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『不老不死の薬を作った少女』  作者: 根尾 彼方
11/12

 居住地区というものに入って感じたのは、若い外見の人がなぜかやつれて見えることだった。


 防護服とマスクは入るところで制服をきたお兄さんに預けてきた。


 首の機械がうっすら光って、彼が彼に見えない顔をしている。

 私もどう見えてるのかわからなくて、ガラスに映る姿を見てびっくりした。

 私ではない誰かがこっちを見ている。


 軽く手をあげると、ガラスに映ったその人も手を挙げた。


 「なれませんか?」


 見慣れない顔で彼が話しかけてきた。


 「い、いや、新鮮だなって、思っただけで……」



 「そのうち慣れますよ」


 「そうか〜それにしても、暗い顔の人多いね」


 「そうですね、ここの居住地区の人は年齢として100歳前後が多いです。居住地区の番号が増えれば増えるほど、実年齢が若くなっていきますよ。」


 100歳前後という事は、かなり精神的に高齢だ。なんとなく活気がない理由も頷ける。


 「100年も生きてれば精神が磨耗する……か」


 「…そうかもしれません。教会で安楽死を選ぶ人の数も年々増えているというデータもありますから。」



 私の発見はなんだったんだろうな。本当に。


 人は、若い外見で生きれたとしても、精神は様々な経験をしてずっと同じようにまっさらで生きることはできない。生命活動を続ける上で、精神は体を動かすためのエネルギーなのだろう。


 私も変わったように、人は変わるから、同じ外見で生き続ける辛さもあるのかもしれない。




 私は、薬を投与せず、これから過ごすつもりだ。

 彼はわからない。



 一緒に老いてくれると嬉しい。そう思ってしまうのは、私が見ないふりをしていた気持ちが主張し始めたせいかもしれない。



 施設から出て、矛盾だらけの世界を目にした。

 生きたいと昔願っていた人々は、今では死にたいとも願う。


 そんな人々でも私を崇めた。

 神にすがることで、無駄な生を享受し続けている。



 この世界は狂っている。

 私が狂わせた原因だと、わかっていても、何もできる事はなく。


 私が暮らしたい場所はここでは無いと、次の場所へ行く力にしかならなかった。



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