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森と海の王国 (雨蛙は苔の中へ)  作者: 森野うぐいす
第二章 ≪東京の探偵≫
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今回の依頼者の鴨木紗栄子の夫だった人物は、黒戸樹くろどたつきといった。


黒戸樹はおそらく学生時代にはスポーツに打ち込んだのであろうと思われる、ガタイの良い男だった。


元は明るい男だったのかもしれない、しかし数年前に彼がこの事務所を訪れた際には生気のない顔をしていた。


もちろん、依頼は自分の妻である黒戸紗栄子の浮気調査であった。



よう子がその数年前の浮気調査の資料を読んでいると、救急車が近づいてくる音がして、このビルの前で止まったようであった。


救急隊員なのだろう、階段をドカドカドカっと駆け上ってくる音、しばらくして降りていく音がして、救急車は遠ざかっていった。


今日は騒々しい日だなと、よう子は思った。



紗栄子の浮気相手は、彼女がさっき告白した通り、彼女の実の伯父である鴨木邦正かもぎほうせいという男であった。


鴨木邦正はその当時、東都大学の植物学の教授であった。


ちょうどその頃、植物学の世界でちょっとした騒ぎを起こした人物でもあった。彼は現存する植物のどの系統にも属さない植物のしゅを発見したと主張したのである。


しかし、彼の主張が正しいかどうか、確かめることのできる人間はいなかった。なぜかといえば、鴨木邦正はその発見したとする植物のサンプルを自分以外の誰にも手渡さなかったのである。



よう子の資料にはいくつかの写真が添付されていた。黒戸紗栄子が鴨木邦正の家に訪れる写真、二人が仲良さそうに歩く写真、キスしている写真などだ。


黒戸樹にその写真を見せたとき、彼は悲しそうな顔をしていた。黒戸は紗栄子を愛していたのであろう。


よう子は彼の感情をきちんと理解することができなかった。彼女も恋愛もしたし、恋人もいた。しかし、その恋人が浮気をしたとしても、よう子は悲しいとは思わない。


それは、よう子に何かが欠落しているのかもしれないし、単に恋愛において恵まれたいただけかもしれない、いやむしろそこまで切望するような恋をしたことがなかっただけかもしれない。


ともかく、彼女は誰かを失うことを切ないと思うことはなかった。


≪登場人物紹介≫

・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。

・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。

・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。


・灘よう子 ・・・ 東京で探偵をやっている。

・鴨木紗栄子 ・・・ 灘よう子に仕事を依頼する。

・鴨木邦正 ・・・ 鴨木紗栄子の伯父。

・黒戸樹 ・・・ 鴨木紗栄子の夫だった人物。

・蒼井瑠香 ・・・ 医者。


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