04 妹を助ける
ラーシは『隠密』の状態で木の枝の上に立ち、自分が育った屋敷を見ていた。
母様に甘えていた、あの木だ。
この位の時間は、母様にいつも散歩に連れて行って貰ったので、今日も散歩するか期待をしていた。
あっ!! 母様が出て来た。あれから6年か。小さい女の子を連れている。僕の妹かな? 母様が気付いたのか、こちらをジーーーッと見ている。僕は頭を下げて、崖の方に『転移』した。ここら辺だったかな? 僕が放り投げられたのは。
僕は決意し、そのまま……落下した。
1周目のロード周回は3日もかかった。魔力枯渇が原因だ、もっと効率良く戦う必要がある。地上には魔界シティなる繁華街があり、そこの宿屋に泊り、又、明日、再度チャレンジする。レベル50になった時、邪神に挑戦しようと思っている。現在はまだ、レベル30にもいってないのだ。
2周目はロード周回は2日といったところか。1時間以内に到達するのも時間の問題だな。
ハンターギルドに行って、各階層で倒したロードを換金してもらう。そして、いつもと同じ宿屋に泊り、を繰り返すだけだ。
6周目のロード周回でレベル30に達し、ステータスに変化が見られた。
名前---------- ラーシ・カトレ・オーツ
種族----------バロンハイバンパイアロード『亜種』
LV---------- 30
HP---------- 38694363468
MP---------- 95739747126
筋力---------- 2424145768
防御力-------- 37529147591
俊敏性-------- 3928574799
魔法攻撃------ 4309475880
魔法防御------ 8357277736
スキル
魔力回復MAX、自動治癒MAX、血属性MAX、超音波属性MAX、鑑定MAX、転移属性MAX、隠密属性MAX、空間属性MAX、時間属性MAX、気配察知MAX、耐性異常属性MAX、重力属性MAX
バロンって男爵のことか? ハイバンパイアロードにも爵位があるのか。
10周目のロード周回になると、12時間程だった。出て来る魔物はバラバラだけど、戦いの流れ、コツを知ったかな、と思うようになった。今までは、1回で2レベルアップしていたけど、1レベルアップしか、上がらなくなって来た。
23周目のロード周回をやろうとした時の最下層で、人の気配を感じた。最下層は、全員フェンリルロードに殺されており、今はロードしかいないはず。誰か倒れているぞ!! あっいたぞ。小さな女の子が倒れていた。これは、フラグではないか。母様に連れられていた、女の子だった。あの親父め、こんなかわいい女の子を突き落としやがって!!!
泥の中で息も絶え絶えな妹を抱きかかえ、早速、『自動治癒』で治した。
目をうっすら開け、こちらを見て来た。
「はーはーっ! お兄ちゃんは誰?」
「ああ、僕の名前はラーシだよ。君の名前は?」
「私、プラハです」
「お父さんに突き落とされたのかな?」
「そう、何で知ってるの?」
「ここでは、よく突き落とされる、子供がいるんだよ」
と言うか、あのサタンの親父しか、突き落とす奴はいないがな。
僕の子供の頃と同じ顔だな。銀色の髪と、薄青の目。
2階層目の宿屋のおやじに頼もうかな? ここよりは、ましだろう。
さっさとロードを倒して、2階層目の宿屋のおやじに頼んでみる。
「おやじさん、この子預かってもらえるか?」
「おう、ラーシじゃねえか。こんな小さな子どうしたんだ? 攫って来たのか?」
「最下層で倒れているところを助けたんだ」
「はぁ!! よし預かろう。看板娘になるかもしれない」
この頃になると、レベルはロード周回しても1レベルアップにしかならなかった。
相手の弱点を、自分のスキルで組み合わせて、戦う方法を身に付けてから楽に倒せるようになっていた。今では4つを組み合わせて戦い、レベル50になっていた。又、1周のロード周回は1時間を切っていた。
邪神とリベンジだ。5階層に行き。邪神を探す。邪神は偉そうに神殿で寛いでいた。
「おい、来てやったぞ。殺してやるから掛かって来な」
でかい咆哮を上げて襲い掛かって来た。
「ぐおおおおお~~~~~」
「うっせ~なっ!!!」
手を一振り、『血の転移斬』で足を斬り落とし、何度も繰り出し切り刻んでいく。バラバラとサイコロのように粉々になった。
『血の転移斬』は離れた場所にいる標的に『血の斬撃』を『転移』し、攻撃するスキルで便利だ。
「僕は静寂が好きなのだ、うっせ~奴は殺す」
レベルが53になった。
レベル100になったら、あのバカ親父を殴りに行くぞ。
強い魔物はいないかと、宿屋のおやじに聞くと、1階層に魔界王の暗殺部隊がいるから、強いと思うぞ。と聞かされた。
その前に10階層にいる、ハイバンパイアロードを倒しに行くと決めた。
10階層で、再度、ハンター登録をした。
ハイバンパイアロードの居場所はギルドで聞いた。場所が分かっているにも関わらず倒せないとは、凄く強いんだと分かる。
ハイバンパイアロードがいる場所は神殿だった。魔界なのになぜみんな神殿なんだ?
