表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の旅路  作者: Posuto
37/53

第36話:旅立ちの気配

 「なあ、そのイヴって子かわいいのか?」


訓練を終えて、首都へと帰る道でアルが聞いてきた。


 「ん?まあ・・・・・それなりに・・・・・」


 「えー!!それなりって何よ〜」


 「うわぁあ!!」


イヴが僕の目の前に急に現れた。


 「ど、どうした!?」


 「なにごとですの!?」


 「え?え?」


セラとルーリアは驚き、チコは何が起きたのか分かっていない。

あ、そーいえば僕以外にはイヴは見えないのか。


 「なんだ急に叫んだりして?陽気のせいでおかしくなったか?」


セラ、ひどい。


 「イヴが僕の目の前にいるんだけど、みんなには見えないよね?」


 「なに?ほんとか?」


イヴの言うとおり見えてないのか。


 「なぁ、イヴ。みんなに見えるようにはできないの?」


 「ん?んー・・・・・・あ、そうだ。ユウ、さっきの分身もっかいしてみて。」


分身というと、先ほどの模擬戦で使った『陽炎陣』のことか。

とにかく言われたとおり、『陽炎陣』を使いエーテルで分身を作る。

僕が右に一歩動くと、さっきまでたっていた場所に分身ができる。

分身といっても、薄くむこう側が透けて見えるような残像だ。


 「おおー!!こんな技、見るの初めてです!」


チコは感心している。

魔道具整備で、先ほどの模擬戦を見てなかったようだ。


 「イヴ、分身作ったよー。」


 「はーい。じゃあちょっと待っててね。」


そう言って、イヴは姿を消した。

何する気なんだ?


 「ユウ。結局どうなったんだ?」


セラが聞いた。

みんな不思議そうにしている。


 「んー・・・・イヴがこの分身使って何かするらしい・・・・・ん?」


分身にノイズが走ったかのように乱れた。

ノイズの範囲が大きくなり、分身が全体がノイズに包まれる。

ノイズが収まった時には、僕の分身がイヴの姿になっていた。


 「ええー、どーやったの!?」


 「ちょっと割り込みをかけただけだよ。」


割り込みって何だ?


 「お、おおおおおお!!この人がイヴさん!!はじめまして、アルフレッドです!!」


こりない奴だな、アル。

うるさいので黙らしておく。


ボコッ!!


