表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の旅路  作者: Posuto
8/53

第7話:特殊部隊との死闘

 ラファエロ機関所属の龍魔法ドラグラフ研究者アーノルド ノイマンの心は、喜びにあふれていた。

待ち望んでいた、龍族の生きたサンプルを入手できたのだ。

龍族は死ぬと灰になってしまうため、研究にはどうしても、生け捕りにする必要があった。


捕獲に協力した特殊部隊『毒蛇』は、ほぼ壊滅状態だが、それに見合うだけの収穫が得られた。

龍族の中で、最も力を持つ三大龍の一つである銀龍の血族を、捕えることができたのだから。

奴からの情報は正しかったようだ。


 (これで、龍魔法についての研究が格段に進むぞ!!)


後ろのほうに、気配を感じた。

護衛の『毒蛇』の生き残りも、すでに後ろを振り返っていた。


 「ひぃぃぃぃ!」


黒いコートを着て、フードをかぶった男が、炭化した死体を見て腰を抜かしている。

そして、すぐに立ち上がり、森の中に逃げて行った。


 (チッ!目撃者を出すわけにはいかん!!)


護衛の三人の兵に、始末するように命令した。


銀龍の少女のほうを振り返ってみると、先ほどのフードの男が逃げた方向を見ている。


 「他人を心配している場合かな?」


 「なっ・・・・!!」


少女が驚いた顔をしている。

当然か。私が口にした言葉は、彼女の故郷のみで使われる言語なのだ。


 「貴様、なぜ龍言語を話せる!?」


 「龍族にも、いろいろいる、ということだよ。」


この銀龍の情報をよこした男も、龍族だが、なぜ同胞を売るような情報をよこしたのかは知らない。

龍族も、一枚岩ではないのだろう。


 「わたしを、どうするつもりだ?」


 「当然研究に使わせてもらうよ。君のおかげで、大氣術スペルの技術は格段に進歩するだろう。」


これから研究することで、得られるデータのことを考えると、楽しくて仕方がない。

ふと、銀龍の少女を見ると、私の後ろに視線を送り、驚いた顔をしている。


後ろを振り向くと、何かの輝きが目に入った・・・・・


そして、意識がブラックアウトした。






さっきの演技は、うまくいっただろうか?

死体におびえる一般人に見えただろうか?


予想どおり、三人の氣闘士ファイターが追いかけてきた。

奴らは、脚力強化による高速移動、『F.M.《ファストムーブ》』で追いかけてくる。


僕は一般人と思われなければならないので、身体機能強化を行わず、逃げる。


草むらを抜け、木の少ない広い空間に出た。


 (ここで仕留める!!)


僕は、自分ができる最大の身体機能強化を実行。

走っていた体に急ブレーキを掛け、後ろを振り向く。


左腰に差してある、刀『銀月華』に手を置き、抜刀。それと同時に、エーテルを最大限、武器に徹す。

完全に油断している、追手の一人目は無防備に草むらから飛び出してきた。


 ザンッ!!


その一人目の首を、居合抜きの要領で斬り飛ばした。


二人目は、草むらから出てきて、首のない死体を見て異変に気づいた。

だが、僕はすでに敵の武器、ブロードソードの間合いの内側にいる。

左手の拳で、顎を打ち上げた。


無防備になったボディに、左肩を接触させる。


アルベイン流格闘術 六式 『剛竜烈震功』


踏み込みの力と、接触した左肩から直接叩きつけるエーテルの力で、相手を吹き飛ばした。


 (二人目っ!!次で最後だっ!!)


三人目は、完全にこちらを、力を持つ敵だと認識している!


 (上っ!!)


視界に影がさしたと思った瞬間、前方に身を投げた。


 ドスンッ!!


上から、兜割を仕掛けてきたようだ。

僕は、受け身を取って転がり、立ち上がった。

もう向こうは、油断することなく、本気で来るだろう。


 (ここからだ・・・・大変なのは・・・・)


先に仕掛ける!


アルベイン流戦刀術 一ノ太刀 『天衝破』


刀に徹したエーテルを、斬撃に乗せて飛ばす遠距離攻撃技だ。


だが、飛ばしたエーテルは、相手の剣の一振りで消し飛ばされた。


 (やばいっ!接近される!)


一瞬の間に接近され、連続で攻撃される。

帝国軍、軍式剣術の『S.S.《ソードステップ》』という技に、似ている。

ブロードソードの斬撃を、刀で受け、いなす。


 (一撃が、重い!?)


敵は、斬撃の勢いを殺すことなく、回し蹴りを仕掛けてきた。


 「がっ・・・・・・!!」


5メートルほど後ろに、吹き飛ばされた。

なんとかガードしたが、衝撃を殺しきれなかった。


 (やっぱり、正攻法じゃ勝てない!!)


