06 神界裁判
神界の裁判は長いとの事、物的証拠と動機が焦点になるとか。
僕としては、事実ですと答える。
検察側が発言する。
「被害のリンゴは合計5個です。このリンゴが証拠の品です」
穴が空いたリンゴを裁判長に見せている。
弁護士が発言する。
「そのような、針の穴は、砂ホコリでも付きます。冥界送りが妥当だと、判断します」
検察側が発言する。
「刑法36条、何人たりとも果樹園に入る事を禁ずる。又、加害者は故意に侵入し、リンゴに被害を与えました。神界最下層送りが妥当だと判断します」
そだそだ!!!
裁判長が閉廷の鐘を鳴らした。
弁護士と面会する場所で聞きたい事があった。神界の階層とはどんなところなのか知らないのだ。
「すみません、聞きたい事があるのですが?」
「なんでしょう?」
「神界の最下層は、上には上がれないのでしょうか?」
「恩赦により、上がる事はありますが、地上には上がれません」
「魔界のようにロードを倒せば上に、上がれるのでしょうか?」
「ロード等は魔界の言葉ですし、いません。誰かを倒せば上に、上がれると言う事はありません」
「では、一生最下層になるのでしょか?」
「それは、今後の判決によります」
「最悪の場合、どの位になりますか?」
「最悪、終身刑ですね」
まじっ!! 冥界の方がいいかもしれないぞ。一生出て来れないなんて……。
「判決を言い渡す。懲役10年、執行猶予3年とする」
リンゴの被害が少なく。リンゴは再利用出来る為、配慮されたようだ。
弁護士に聞く事が多いな。
「3年間、神界にいなくてはいけないのでしょうか?」
「基本いなくてはなりません。渡航許可は大抵降りません」
きびし~っ。
「ここでは、ハンターギルドはあるのでしょうか?」
「はい、あります」
「魔界のハンターカードは通用するのでしょうか?」
「通用します」
ハンターとして生活しなくてはならないな。
早速、神界のハンターギルドに行ってみた。
扉を開けると、ハンターがいたが、みんな白い布を着ているだけだ。武器も持っていない。黒い服を着ているのは僕だけだ。目立ってる~ぅ。
掲示板を見ると、結構な数の依頼がある。魔界よりすごいな。
Aランクの依頼案件を見ると、魔神、死神、サタン、堕天使討伐……。全部、指名手配犯かよ。
魔界でロード周回したので、お金はある。3年間は遊んで暮らせるのだが。一度、こちらの戦いを見てみたい。チームに入れてくれる人はいないかな?
ハイバンパイアロードを倒して、難易度の高い依頼もこなしてきたのでランクもAになっている。
周りを見ても、みんな目を反らす。なぜじゃ~~!!! 今は少女の姿なので、こんなのと一緒では、足手まといになるのは分かる。一旦出て、17歳位で入りなおす。周りをみる。みんな目を反らす。なぜじゃ~~!!!
この服がいけないのか? 白い服を買いに行くか? 大通り沿いを歩くとやはり、目立っている。服屋に入り白の服を探そう。店に入ると全部白の服しかないが……。
みんなと同じ白い布を纏い、白のサンダルを履く。これならばいいだろう。
大通り沿いを歩いてみる。おっ!! 注目されていないな。ハンターギルドに入り、周りをみる。今度は溶け込み過ぎて、無視されているようだ。
魔神討伐の依頼で、チームが集まっている。僕はソロで参加しよう。
受付で参加の旨を伝えると、却下されてしまった。聞くと、魔界のランクAは神界のランクCに該当するらしい
。
「おい、俺達に同行するか?」
少年達が声を掛けて来た。願ってもない事だ。
「宜しくお願いします」
チームは4人いて、1人足りなく、誘ってくれたみたいだ。
まだあどけない少年3人と少女が1人だ。
「お前は何が出来る?」
チームのリーダーらしき少年が聞いて来た。
「治癒系が出来ます」
「おっ!! それはいいな」
馬車に乗り、目的地に向かうようだ。
「お前は何族だ?」
何族言われてもな……。
「あぁ、言いたくなければ、いいんだよ」
馬車に揺られながら根掘り葉掘り聞かれながら目的地に着いたようだ。ここも神殿ですね。
「先行してる、奴らがいるぞ? 急げ」
馬車が置きっぱなしに、なっているのを見て、リーダーが言った。
