第34話:桃色入院生活
忘れていた。
ルーリアと始めて会った時、誰かに似ていると思っていたじゃないか。
僕が寝ているベッドの横にセラとルーリアが並んで座っている。
そーいえばよく似ている。
セラは銀髪ストレート、ルーリアは金髪縦ロールとちがうが、顔の造形はそっくり。目元とか特に似ている。
「セラの写真に写ってる方がわたくしの母によく似ていましたし、母の旧姓はランドグリフでしたから、状況から考えてセラは母の妹であるセリア・ランドグリフの娘であると思いますわ。」
へぇーセラのお母さんの名前ってそんなのだったのか。
「私は母の名すら知らなかったからな。ルーリアの話はとても興味深かったよ。」
セラはうれしそうだ。
「じゃあ、お母さんの行方は分かったの?」
「いや、どうも母は何年も前に失踪していたらしい。」
「えー!?なんで?」
せっかく明確な情報が入ったと思ったのに・・・・
「わたくしが母から聞いた話では、何かを研究しに行くと言って、消息を絶ったそうです。」
研究?
研究者だったのか?
「はい。セラのお母さまは、かなりの天才肌だったようで、剣術などの武芸の腕があるだけでなく、研究機関ではエーテル技術開発や大氣術開発にも携わっていたそうですわ。」
ど、どんな超人だよ・・・・・
セラのお母さんだから完全に体育会系だと思ってた。
「でも、良かったじゃないか。血縁のある人が見つかったんだし。」
「ああ。よかった。」
セラのその言葉には大きな喜びが感じられる。
その横でルーリアもにこにこしている。
「セラとは、とても気が合うようですの。いろいろ話してみて、楽しかったですわ。」
ほー・・・・・
仲良さそうだね。
「セラとわたくし、男性の好みのタイプなんかは特に似てますわ。」
「ちょっ・・・・・ルーリア!?」
セラが慌てている。
好みのタイプですと!!
それは聞いてみたいですな!
「教えて!!」
「黙れ!!」
顔を赤くしたセラに怒られた。
ひどい・・・。
〜〜〜〜〜〜
その後、二人はしばらく世間話をした後、帰って行った。
夕方には、病院の夕飯が来たのだが、味が薄くて量が少ない。
もっと濃い物を、一杯食いたいのだが、5日間も寝ていたのでダメなんだそうだ。
夜になり、部屋の明かりが消される。
ベッドに横になって思考する。
セラとルーリアが血縁だったのは驚きだ。
これまでの話から、セラのお母さんは帝国の実家を出て、龍の国に行き、セラを産んでから龍の国を出ていると考えられる。帝国には帰ってきていないようだ。
しかし、解せないことがある。
セラのお母さんの身元がはっきりしたのはいいのだが、ならば情報屋が殺された一件はどうなるんだ?
研究内容に何かあるのだろうか?
帝国に行けばもっと情報があるだろうか?
そもそも戦争の危険性がある現在、帝国に行くことは危険じゃないだろうか?
「はぁー・・・・・まだわからん事が多いな。」
「そうねぇー・・・・」
・・・・・・誰だ!?
急にベッドの横に誰かが現れた。
「イヴ!?」
「こんばんはー」
「え、え、どうして!?僕寝てないよ!?」
「あら?私、寝てるとき以外に会えないなんて言った?」
いや、言ってないけど・・・・・
なんか普通の景色にイヴがいると違和感がある。
「どうなってるの?」
「うん。この前の昇華で、線が強化されたから、こーいうこともできるようになりました。」
そう言って、イヴはその場でくるっと回った。
目の前にいるように見えるが、何か違和感がある。
手をのばして、イヴに触れようとするとするっとすり抜けた。
「やっぱり。イヴはここにはいないのか?」
「そーだよ。ユウの視覚を利用して、目の前にいるように見せてるだけ。今のユウを、はたから見ると、一人でブツブツ言っている危ない人だね。」
うわ。
嫌だな、それ。
「で、イヴは何しに来たの?」
「ユウに助言をしにきましたよー。あ、ついでにお見舞いも。」
お見舞いをメインにしてくれ。
「助言って?」
「ユウラに言われたこと。あの話を受けて、帝国に行きなさい。」
助言じゃなく、命令ですよそれ。
戦争を止める協力をするってやつか。
「どうして?」
「私がユウをこの世界に呼んだ目的の一つが、今回の戦争を止めることだから。」
え?
そーなの?
