表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脳筋乙女の異世界花道(改訂版)  作者: 藤沢正文
第1章 命短し走れよ乙女 〜己の拳で切り開け〜
1/22

プロローグ

2020/4/24 追加修正



 月明かりが辛うじて射す薄暗い路地裏に怒号が響き渡る。


「おらぁ! 逃げんなやぁッ!!」


 怒号の主は華奢な身体に前掛が縫い付けられたワンピースを着た町娘である。その見た目とは裏腹に女の言動は乱暴極まりない。彼女に捕まった筋肉隆々の大男は恐怖で顔を歪めながら必死に逃げる術を探していた。

 そんな大男の胸倉を右手で掴み、女は鬼のような形相で睨みを利かせる。女が胸倉を掴む手に力を込めると、苦しそうに踠く男の両足は徐々に地面から離れていく。


「もう……お前には、ち……ちょっかいはかけない! だから……い、命だけは……」


 懇願する男に女は徐に手を離し、息苦しさからは解放された男は短く呼吸を整えた。が、その瞬間に首元にナイフを突き付けられ男は腰を抜かした。


「ひぃッ!」


 女はそのまま男と目線を合わせるように屈み、男にナイフを見せびらかす。


「有り金全部置いてけ。そしたら見逃したる」


 男は青ざめ、慌ててポケットから皮袋を取り出して女に差し出した。女は乱暴に皮袋を奪い取ると中身を確認し軽く舌打ちする。


「なんや、こんなけか? シケとんなー」


 革袋に入っていた貨幣を不満そうに数える女を男は怯えながら眺める。


「しゃーないけど、これで見逃したるわ。ほら行けッ」


 女は屈んだまま男を追い払うように手を払う、解放されたと理解した男は一目散に路地裏の奥へと消えて行った。


…………。


 男の姿が見えなくなった所で女は立ち上がり、一部赤色で染められた黒髪を麻紐で一つに束ね直す。そして路地裏の隙間から見える夜空を見上げ、何故か溜息を漏らした。


「はぁー。何で(ウチ)がチンピラみたいになってんねん」


…………。


 視線を下ろした女は手に持ったナイフどうするか少し悩んだ末、そのまま路地裏に投げ捨てた。


「まあ、ええわ。とりあえずこれで飲み直すか」


 気を取り直した女は、男から奪った戦利品を片手に賑やかな夜の街へ消えて行った。


【戦利品】


皮袋

銀貨3枚

銅貨7枚

黒貨2枚



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