第百一話 講師の後で
さて講師の仕事だが、こちらは特筆する事はなかった。
さすがに緊張はしたが話し始めればスラスラと言葉は出てきてくれた。
ちみっ子達も喋りたいと言うので任せてみたが、ほぼほぼ食べ物の話しかしなかったので早めに切り上げさせた。
それでも精霊の姿を、話してるところを見て生徒達はざわついていたので、インパクトはあったようだ。
「ゆーさーん!」
変わったことがあったのは、講師が終わって講堂として使った体育館から出た時の話だ。
女子生徒から名前を呼ばれたのでそちらを見ると、二人組の女の子がそこにはいた。
俺を呼んだであろう片方はよく知った顔だ。
「オッス、近藤さん」
「ゆーさん、講師役お疲れさまでした」
桜木亭でバイトをしてる近藤さんだ。
俺が講師に来たこの学校は近藤さんが通ってる学校だった。
予め近藤さんからは、俺が行く学校に通っているとは聞いていた。なのでここに居てもおかしくはないが、声をかけられるとは思わなかった。
他の生徒達は教室に向かって歩いているが、こっちに来ていいのだろうか?
「ゆーさんは今日は桜木亭に来ますか?」
「この後少し潜る予定だけどどうかした?」
そう聞くと近藤さんは横にいた女の子の背中をポンと叩いた。
黒髪ロングの和風美少女だ。
「この子の事でちょっと相談があるんですが、お時間をもらえませんか?」
近藤さんがそう言うと、その女の子はお辞儀をして自己紹介を始めた。
「竜胆 秋穂と言います。忙しいところ申し訳ありません」
「いや構わないよ。で、相談て?」
「今はもう教室に戻らないといけないので、後ほどお時間貰いたいのですが」
なるほど。教室に戻る列から抜けてこっちに来たのか。
早くしないと先生に怒られるかもしれない。
「わかった。何時くらいがいい?」
「では18時でどうでしょうか?」
今は昼前。浅い階層で散歩程度に狩りをしてればちょうどいいかな。
「わかった。じゃあその時間に桜木亭で」
「ゆーさん、一応連絡先交換しときましょう!」
近藤さんがスマホを出してそう言ってきた。
確かに桜木亭が混んでいたら探すのが大変かもしれない。
ということで、お互いの連絡先を交換した。
「やった! ゆーさんの連絡先ゲットぉ!」
「ポケ○ンじゃあるまいし、んなもんゲットしても自慢にもならんだろ?」
「そんな事ないですよ。ゆーさん、桜木亭の女性の職員と連絡先を交換したことあります?」
そう言われると全くない。
俺のスマホの連絡先はほぼ野郎ばかりだ・・
「え、ゆーさん何で泣いてるんですか⁉」
「いや、酷い現実を思い知っただけだ・・」
ちみっ子達と出会う前は、いくら思い出しても野郎達との飲み会ばかりしか浮かばない・・
ああ、俺の青春orz
「ゆーちゃんにはみーちゃんがいるから、ほかのおんなのひとはいらないの!」
「・・浮気は許さないわ」
「僕も一緒にいるよ」
ちみっ子達が俺の体にしがみついて来る。
今は君たちが居ても、思い出は変わらないんだよ・・
「えっと・・あ、そろそろ教室に戻らないと! じゃあゆーさん、また後でー!」
いたたまれなくなったのか、近藤さんは竜胆さんの手を取って足早に去っていった。
投げっぱなしかよ・・
俺は心に傷を負って学校を後にした。
昼食はヤケ食いで中華のランチバイキングに行ってきた。
ちみっ子達にあーんをされながら、ひたすらにエビチリと油淋鶏を食べまくった。
ちなみにちみっ子達は俺に料理をあーんさせるくせに、自分たちはデザートばかり取って来てたので、俺の皿の料理を分けて食べさせといた。
満腹になって気持ちが落ち着いた俺達は、そのまま桜木亭に向かった。
「今日が初日だったね、お疲れさま。どうだった?」
俺達はその足で高倉さんに報告に行った。
報告は電話でも良かったらしいが、どうせここに来るのだから直接会って話すことにした。
ちみっ子達は既に連れ去られました・・
「まあ無難に終わったかと。伝えたいことは大体話せましたし」
「それは何よりです。あと2回もがんばって下さい」
そうだあと2回あるんだ。
同じ事を話すか、もう少し別の話を考えるか。
子供達の将来に少しでも影響があるかもと思うと、思ったより大変な役目だ。
「それと講師とは別に、近藤さんから友達の相談を持ちかけられました」
「近藤さん? 受付のアルバイトの子で今日行った学校の生徒だったっけ?」
「そうです。時間が無かったので夕方にここで会う事になりました」
「近藤さんでは無くその友達が相談か。何だろうね?」
確かに近藤さんなら冒険者志望だから俺に相談があってもおかしくはないが、その友達だもんな。
もしかして竜胆さんも冒険者志望なのだろうか?
見た目は当てにならないが、そんな感じの女の子ではないんだよな。
厄介事でなければいいが・・




