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森と海の王国 (雨蛙は苔の中へ)  作者: 森野うぐいす
第一章 ≪王国の物語≫
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朝顔の楽園

威嚇音を発するために顔を真っ赤にしていた' 朝顔 'であったが、


シロが根元ねもとを掘るのをやめたので、真っ赤だった顔が元に戻りピンク色になった。


「水が欲しいのでしょう?少し分けてあげましょう。」


「水入れを私の顔のそばへ近づけて下さいませ。」


シロは水入れにしている"ヒョウタン"を朝顔の顔のそばに近づけた。


「今から頑張って地中から水を吸い上げますから、その"ヒョウタン"に入れて下さいませね。」


朝顔はそう言うと、ずいぶんと踏ん張る顔をした。しばらくすると、朝顔の顔からちょろちょろと水が出てきた。


シロは器用に"ヒョウタン"にその水を入れた。



朝顔が頑張ってくれたので、"ヒョウタン"に水はだいぶ溜まった。


「ああ疲れました。しかしこれで、ナダ様にご恩をお返しすることができました。」


「水はありがたい。だがなぜ俺の本当の名前を知っている?」


「ああ私が知っているのではございません。私の母の母がナダ様を存じ上げていたのでございます。」


「私の母の母にナダ様が水を下さったのでございますよ。ナダ様はお忘れになりましたか?」


「そう言われても、朝顔はみんな同じ顔しているからな、わからん。」


シロがそう言うと、朝顔はふふと笑い、同じではございませんよ。と言った。



「朝顔よ、お前はなぜお前の母の母のことを知っているのだ?朝顔は一年しか生きられぬだろう?」


とアオが聞いた。


「おお、あなたは〈死神〉アポトーシス・オルガ様ですね。その名は聞き及んでおります。」


「私たち植物は、あなた様方のように複雑なニューロン・ノードを持っておりませんゆえ、母の母の記憶くらいは維持しております。」


「お前は、私のことも知っているのだな。しかも〈死神〉などと。」


風の噂でございますよ。風達は様々な噂話をしていきますから。朝顔はまた、ふふと笑った。


「そうか、風が死神と噂をしているか。」



「この近くに小さなオアシスがあるはずでございます。そこには私の兄弟姉妹たちもいるでしょう。」


「兄弟がいるなら、お前も連れて行ってやろう。」


「ナダ様、私がここに根を下ろしたのも何かの運命でございましょう。」


風が私たちの花粉を飛ばしてくれています。私もそのうち種をつけ、種を落とします。


この地はやがて私の子供たちの楽園になるでしょう。


≪登場人物紹介≫

・シロ ・・・ 本当の名をゲンカイ・ナダという。

・クロ ・・・ 本当の名をクロ・ト・ジュノーという。ジュノー王国の王子。

・アオ ・・・ 本当の名をアポトーシス・オルガという。〈死神〉と呼ばれることがある。


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