神の遣い
博士と地上に出た。
今まで拘束されてきた場所が地下ということもはっきりわかってなかったようだ。
「ここは神の地と言われて神殿のような扱いでした。ですから警備も厳重で、人も限られた人しかいなかった。」
博士は何を思っているのか静かに僕の話を聞いている。
「とりあえず一番近い居住地区まで今日中にたどり着こうと思います。居住地区同士は繋がっていますから、地上を移動する必要はなくなります。」
「いつから?」
防護マスク越しで表情はほとんど読み取れない博士がぽつりとつぶやいた。
「 第6次世界大戦終結後の50年ほど前からです。」
「私は、今の状況もそうだけど、歴史を知りたいわ。」
「軽くお話ししますと、博士が拘束されたのが……あ、拘束と言う表現でいいですか?」
「えぇ、気にしない」
「そうですか。博士が拘束されたのが神歴前13年のことで、第4次世界大戦が神歴前8年に起きます。これは、博士の作った薬をめぐって我が山国と陸国に海国と川国と言う当時の4大勢力が潰し合いをした形でした。結果、我々が勝ちます。戦争は8年に渡りました。
そして、神歴元年。博士を神として戦勝国同士が合併することにより新たな国が出来上がりました。
神歴40年に衰退していた海国と川国が中立の立場をとっていた池国をそそのかし、我々に戦争を仕掛けてきました。その頃には、僕の研究の試作品が出来上がっていたので、我が国はクローンを用いて戦争し、圧勝しました。
神歴83年、クローン兵士に対抗するため有毒ガスで対抗したのが滝国です。この戦いで我々は相手の国から捕虜を取ってきてクローンを作り、水に毒物を混ぜることで勝ちました。そこからです。大気汚染と水質汚染により、多くの人がなくなりました。政府は、地下施設の建設をはじめ、危険の伴う建設にはもちろんクローンが使われました。無理な作業日程でもクローンを使い捨てにすることで建設させたのです。」
「一時期忙しそうにしてたのはそのせいなのね」
「はい。おかげで急速成長の研究費をたくさんもらえましたから、やりたいようにできてよかったとも言えるのですが」
生み出した子を食いつぶされ続けたあの時は結構辛かったけど、今は研究費もらえてラッキーくらいに思う事にしている。
長生きにはポジティブと嫌な事忘れるのがコツ。
なんて、ね。
さて、そろそろアクセスポイントだ。
「博士、これからは、僕らだとバレるとまずいです。国の研究員っていうことで身分証明書もらってます。顔は、首にこれつけててくれればホログラムが勝手に変えてくれるから大丈夫です。」
「すごい技術は進歩したのね〜」
いや、博士が一番貢献してると思う。というのは心の中にしまっておいた。
「さて、第一居住地区に入りますよ」