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森と海の王国 (雨蛙は苔の中へ)  作者: 森野うぐいす
第二章 ≪東京の探偵≫
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漆黒の空間

揺らいだような気がした地面は、()()()()()()()()()。蛇はやめるにょろと言うが、やめ方が分からない。


雑居ビルのよう子の事務所の入り口の前の空間は、どろりと溶けるようにして、大きく変容した。


そこは何も無い空間となっていた。何もないように思われた。漆黒というのだろうか微かに光をたたえた、ただただ真っ黒な空間となっていた。


真っ黒な空間の中に、よう子と真っ白な蛇がいた。


地面を歩くと、その空間はぐにゃりぐにゃりとうごめいた。


「ここは何?なんなの?」


「何ってお前が創り出した空間にょろ。しかも中途半端にょろよ。何もないにょろ。」


何もない?何もないのかしら。


「ナダの力を持つ者よ、しかし、とても弱い。お前は、とても力が弱いにょろ。」


何もない、ただ真っ黒な空間であったが、その空間は感情を持っていた。


悲しい...寂しい...切ない。


切ない...切ない...切ない...切ない...切ない...切ない...切ない......。



この感情は ' あの夢 ' 。よう子が先日見たあの切ない夢だ。


よう子は切ないなんて思わない。あなたは誰?切ないと感じているあなたは、誰?


黒戸樹?これは黒戸樹の感情?よう子はそう思った。


そう思った瞬間、その空間の黒さはさらに黒さを増した。そして、さらに感情が強くなった。その空間は、その感情は、よう子を取り込もうとしていた。



「危ないにょろ、仕方ないにょろ。お前、' ホウ精の木の実 ' を持っているにょろね。出すにょろ。」と蛇が言った。


ホウセイのキのミ?ああ、あの不思議な花の実のことかしら。


よう子が木の実のことを考えると、よう子の手のひらの上に ' ホウ精の木の実 ' が現れた。 ' ホウ精の木の実 ' は青白く光っていた。


一瞬で、蛇はパクリと木の実に食いつくと、飲み込んだ。蛇のお腹の真ん中あたりがプクリとふくれ、お腹はかすかに青白く光っていた。


「まずいにょろ。砂漠ガエルよりまずいにょろよ。」


「これで少しは安心にょろ。お前の力は弱い。お前とこの実と俺の三者が同時にかいしたから、お前は力を発現したのだろう。木の実は俺の腹の中にょろ。俺がこの空間をコントロールしてやるにょろ。」


蛇がそういうと、その空間は一面の砂漠となった。砂漠は夜であり、満天に無数の星が見えた。


「星が見えるにょろね。おそらくあいつが見たかった光景にょろよ。」


不思議なことに、さっきのあの切ないという感情も消えていた。


「空間の切れ端があるにょろ。俺はあそこから出ていくにょろ。安心するにょろ。この空間はそのうち消えて、元に戻るはずにょろよ。」



***



よう子は自分の事務所の前で目を覚ました。


おそらく、ほんの少しの間、気絶していただけだったろうと思う。


目の前に、女医の蒼井瑠香がいた。


「探偵さん、大丈夫?」


「悲鳴が聞こえたから、来てみたらあなたが倒れていたの。」と蒼井は言った。


「蛇、蛇がいませんでしたか?」


「蛇?いないわ。そういえば、こないだタツキチとセイヤが蛇がどうこうって騒いでいたけど...。」


蛇はいなくなっていた。


そうね、蛇はしゃべったりしない。私は夢をみていたのね、よう子はそう思った。


≪登場人物紹介≫

・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。

・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。

・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。


・蛇 ・・・ 謎の蛇。


・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。

・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。

・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。植物学者。

・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。

・蒼井瑠香 ・・・ 医者。


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