第2話:おっさん登場!!
ドゴン!!
という肉を打つ音。
その音とともに、こちらに向かってきていた猪は
左のほうに木をなぎ倒しつつ、吹っ飛んで行った。
そして、先ほどまでイノシシがいた地点には人が立っていた。
白髪混じりの髪を後ろでまとめた、50代ぐらいの男だ。
僕の目がおかしくなっていなければ・・・
さきほど、この男が猪に向かって飛び蹴りをかましたように見えた。
(人間技じゃないぞっ!おいっ!)
とビビっていると、男がこちらを向て声をかけてきた。
「***********?」
(え・・英語か?何語だ?)
かなり混乱した。僕は英語が苦手だ。
かなり。とても。すっごい。
だから、何語なのかさっぱりだ。
「ありがとうございます。助けてくれて・・・」
開き直って日本語で言ってみた。すると、
「なんだ兄ちゃん、ヤマトの出身か?」
「へっ・・?」
言葉が理解できた。僕が超人的能力を発揮
したのでは当然なく、男の人が日本語を話したのだ。
「日本語喋れるんですか!?」
驚いて聞いた。
「ニホンゴってよくわからんが、言葉わかるだろ?」
と親指をグッとたてた。
(助かったのか?)
ホッとしたような、しないような・・・
落ち着いてから自己紹介をした。
「俺は、ガウス・ランドールだ。52歳。恋人募集中だ!
君に母、姉、妹がいればぜひ紹介してくれ!」
「・・・・・・・・」
さっきまで自分の心の中での評価は、「頼れる男」だったが
「おっさん」に改めよー・・ていうか母までかよっ!
「ジョーダンじゃないかー。そんな顔するなよ〜。」
とヘラヘラ笑いながら、おっさんは言った。
僕は相当、微妙な顔をしていたようだ。
「僕は、キリシマ・ユウと言います。」
「ユウか。よろしくな。」
自己紹介を終えて、僕は自分の状況を話した。
目が覚めたら森にいたこと、記憶があいまいなことなどなど・・
話しているうちに、おっさんの顔は真剣になり
「頭でもうった?」
と聞いてきた。
やっぱり信用されないかー
ですよねー電波入ってますよねー
「うそうそ。信用するってー。」
そんなヘラヘラ顔で言われてもねー
と思ったら、急に真面目な顔をして
「君は、異界人だね。」
「イカイジン?」
聞いたことのない言葉だ。
「言葉どーりだよ。異なる世界の人。」
「ああー。異界人ね・・・・はぁ?」
何言ってんだこの人。頭でも打ったか?
「なんだ、その蔑むような眼は!
じゃあ質問するけど、君はここがどこだと思う?」
「外国のどこか・・・・かなぁ?」
おっさんが最初話しかけた時、外国語をはなしていたこと
あと、森の雰囲気から何となくそう感じた。
「じゃあ君は何で外国にいるの?」
おっさんは、次々質問してくる。
「えっと・・・拉致されたとか・・?」
「拉致されるような身分なの?」
ぼくは、何も言い返せなくなった。
家は普通の家庭だ。金持ちじゃない。
自分でも、あり得ないことを言っているのは分かっていた。
「俺はね、君のような異界人に会うのは、初めてじゃないんだよ・・」
おっさんは、悲しむような、懐かしむような顔をした・・・が、
一瞬で元のヘラヘラ顔に戻った。
「そう・・なんですか?」
驚いた。
「ああ!だから、君のような人を納得させる方法を知ってる。」
何やら自慢げに胸を張って、言った。
「空を見ろ。」