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森と海の王国 (雨蛙は苔の中へ)  作者: 森野うぐいす
第三章 ≪西域の王国≫
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風の行方

「やつらは行ってしまったようだな。」老王は独り言のように言った。


「はい。」イチジは答えた。


「世界の行方が変わったようだな。<死神>はどこかへ消え、お前は新しいイチジとなった。」


そういえば、老王は最初からニジュウヨジのことをイチジと呼んでいた。


「はい。王はご存知でいらっしゃったのですね。」


「なに。わしももう長いこと王というものをやっておる。世界の ' 風 ' を読むことぐらいはできるさ。」


「しかし、不思議なものだな。世界の未来がこんなにも大きく変化することは滅多にあることではないだろう。」


「はい。"西の小さな町"にいるクロウ・クーン・ジュノーが宝玉を手に入れたようでございます...。おそらく、それがこの変化を起こしたのではと考えています。」


ちなみにであるが、クロウがいる"西の町"は西域と呼ばれるこの辺りよりさらに西に存在している。また、その距離はかなりあり、徒歩ではとても行くことはできない。' G.G.R・ネイチャー ' のように人智を超えるような超高速で移動できる()()()を利用しても少なくとも半日はかかる距離であった。


老王は「宝玉か。」と言って少しうなだれた。


「' 王の試練 ' などとよくも言ったものよ。なに。試されていたのはあのクロ・ト・ジュノーではなく、我々のこの『世界』ではないか。」


「『神』はいったい何をお望みか。」老王はまた独り言のように言った。


「はい。『神』の御心は我々にははかり知ることはできません。」


「それでも、お前は未来を見ることができよう。」


「はい。ワタクシは未来を見ます。ジュノー王国は復興し、西域の国々は滅びることになるでしょう。」


「イチジよ、お前はそれでもこの西域に仕えてくれると言うのか?」


「はい。そのことはワタクシの運命なのでござます。ワタクシ達、カモノハシ一族は運命には逆らいません。」


「しかし、ワタクシ達は ' 時 ' を見ますが、すべての未来や過去を見ることができる...わけではないようでございますね。ドラクレア様の死も知りませんでしたし、それにこれまで、この未来の変化を見ることもございませんでした。」


ワタクシが未だ見ることのない未来もあるかもしれませぬが...。とイチジは言った。


ならば、戦いの準備を進めねばならぬな。と老王は言った。


≪登場人物紹介≫

・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。

・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。

・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。

・ニジュウヨジ ・・・ オアシスにいたカモノハシ。アオの能力により少女の姿になっている。

・クロウ ・・・ 門番の少年。ジュノー王家の末裔。クロウ・クーン・ジュノー。


・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。

・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。

・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。

・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。

・蒼井瑠香 ・・・ 医者。


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