「ハイバンパイアロードはいるか?」
ハイバンパイアロードが急に表れたと言うか、後ろに回り込まれたと思わせた。
後ろに向かって、ブラッドソード『血の剣』を横殴りした。
ハイバンパイアロードはそれを指先で摘まんでいる。
ブラッドソードは血で形どった鋭い剣で、ギルドで買った本に載っていたバンパイアのスキルだ。
「ほう、楽しませてくれる奴が来たか。んっ! その感じはお前、ラーシか?」
「ああ、予想はついていた、兄のナシルかと思っていたが、ずばり正解だったな」
「ラーシよ、仲間にならないか? 魔界層を征服するのだ」
「魔界層等、征服したところで、何の意味があるのだ?」
「征服し、軍隊を作り、地上も征服するのだ。いいだろう?」
「興味がないね。僕は親父を殴りたいだけだ」
「征服すれば、いくらでも殴らせてやるぞ?」
「ナシルは魔王軍の実力を知らないのだろう? 近衛兵、暗殺部隊、魔界魔法師団、黒色騎兵隊、白色騎兵隊等、100万は動員出来るぞ」
「魔王軍は毎日のように訓練しているのだ。そこら辺の、烏合の集ではないんだ。ナシルよ、残念ながら倒させて貰うよ」
「はははっ! 実績もない小童がほざいとるわ。まあ、嫌いではないな。上位者に戦いを望む勇気だけは褒めよう」
ナシルは腕を斬り飛ばし、血をばら撒いた。ブラッドアーミー。血をばら撒き、血を自由自在に操る事で攻撃、防御が出来る、鉄壁の戦い方法だ。ラーシも腕を斬り飛ばし、ブラッドアーミーを発動する。
ナシルは、行けと命令を出した。無数の『血の剣』が飛んできた。ラーシは『血の重力』で跳ね返した。
今度はこちらの番と言った感じで、ラーシが行けと命令をだした。『血の転移』と、『血の鎖』と、『血の重力』と、『血の剣』との4つを発動させた。
ラーシは『血の鎖』、血の鎖を作成、『血の転移』により、血の鎖を転移しナシルを縛り上げ、『血の重力』、で動け無くし、『血の剣』で魔核を破壊した。
「何!!! 4つ同時だと。グワーーーッ」
ナシルの魔核は破壊され、砂に帰っていった。
攻防は、血属性と掛け合わせた方が、何倍も効果がある事を、山籠もりで分かった。転移も、『血の転移』の方が、長い距離を転移出来る。血と掛け合わせたスキルを幾つも研究していた。
ラーシはハンターギルドで説明をした。砂にしてしまい、討伐証明がありません、と。ハンターギルドの受付は、現場に向かい、討伐した事を確認した。ラーシはランクCを取得した。ランクCになれば、1年間はギルドカードの失効を、気にしなくて良くなった。
ラーシはプラハが困っていないか、様子を見に行った。困っていればお金を渡す予定だ。
プラハは小さいながらも、店の手伝いをしていた。注文の受付、カウンター、食器洗い等、なんでもござれと、ばかりに働いていた。店長のおやじさんが。あの子はすばらしいと絶賛してくれた。プラハの天職だったかもしれない。