「じゃあユウラさんの申し出を受けて、帝国に行けと?」
「うん、帝国にいるんだよ。この世界の敵がね。」
「敵・・・・・?」
「そうそう。強敵だから注意してね。」
「注意って言っても、昇華があるから簡単には負けないんじゃないの?」
正直、昇華を使えば、おっさんクラスの相手でなければ余裕で勝てる。
「あー・・・・・実は昇華は、体への負担が大きいから連続では使えないの。今だって、ちゃんと動けないでしょ?慣れれば連続起動が可能になるけど今は1週間以上、間を開けないと。強い力にはそれなりのリスクがあるからね。」
申し訳なさそうにイヴは言った。
まあ、そんなに期待はしていなかったけどね。
それに、昇華状態は少し気分が悪いから好きにはなれない。
「わかった。えーっと、ユウラさんの申し出を受ければいいんだよね?」
「そうそう。お願いねー。じゃあ、おやすみ。」
そう言って、イヴは現れたのと同じような突然さでフッと消えた。
はあー驚いた。
「あ、言い忘れてたけど、私に用があったらいつでも呼んでね。」
またいきなり現れたイヴが言い、すぐに消えた。
心臓に悪いからいきなりは止めてください。
〜〜〜〜〜〜
朝から医者の先生の診察、まずい朝ごはん。
基本的に動けないので暇だ。
暇つぶしにナースのお姉さんを観察。ナース服はすばらしい。
昼ごろ、ルーリアがまたやって来た。
今回は一人だ。
「おはよー、ルーリア。今日は一人?」
「おはよう、ユウ。わたくし一人では不満ですか?」
ちょっと拗ねたような顔が可愛いですよ。
「いやいや、そんなことないよ。暇だから、話し相手がほしいんだよ。」
「よかった。セラは仕事があるので今日はまだ来れませんわ。なので、今日一日わたくしがお世話します!」
え・・・・・・
一日ですか?
「別にそこまでしなくてもいいよ。ルーリアだってすることあるだろ?」
「わたくしのことは気にしなくてかまいません。それで、ユウは何か困ってることとか、したいことがありますか?」
困っていること、したいこと・・・・・・
んー何だろ?
「んー・・・・風呂に入りたいかな。しばらく入ってないし。」
何となく体もべたべたするので、言ってみた。
「わかりましたわ。」
え?
わかりましたって何が?
ルーリアはそう言って病室を出て行った。
どうする気なんだ?
戻って来た。
ルーリアは桶とタオルを持って帰った来た。
ああーそういうことか。
「お風呂は無理ですが、体を拭くくらいならわたくしにもできます!」
とても気合いの入っている様子。
嫌な予感しかしない。
「あー・・・・ルーリア。自分でやるからいいよ。」
「いえ、遠慮せずにユウはじっとしていてください!」
と言って、桶のお湯で濡らしたタオルを片手に、こちらに近づいてくる。
「いや、ほんとに自分でできるから、いいですよ!?」
「遠慮しなくていいんですのよ。よいしょっと。」
ベッドに横になる僕に馬乗りになり、着ている服を脱がし始めた。
抵抗してみるが体がうまく動かないうえに、ルーリアも割と力がある。
「ちょ、ちょっと待って!!あ、ズボンはダメだ!!下はやめてー!!」
上を脱がした後、ズボンまで脱がそうとしている。
「あら、最初に全部脱がしていたほうが面倒がないでしょう?」
いや、そう言う問題じゃないですよ!!
必死に抵抗していると、病室の扉が急に開いた。
「おーい、ユウ!!元気か?アルフレッド様が見舞いに来てやったぜー!!・・・・・・・あれ?」
僕たちはベッドの上で戦っている状態で固まっている。
その状況をみたアルは一瞬固まり、今度は膝をつき、手を地面について何やらぶつぶつ言い始めた。
「なんでユウにばっかりこんなおいしいシュチュエーションが・・・・・・・俺の方が断然かっこいいのに・・・・・・」
急にテンションが落ちたな。
「アル、お見舞い御苦労さん。どうした?」
聞いてみる。
「うるせぇ!!お前ばっかいい思いしやがって!!・・・・・うわぁーーん!!」
お見舞いの果物らしきものを放り出し、泣きながら病室を飛び出して行った。
何ごと?
今のうちにルーリアをひきはがす。
「ルーリア、体拭くのはいいから、この果物の皮剥いて。」
と、別のことを頼んで注意をそらす。
「ふむ、わかりました。」
ベッドから降りてくれた。
ふー助かった。アル、いいタイミングだ。
もう少しで公開羞恥プレイだったぜ。
次の日、アルから話を聞いたセラがルーリアと同じことをしようとした。
またその時も絶妙のタイミングで、アルが登場し、泣いて走り去っていった。