表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異界の旅路  作者: Posuto
25/53

第24話:いろいろ予想外

 白い世界。

前後左右、真っ白。


久しぶりにこの夢か・・・・

前に見たのは、首都に来たころだったかな。

イヴはどこだろ?


後ろを振り返ると、白い髪と白いドレスの少女がうずくまっている。

誰かと言っても、イヴに違いないだろうが・・・・


 「しくしく・・・・・」


えー・・・・

泣きまね、それも自分の口でしくしくって言っている。

なんだろ、つっこんだほうがいいのか?


 「あー・・・・イヴ、ひさしぶり。なにしてるの?」


 「私は泣いてるの。あまりの出番の少なさを嘆いているの。しくしく・・・・」


どうしろと?

僕が困惑していると、イヴは急に泣きまねを止め、立ち上がった。

赤い瞳がこちらを向く。


 「とまあ冗談はそこまでにして、久しぶりね、ユウ。」


 「・・・・・・君ってそんなキャラだったっけ?」


僕の第一印象は、ミステリアスで儚い感じの美少女だったのに・・・・


 「前は時間がなかったし、やっぱり第一印象は儚げな感じがいいかなー、と思って。」


イヴはいたずらが成功して喜んでいる。

だ、だまされたー!!

微妙にへこんだ。


気を取り直して


 「で、今日は急ぎじゃないの?この前会った時はすごい急いでいたけど・・・・」


 「ええ。時間は気にしなくてもいいわ。もう安定したようだから。」


安定?なにが?

と思ったが先に聞きたいことがいくつかある。


 「前にも聞いたけど、僕をこの世界に連れてきたのが君って言うのは本当?」


 「本当よ。私がこの世界に連れてきた。」


 「どうして・・・・なぜ僕を?」


 「ユウが選んだのよ?」


え・・・・?

僕が選んだ?


 「私がユウに死ぬのと生きるのどっちがいい?って聞いたら生きたいって言ったから、この世界に連れて来たの。」


なんか聞きづてならん単語がいくつかあるぞ!?


 「死ぬか生きるかってどういうこと!?」


 「私がユウを連れてきた理由は二つ。才能があることと、死にかけていたこと。つまりは、ユウは元いた世界で死にかけてたのよ。」


ああ・・・・そういうことか。

生きたければ、世界を渡れ・・・ということか。まあ当然生きる選択をする。


 「怒った?」


イヴは少し心配そうに聞いてきた。


 「いや・・・実際この世界のことはそんなに嫌いじゃないし、生かしてもらったんだから文句は言わないよ。それにしても、僕って何で死にかけてたの?」


 「思い出してないのね・・・・じゃあ、はい!」


そう言って、イヴは僕の額に触れた。

フラッシュバックする。



見えるのは、横断歩道。

近づいてくるトラック。

視界がぐるりと回転し、暗くなった。


 「うおっ!!」


うあー・・・・死ぬ瞬間のことを思い出した。

気分悪いな・・・。


 「大丈夫?思い出せた?」


 「もう、バッチリ・・・・あんまりうれしくはないけどね。」


 「立ち話も何だから、座りましょう。」


イヴがそう言うと、僕たちのすぐそばにいつの間にかテーブルと椅子が現れていた。

テーブルの上にはカップがある。紅茶のようだ。


 「いつのまに?」


 「ここは精神世界だからね。なんでもあり。どうぞ。」


僕は勧められた椅子に座り、紅茶をいただく。

うまい。

気分の悪さが無くなった気がする。


 「ユウ、もっと聞きたいことがあるでしょう?答えられることは答えてあげる。」


僕の正面の椅子に座り、カップを手に取りつつイヴは言った。

その言葉は答えられないことがあるということか・・・・

まずは何から聞くべきか・・・・。


 「僕が、元の世界に戻してくれ、って言ったら戻してくれるの?」


 「私の目的を果たしたくれた後なら、考えるわ。」


 「目的?僕を連れてきた目的ってこと?」


 「そう。内容は今はナイショね。」


 「ええー・・・教えて!」


 「ダメー」


手をバツにして完全拒否ですか。


 「そのうち教えるからね。ごめんなさい。」


ごめんなさいの顔が素晴らしく可愛かったので許す!!


他の質問は・・・・何聞こう?


 「うーん・・・・そもそもイヴって何者?」


 「神様?」


なんで疑問形?


 「なんだろ?管理者と言ったほうが妥当かなー・・・・めんどくさいからナイショで。」


めんどくさいって・・・・

管理者・・・この世界の管理者?