神殿の中は、じめっとした感じだ。外の光が照っていて暗くはないが、石膏の匂が鼻につく。
「俺は前衛、サツイは後衛、お前は真ん中だ」
こんな子供で魔神なんて倒せるのか? 興味深々なんだけど。
「ドーーーーン、ドーーーーン」
遠くで爆裂魔法を使っている人がいるみたいだ。
「あっちだ」
辿り着くと先行していたチームは全滅していた。
前衛がビビッて下がり、崩壊したようだ。
「足跡を追うぞ」
小さな声で言った。
柱に隠れて、口元に指を指し、静かにと言っているようだ。
ちらっと見たがミノタウロスみたいだ。
前衛の少年はミノタウロスが、どこかに行くまで待つつもりだ。
そうこうしている間に、別のチームが追いつき、ミノタウロスに襲い掛かった。
大人のハンターの6人組だ。
あっという間に首を刎ね、少年に向かってドカドカと歩いて来た。
「おい、ミノタウロスごときにビビッてたんじゃ、魔神に勝てる訳がないだろ。お前らは帰れ」
「いや、俺らは、ミノタウロスを追跡して、魔神がいる場所を、確かめようとして、いたんだ」
リーダーの少年は見栄を張っているのは、誰もが分かる事だった。
ミノタウロスの出入り口は、今いる通路の1つだけだ、ここが行き止まりなのは、全員が分かっていた。
「付いて来てもいいが、お前らを守りながら、戦える相手じゃないんだ。自分の身は自分で守りな」
ごもっともです。はい。
それから、歩く事1時間程、謁見の間のような場所に出た。魔神が座っている。魔神の前にはケルベロス3体とマンティコア1体がいた。
魔神のペットなのだろう。
少年、少女はガタガタ震えていた。
大人6人がケルベロスに突っ込んだ。
大人6人でケルベロス2体を抑え込むのに、精一杯と言う感じだ。
ケルベロス1体がこちらにやって来た。少年、少女は動けないようだった。ケルベロスは咆哮を出し、僕達をひるませようとしていた。その口に『血の剣』を飛ばし、口から頭を串刺しにした。
ケルベロス2体は大人達に任せた。魔神に向かう刹那、マンティコアに『血の剣』の剣閃が煌き、マンティコアの首を刎ねた。後は魔神だ。
「お前、魔界のバンパイアだな?」
「ああ、そうだが、お前はここで死ぬ」
魔神は手の平を下に向け『重力圧縮』を仕掛けて来た。それを『血の重力壁』で跳ね返し、『血の爆破』を魔神に『転移』した。魔神のこめかみが爆発した。怯む魔神に対して、『血の鎖』で縛り上げ、空間壁で封じ込めた。ケルベロス2体は、大人達が何とかして、くれたみたいだ。
さてと、帰りますか?
大人達がやって来て。
「ありがとう、君がいなかったら、全滅していた。ありがとう」
「いや、これどうしますか? 捕縛なのか、討伐なのか忘れたので、捕縛してしまったんですが」
「討伐より、捕縛の方が難しい。それはそれで持ち帰っても問題ないぞ」
「それより、子供達の腰が抜けてしまったので、おんぶしてもらえませんか? ケルベロス2体は、僕の空間収納ボックスに入れますので」
ラーシはケルベロス3体とマンティコア1体、空間壁で封じ込めた魔神を空間収納ボックスに入れた。
馬車1台でもう1台の馬車を括り付け、町に向かった。
途中、子供達は動けるようになった
「おじさんが、危なくなった時の事を考えて、サポートの準備をしていたんだ」
「では、なぜ、俺達が、お前らをおんぶする事になったんだ?」
「……」
「もうちょっと、身の丈に合った依頼をこなしたらどうなんだ?」
「それは、おじさんも同じでしょう」
「そうだが、あんなレベルの高い、依頼だとは知らなかったんだ」
「ラーシがいなかったら危なかったんでしょう?」
「ああ、ラーシは、ありゃ魔族だな、それも、上級魔族だ」
「魔族って、神界に入れるんだ?」
「ああ、界での仲は悪いが、商品の流通はしているし、族の仲は悪くないからな」
そうこうしているうちに、町に着いた。
依頼達成料をそれぞれ貰い、大人6人が討伐したケルベロス2体は大銀貨2枚で売れ、ラーシのマンティコア1体、ケルベロス1体と魔神は金貨3枚で売れた。
ラーシは、子供達にチームに入るように、誘われたが断わった。子供の面倒はこりごりだ。