僕と「僕」
僕の代わりのクローンはもう既に沢山いたが、博士のクローンと共にここへ置いていくためにもう一体作った。
「やっほー元気?」
そう言って培養槽から出てくるあたり昔の僕だ……
人懐こく、人に好かれそうだなぁ。と他人事のように思う。
「あー、うん。これからここ任せたいんだけど良い?」
「何のため?」
笑って聞いてくる。
「僕の自由のため」
綺麗事なしで言う。
「そう、なら任されよう。僕の僕のためならね」
案外素直に返されて驚いた。
「僕らは、もうくり返し作られたデータがある。引き継ぎや共有もしている。僕のために死んだ個体がいるのも知ってる。僕らはそれでも僕に幸せになって欲しいよ」
まっさらから作るのではなく、データ共有された個体に任せたから、博士と違い僕は育てる必要はない。
幸せになって欲しいって、自分に願われるのは何だか不思議な感じだなぁ。
「そう……ありがとう。後は頼んだよ。よろしくね。」
それから数年かけて外との交渉に蹴りをつけた。
オリジナルの重要性を解かれたりしたが、僕も彼女のお願いだから、手段を選ばなかった。自分の立場を最大限に活用し、しっかりと要求を通した。
さて、彼女は今の空をどう思うんだろうか。
「私」は、順調に研究成果をあげ出した。
私より優秀だなぁと思う。
「もう交渉は終わっているからいつでも出れますよ」
と彼が言っていた。
久しぶりの空をみて、久しぶりの空気を吸って……
本物の山を見て海を見たい。
そうホログラムの流れ星に願った。