09 冥界のバンパイア
プラハに家に帰りたいか、聞いてみたところ、帰りたくないとの事だった。
母様には会いたいが、バカ親父に突き落とされたのが、脳裏から、離れられないらしい。
会わせてあげたいが、上層から最下層には行けるが、特定の下層へ行く事はできないと宿屋のおやじから聞いた。なにやら、特定の下層へ『転移』すると、その階層のロードになってしまい、一生出られないとか。
プラハを連れて、最下層から、一々ロードを倒しながら、上層へ行くのも面倒なので、プラハが嫌がっているので家には連れて来れないと報告した。こう言うのは一度連れて行けば、何度も頼まれるので、面倒なのだ。
ロード周回をしていたおかげで、各階層の魔物にも知り合いが増えて来た。
オーク、オーガ、トロール、ガーゴイル、グリフォン、メデューサ、ヒュドラ等
、知性がある魔族とは大抵の知り合いがいるので、喧嘩にならずに済んでいる。魔族と魔人族である僕との違いは人型がどうかの違いだけだ。魔族の中でも知性がない者もいて、それらを魔物と呼んでいるのだ。
魔族達は、誰々の知り合いだと言うと、警戒が解けてどんどんと、仲間が増えて行くのだ。
バカ親父は学校に行けと言うが、静寂が好きな僕には、無理な話しだ。
せめて、バンパイアだけの学校はないのか? と聞けばあるとの事。
そこにしか、行く気はないと言えば、それでいいとの事。嫌なんですが……。
バカ親父は、またもや子供を作ったらしい。バカ親父からエロ親父に変えてやろう。又、崖から突き落とすのだろう。プラハに面倒を見て貰おうか思案中だ。宿屋のおやじにも迷惑だから、家でも買おうと思っている。
静寂の場所がほしい私は、魔物が少ない15階層に目を付けた。15階層にはダンジョンがあり、最下層のダンジョン核を壊し、魔物が出現しない死のダンジョンにした。私は、そこに静寂を楽しむ環境を作ったのだ。
はっきり言って、静寂が好きすぎて、声を出すのも嫌いなのだ。
エロ親父は頻繁に魔王殿に行っているようだ。魂胆は分かっている。
私を次期魔王に推薦しているのだ。私が魔王になれば、8名家の中で、オーツ家が第1名家になれるからだ。
私は断固として、魔王なんかになりたくはない。毎日、数十人と謁見し、プライベートさえない日々は、考えられいなのだ。
私は冥界に行く事に決めた。学校も無理、魔王も無理。
エロ親父のところにいると、碌な事がないのだ。
崖から突き落とし、帰ってきたら自分の出世の為に、利用する根性が気に食わないのだ。
私は魔界の2階層の宿屋に来ていた。
「おやじ~。いるか?」
「ラーシか? どうした? プラハは返さんぞ」
「冥界の行き方を、教えてくれ」
おやじは地図を引っ張り出し、ここだと指を指した。神界の右45度くらいか。
「ありがとうよ、おやじ」
地上に出て、『血の転移』した。
冥界には母様の実家があり、1度来た事がある。
挨拶だけでも、しておこうか迷ったが止めた。エロ親父にバレるからだ。
冥界には、バンパイアの帝国がある。そこに行こう。
城壁門の門兵に、証明書としてハンターギルドカードを見せると、通してくれた。
人は多いが、物静かだ。ここに住むのも有りかもしれないと、思った。
馬車が通り過ぎて行く。ああ言うのが煩いから冥界も駄目かな?
馬車が止まった。こちらにバンパイアの女性が歩いてくる。
真っ赤なドレスで、髪の花飾りも赤、靴も赤だ。顔は幼い顔をしており、ロリ好きにはたまらないだろう。だが、馬車に乗っている事から貴族で年齢はかなりいっていてもおかしくない。上級バンパイアは1000年は幼いままなのだ。
「お前、今、煩いと思ったじゃろ」
『血の思念』が使えるとは凄いな、さすが上級バンパイア。
「ああ、申し訳ない。不慣れな者ですので」
「ここの者じゃないな、わしの事を知らないとは」
「ええ、魔界から来ました」
「魔界から来た、バンパイアは珍しいな。もしや、システリアの関係者か?」
「システリアは母です」
そうかそうかと、肩をバンバン叩かれた。
「システリアは、わしの従妹じゃ。来い、食事でもしよう」
馬車の中に、引きずり込まれるように、両手を引っ張られた。
凄いダイナミックな人だな。
「お主、思念の制御を知らんのか? さっきから駄々洩れじゃぞ」
「思念に制御が、あるんですか?」
「だから、魔界のバンパイアは駄目なのじゃ。基本スキルも知らんとは」
「教えて貰えますか? 基本スキルから全部」