、まだ17なので取れません」
「ならほぼ100%無理だ」
俺はそうきっぱりと告げた。
ダンジョンに入るためには必ず冒険者資格が必要になる。
俺の知る限り例外は・・いや、以前あったか。
高倉さんも持っているし、ダンジョン内で捜査をする場合がある警察でも専門の部署があり、そこの人は全員冒険者資格を持っている。
もしかすると国のお偉いさんなんかが視察する場合などは例外になるかもしれないが、その辺りのことは詳しくは知らない。
一般人がダンジョンに入ると色々と問題が起こってしまう。
危険なのはもちろんのこと、ゲートを通る際にギルドカードを通さないので出入りのログも残らない。万一内部で死んだ場合は完全な行方不明になる。
更にはレベルが上がることにも問題がある。これは主にスポーツ選手たちが絡んでくる。
レベルが上がると身体能力も上がるので、その状態で大会に出るのはドーピングをしているようなものだ。
だからこそ冒険者の資格を持っている者は公式のスポーツ大会などには出れない。
とにかく冒険者以外がダンジョンに入るのは御法度なのだ。
「だから言ったじゃない。無理だって」
「けど・・」
近藤さんもその辺りのことは竜胆さんに話していたようだ。さすがは冒険者志望なだけはある。
それでもどうにかダンジョンに入れないか相談しに来たのだろうか?
「竜胆さんは冒険者になりたいのか?」
「いえ冒険者を否定するつもりはありませんが、私は興味ありません」
「えー、私と一緒に冒険者になってパーティー組もうよ」
危険な仕事でもあるんだから、あまり軽々しく誘うんじゃありません。
しかし冒険者に興味がないのにダンジョンに入りたいとはどういう事だ?
竜胆さんは俺の方を向いて一言こう言った。
「兄を探しに行きたいのです」