牽制に、『天衝破』を連続で飛ばす。

相手は、『天衝破』と似た特性の技『I.S.《インパクトシュート》』によって、叩き落とす。


その間に、雨によって地面にできた、ぬかるみの中にワザと足を突っ込んだ。


 (泥にエーテルを徹す!!)


本来、無機物にエーテルを徹すことは、かなり難しい。

武器は、エーテルを徹しやすい金属、エレメント鉱石が使われているが、その他の金属は徹しにくいのだ。

石、砂なども、徹しにくいものの例によくあげられる。

だが、アルベイン流は、これを訓練によって克服し、武器とする流派だ。


アルベイン流秘戦術 二号 『岩徹し』


無機物である、泥にエーテルを徹した。

そして、その場で体を回転させ、脚に泥をまとわせる。

回転の力を利用して蹴りを放ち、泥の塊を、接近してきている相手に飛ばした。


相手は、当然避けようとする。右に体をずらし、泥の塊の横を抜けようとした。その瞬間、


 パンッ!!


という音と共に、避けようとした相手に向かって、泥の塊が破裂した。


 「なにっ!!」


さっきまでまったく口を利かなかった相手が、驚きで声を出した。

これで視界をつぶした。


 (こいつは、視界が利かなくなっても、油断はできない!!)


アルベイン流奥義 第一天 『飛蝶乱舞』


 「うぉらあぁぁ−−−−!!」


斬撃と打撃を連続で繰り出す大技だ。

技は直撃し、体は原形をとどめないほどバラバラになった。


 「はぁ・・・はぁ・・・ぎりぎりだった・・・・」


やはり、奴らには銀龍との戦闘によるダメージが、残っていたのだろう。

なんとか勝つことができた。


疲れたが、休んでいられない。あの子を助けないと・・・・





すぐにさっきの場所まで戻ってきた。


 (まずは、あのリーダー格を潰す!)


脚力強化による高速移動で接近。

僕は、相手の10メートル手前で跳んだ。


奴が後ろに振り向こうとしたが、遅い。

空中からの兜割で、リーダー格の男を両断した。



鎖で繋がれた少女が驚いた顔をして、口を開いた。


 「なぜ・・・・・」


今はまだ、彼女と話していられない。

鎖の制御を行っている、5人の詠唱師をどうにかしないと。


5人のうち一人が、鎖の制御から外れ、こちらに攻撃を仕掛けてくるようだ。


僕が接近戦に持ち込もうと、腰を落とした瞬間、目の前に術式の描かれた魔法球が現れた。


 (やばいっ!!)


とっさに、横っ飛びで回避した。


 ボンッ!!


という音と共に、僕のさっきまでいた場所に爆発が起こった。


基礎的大氣術ベーシックスペルの『第一爆法ブレイズ』だ。

任意の空間に、魔法球が出現後、爆発を起こす、基礎の大氣術だ。

基礎であるがゆえに、熟練者になれば、かなりの速度で連射が可能になる。


横っ飛びで回避した場所には、すでに魔法球が発生していた。


 (なんつー連射だ!!よけきれないっ!!)


とっさに、コートにエーテルを徹し、防御用フィールドを展開。


爆発。


 「ぐあっ・・・・!!」


フィールドで殺しきれなかった、熱と衝撃がきた。


 (まずい、まずい、まずい、どうすれば・・・)


焦りによって、思考がうまくできない。


碧い瞳が、視界に入った。


 (そうだっ!!忘れるなっ!!僕の目的は、こいつらを倒すことじゃない!彼女をたすけることだ!!)


僕は、左手でコートの中から、投擲用のダガーを引き抜き、投げた。

攻撃を仕掛けてくる詠唱師ではなく、いまだ、鎖のコントロールに集中している詠唱師に向けて。


攻撃中の詠唱師はダガーを、ブレイズによって撃ち落とすが、僕は両手を使い、投げまくる。

撃ち落とせなかったダガーが、詠唱師たちに何発か当った。


鎖の制御が乱れ、ひびが入りだした。


 バキンッ!!


壊した!!と思った時には、すでに銀龍の少女はそこにはいなかった。

銀色の長い髪をなびかせ、一瞬のうちに5人の詠唱師を、殴り倒した。


その動きは、身体機能強化を最大まで行っている、僕の知覚速度でも完全に捉えきれなかった。


 (それにしても・・・・)


僕には、銀色の髪をひるがえして動き回る姿は、まるで妖精のように見え、見とれてしまっていた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NEWVEL投票ランキング
HONなびランキング
「この作品」が気に入ったらクリックして、投票してください。励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