就活生、ジョブチェンジする!
「どうすんだい、アンタ?」
「うぅ……どないしよ……」
私は無銭飲食してしまった事実を女性店員に説明し謝罪した。
勿論、逃げるつもりは毛頭ない。その事は店員も理解してくれているのだろう、少し困った様子で私の事を眺めていた。
「嬢ちゃん、見た所悪い人には見え無いし、お金は持ってるみたいだしね。見た事ないお金だけど」
「私も『食い逃げ』するつもりで注文した訳ちゃうねん」
「わかってるよ、けどねぇ。銀貨一枚分のお代を無かった事にする訳にはいかないからね」
私は何度も頭を下げ、店員もどうしたものだろうと頬に手を置いて考えている。
おばちゃんの話によると銀貨1枚はこの辺りの平均日給より随分と多いらしい。そんな話を聞かされれば食べた分は皿洗いで、などと提案しづらい。
「「…………」」
そんなやり取りをしている最中、聞き覚えのある声が店の入り口から聞こえてきた。
お客さんが来店した為、店員は『いらっしゃい』と笑顔を向けて声を掛ける。
「さっきは酷い目に遭いやしたね〜」
「全くだッ! 今度会ったら……」
席につき、何やら話こむ二人組に私は視線を送る。どこかで見たことある二人組だ。
まじまじと見つめる私の視線に向こうも気がついた様子で、二人はふとこちらを振り向いた。
「あッ!」
「「げッ!」」
視線が合ったと同時に、お互い声を上げた。
私は彼らを指差し、チンピラは注文もせず慌てて店を出ようと逃げる。
逃げられると不味い。
そう直感で感じた私はすぐさま彼らを追いかけ、店から出る直前で二人を捕まえた。
注文を取りに戻ってきた店員に、私は二人の首根っこを掴みながら微笑んだ。
「おばちゃん。私のお代、このお兄さんが払ってくれるわ!」
思いつきで喋った私の話に『あら、知り合いがいたのね!』と自分の事のように店員は安堵した。
一方で、何が何だからわからないと混乱している二人組は暴れはしないが、鋭い視線を私に向ける。
「おい! ちょっと待て、どういう……」
「そやんなぁ?」
お兄さんの話を遮って、私は微笑む。
【ステータス情報】
【名 前】 朝比奈 薫
【年 齢】 17
【職 業】 異世界から来たチンピラ
【レベル】 2
【体 力】 210
【魔 力】 110
【攻撃力】 110
【防御力】 120
【俊敏性】 110
※スキルなどの詳細は後ほど