漫才「学校の七不思議」

ツッコミ「夏と言えば怪談やね、怖い話好き？」

ボケ「好き、子供の頃も七不思議とか試しててん」

ツッコミ「トイレの花子さんとかね。トイレのドアノックして『はーなこさん』言うと返事がくるってね」

ボケ「うちの小学校の花子さんちょっと変わっててん。まず手洗い場とかで頭水浸しにすんねん」

ツッコミ「学校や地域によって微妙に違うんも楽しいよね」

ボケ「頭濡らしたまま、一番奥のドアをノックすんねん」

ツッコミ「花子さんの背景に関係あるとかやね、生前いじめられてたとか、水死したとか。ルール細かいとホントっぽくて怖いのよ～」

ボケ「そしたら人の顔が飛んでくんねん」

ツッコミ「ひぇーっ！　なんやそれめっちゃこわいやん！」

ボケ「そんで新しい顔と交換されんねん」

ツッコミ「……いやお前それバタコさんやろ？」

ボケ「トイレのバタコさんや。パン屋の女がトイレにおったらコワない？」

ツッコミ「衛生的に？　それアンパンマンのバタコさんが『新しい顔よーっ』て投げるやつやん。そういうギャグやろ、コワないやん」

ボケ「いや実際コワいやろ？　頭交換されるってことは脳取り換えんのよ。捨てられた頭の方が今のお前の意識で、新しいお前の頭はお前の見た目と記憶持ってるだけの別の人や。捨てられた方のお前は、新しい顔を茫然と見ながら息絶えてくねん」

ツッコミ「そないな見方したらエグいけども！　ほんなら自分の顔千切って配る時点で大分イカれてんのよ、食パンマンは車で普通に食パン配るのに。子供向けアニメ真面目に考えんのは野暮やし不毛や。トイレのバタコさんとか言い出したらギャグなんよ」

ボケ「でも俺、実際にも七不思議に遭遇したことあってん」

ツッコミ「ほんまに？　そういうの待ってたんよ聞かして？」

ボケ「夜中の学校行くと誰かがピアノ弾いてる言うやん、うちだとリコーダーでな。事故で演奏会出られんかった子が、自分死んだの知らずにずっと練習してるとか言われててん」

ツッコミ「ええやん、背景あるとホントっぽくて怖なるわ」

ボケ「イタズラしに学校忍び込んだらな、ホントにリコーダーの音聞こえてきて」

ツッコミ「え～コワぁ」

ボケ「めっちゃ怖いけど自分の教室まで向かってん」

ツッコミ「度胸あるねえ？　俺やったら逃げてまうわ」

ボケ「そしたらな……同じクラスの木下くんやってん」

ツッコミ「なんや幽霊ちゃうやないかい」

ボケ「木下くん、サヤカちゃんのリコーダー吹いてたんよ」

ツッコミ「違う方面で怖い話やね。アホらしい、木下くんが七不思議の元凶よ」

ボケ「せやねん、めっちゃコワなったわ。俺木下くんと間接キスしてたんやなって」

ツッコミ「お前も元凶の一人やないかい！」

ボケ「そう思うと、『ヒッ！』って声出してもうて」

ツッコミ「お前は木下くんに引く資格ないねん」

ボケ「そんで俺に気付いた木下くんがこっち見て。なんかヘラヘラしながら近づいてきて」

ツッコミ「え、なんやコワいやつやん木下くん」

ボケ「カッターナイフ片手に持っててん。『ケェーーッ！』て人間とは思えない高い声出してわろてて」

ツッコミ「何かにとりつかれてんの！？　マジでコワい話になってるやん！」

ボケ「そんで急いで逃げて、でも逃げた方に階段なくて女子トイレに隠れてん。男子トイレから探すやろと踏んで、その隙に逃げれるんちゃうか思って」

ツッコミ「おお、鬼気迫る状況やんか。お前女子のリコーダー舐めとる変態の癖にカッコええやん、手に汗握るわ」

ボケ「でも木下くんの足音、真っ先に女子トイレの中まで来て」

ツッコミ「うっわどうすんの」

ボケ「俺咄嗟に便器に頭つっこんで」

ツッコミ「ええ、ヤバすぎておかしなったん？」

ボケ「ちゃうねん。ドア、内側からノックしてん」

ツッコミ「……お前まさか！？」

ボケ「バタコさんシュートや……！」

ツッコミ「まさかの伏線回収！」

ボケ「――ジャイロ回転しながら時速707kmで飛んできた"健康な新しい顔"がッ！　ドアの前に立つ者の頭を吹っ飛ばして"交換"するッ！」

ツッコミ「バタコさんつっよ！！　七不思議に七不思議ぶつけたんやな激アツな展開やん。そんで木下くんどうなったん！？」

ボケ「俺がノックしたからな、飛んできたのは俺の顔やってん」

ツッコミ「木下くんお前になってもうたやん！」

ボケ「俺か、それとも俺の顔した木下くんか。今お前の前におるのどっちやと思う？」

ツッコミ「ひぇっ……」

(暗転)

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