 「んごっ!!」


よし黙った。


 「彼女がイヴか?」


セラが僕の分身だったものを見ながら聞いた。他の二人も驚いている。


 「面と向かうのは初めてね。私がイヴ。ユウの雇い主、というか主人かな?よろしく。」


と、イブは礼儀正しく自己紹介をした。

主人って・・・・・僕はイヴの使いッパシリか。


 「みんなのことはユウの視覚から見せてもらって知ってるわ。これからもユウのことよろしくね。」


だんだん分身のが薄くなっていっている。

もうすぐ消える。


フッと霧のように一瞬で消えた。結局自己紹介しただけだな。

まあ、これでイヴが僕の妄想の産物ではないと証明できただろう。


 「驚きましたわ。一体なんだったんですの?彼女は精霊のたぐいなのですか?」


ルーリアがいまだ驚いた顔で聞く。


 「自称、世界の管理者だって。僕も詳しいことは聞かせてもらってないよ。」


 「ふぁー、すごいです。遠隔から他者の制御化にあるエーテルに割り込みをかけるなんて、どうやって行っているのか皆目見当がつきません・・・・・」


チコはどうやら技術的なことで感心しているようだ。

チコらしい反応だ。


イヴが戻って来た。

みな気づいていない。いつもの状態なのか。


イヴは何か疲れた様子だ。


 「はぁー・・・・なれないことすると疲れる〜。今日はもう帰るー。」


そう言って、すぐに消えた。

イヴでも疲れるんだ。


 「・・・・・・う・・・・・・あれ?俺なんで寝てるんだったけ?」


アルが今頃起きた。


 「イヴさんは?」


 「疲れたから帰るって。」


そう言うと、アルはがっくり膝をついた。



〜〜〜〜〜〜



首都まで帰ってから、みんなとは別れ、セラと共に『ニニギ亭』に向かう。

セラは仕事がある。


 「じゃあ、仕事に行ってくる。」


 「うん。いってらっしゃい。」


『ニニギ亭』に着くと、セラは仕事用のミニスカメイド服に着替えに行った。

僕はカウンターにいるユウラさんの所に行く。


 「やあ、ユウ君。昼食のパンはどうだった?」


 「おいしかったですよ。」


 「そりゃよかった。」


そーいえばユウラさんに伝えとかないと。


 「ユウラさん、この前の件受けますよ。」


 「ん?なんのこと?」


 「亡霊騎士団ファントムナイツの件ですよ。」


 「へー・・・・・イヴに言われたのかい?」


びっくりした。

まさかイヴのことまで知っているとは。


 「それもありますけど・・・・・単純にこの世界が好きなんですよ。だから、戦争になるのを止めたい。」


これは本当だ。

違う世界から来たからこそ、この世界の美しさは無くしてはいけないものだと感じる。


 「ふーん、そっか。ありがとう。ユウ君が参加してくれるとありがたいよ。じゃあ、約束通り飛空挺のチケットあげるよ。体の調子はもういいのかい?」


 「はい。もうほとんど治りました。そろそろ動こうと思います。セラが抜けても平気ですか?」


 「セラが抜けると売り上げが落ちるだろうけど・・・・・しょーがない。気をつけて行きなよ。帝国にはすでに天次郎が入り込んでいる可能性がある。」


竜宮天次郎・・・・・

おっさんの双子の弟か・・・・あんなのがもう一人いるなんて考えたくねぇ。


 「ルーリアも一緒に帝国に帰ることになってるから、案内してもらいな。ついでに、亡霊騎士団についての詳しいことも聞いときな。」


 「え?ルーリアも一員なんですか?」


なんとなくそんな気はしていたが。


 「ああ。あの子の父親が初期メンバーの一人なんだよ。」


へー、ルーリアの父親か。

ルーリアが協力してくれるのは、とても心強い。


そーいえば、ユウラさんには聞きたいことがあったんだった。


 「ねー、ユウラさん。うちの師匠の本名が竜宮凶一郎ってことは、僕の使う技は竜宮流ってことなんですか?」


 「ん?いや、厳密には違うよ。君の使うアルベイン流は、竜宮凶一郎流と言うのが正しいかな。」


あれ、違うのか?

おっさんが竜宮なら教えてくれた技も竜宮のものだと思ったのに・・・・


 「それってどういう意味です?」


 「つまりは、君の師匠が生きてきた中で手に入れた技の集合体。独自の流派と言っていい。竜宮流も混じってるし、私の使う虎島流も混じってるはずだ。」


なんだそれ?

虎島流って格闘技がメインのはずだ。


 「竜宮凶一郎の戦時中は『技喰らい』って呼ばれてたんだ。」


急にユウラさんが話題を変えた。


 「わざぐらい?」


 「そう。文字通り、『技』を『喰う』だよ。あの男は他人の技を一度見ただけで、鏡で写し取ったかのように自分のものとする。二度見ると、技の本質を写し取った相手よりも深く理解し、自分の使いやすいようにに改良してしまう。」


うげ・・・・・

おっさんの教える技が、やたらバラエティーに富んでいるのはそのせいか。


 「そんなこと簡単にできるんですか?」


 「まさか。普通の人間にできる訳がない。あいつは異常なんだよ。竜宮の中でも千年に一人とか言われている超天才だ。竜宮流剣術を弱冠12歳で会得してる。」


12歳って小学生だろ!?

そんなガキの頃に既に一流派を会得していたなんて、異常だ。


 「私は、ユウ君が凶一郎の技を覚えられるのもすごいと思うけどね。」


ぬ?褒められた?

僕って結構すごい?

まあ、イヴの改造のお蔭なんだろうけどね。


 「いろいろ教えてくれて、ありがとうございます。」


 「いいよ。いつ出るんだい?」


 「セラも早く帝国に行きたいだろうと思うので、旅の準備をして二日後には。」


 「そっか。がんばりなよ。」


そう言ってユウラさんは、僕の頭をポンポンと叩いた。


ユウラさんにはすごく助けられた。

この街とももうすぐお別れとなる。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NEWVEL投票ランキング
HONなびランキング
「この作品」が気に入ったらクリックして、投票してください。励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