なんか壮大すぎてよくわからん。


 「その神様っぽい物であるイヴが、なんで僕を頼るの?何でもできそうじゃないか。」


 「今は神様レベルが低下中なのー。」


真面目にお願いします。


 「簡単にいうとね、今は本気が出せない状態なの。だからユウに手伝ってもらいたい。ユウには才能があるから大丈夫だよ!」


才能。

僕には縁のない言葉なんだが。

生まれてこの方、何かに才能があるなんて言われたことがない。


 「じゃあ、イヴは僕に何をしてほしいの?」


 「今のところは何もないよ。強くなっていってくれればいいよ。」


僕は何させられるんだろ・・・・怖いな〜。


僕が次に聞くことを悩んでいると、イヴが目をきらきらさせて僕に聞いた。


 「ねえねえ。ユウに聞きたいことがあるんだけど、いい?」


 「ど、どうぞ・・・・」


僕はイヴの勢いに少し押され気味で答えた。


 「ユウはロリコン?」


 「ぶっ・・・・げほっ!!何でそんなこと聞くんだ!?」


危うく飲んでた紅茶を吹き出すとこだった。

まさかこの世界に来て、ロリコンという言葉を聞くとは・・・・


 「だってユウは、チコちゃんにとっても優しいじゃない。ちっちゃい女の子が好きなのかなーと思って。」


 「チコに優しいのは、なんというか親が子供を見る的なことであって、僕は断じてロリコンでは・・・・・って、あれ!?なんでチコのこと知ってるんだ!?」


 「なんでってあなたの見ていることは、すべて知っているけど?」


なんだと!?

そ、それはまずい!!


 「だから、ユウがセラちゃんのお仕事中に、スカートから何とかパンチラが拝めないかと観察しているのも知ってるよ。」


いやー!!やーめーてー!!

プライバシーの侵害だ!!

男の子なんだから仕方ないだろ!!


イヴはニコニコ笑っている。

くっ・・・なんて奴だ!!


 「ふふっ・・・ユウの反応は面白いね。その反応から見て、ユウの本命はセラちゃんだね。」


どの反応ですか!?

な、なんか話がまずい方向に行きそうだ。


そう思っていると、イヴは急に体をピクッとさせ、上を見た。

僕も上を見たが何もない。


 「どうしたの?」


 「うん・・・・そろそろ時間切れだね。」


イヴは残念そうに言った。

僕は内心ホッとしている。


 「ユウ、最後に。もうすぐいろんな事が動き出すよ。注意してね。じゃあ、またね。今日は楽しかったよ!!」


イヴはそう言うと、体がどんどん薄くなり消えていった。

注意しろって何に?

具体的に言ってくださいよー。不吉なことを言って消えないでくれよ。


僕の意識も覚醒へと向かった。



〜〜〜〜〜〜




目を開けると、木でできた天井が見える。

僕が泊まっている宿の天井だ。

身を起こす。


前の時にも思ったのだが、今の夢は真実なのだろうか。

僕が脳内で勝手に考えた妄想に近い夢、という可能性も捨てきれない。

それはそれで自分が情けなくなるが・・・・・

誰かに話してもいいが、頭がおかしいと思われるのが落ちだしなー。


まあいいか。

さてと、今日も元気にがんばろー

僕は身支度を整え、部屋を出る。

宿のおじさんに挨拶をして、出発。



〜〜〜〜〜〜



前回のチコの依頼から、五日たった。

僕はチコに刀を預けていたので、その間の仕事をアルに手伝わせていた。


この五日間、受けた仕事はすべて戦闘系だ。害獣駆除や、護衛などなど。

アルを実戦慣れさせるためだ。あの実力を利用しない手はない。


戦闘系依頼の中でもあまり難度の高くないのを選んだ。

そうしないとアルがビビりまくって、仕事にならないのだ。


まあ実際難度が低くてもアルはビビりまくっている。

いまだに実戦に慣れないようだ。


 「おい、ユウ、きたきたきた!助けてー!!」


とか


 「帰る!!お家に帰るー!!」


とかよく言う。

だが、以前よりは少しマシになっているように感じる。

あくまでも少しだが・・・・


今日は、チコに預けていた刀の回収と、セラの母親についての情報を情報屋に報告してもらう。


まずはチコのほうから。



クロック通り、チコの工房に来た。

ノックす・・・・


 「ぐはっ・・・・・!!」


またもやドアの攻撃!!

鼻に当たった。ツーンという痛み。


 「ふぉおお?いい音?」


チコまたか。君はもう少しドアをいたわりなさい。


 「うあぁ!?ユウさん、ごめんなさい!!」


 「ああーいいよ。今日は刀を取りに来たんだけど?」


僕は鼻を押さえつつ聞く。


 「はい、少し待っててください。」


チコは部屋に引っ込んだ。ドアを閉めて。

なんかいやな予感がするので、念のためドアから離れておく。


 バァン!!


ドアが恐ろしい速度で開いた。

わざとだろ!!


 「あれ、ユウさん?どうしたんですか?」


くっ・・・・無自覚なのか。怒れない。


 「なんでもないです・・・・・。刀はどうなった?」


 「はい。ばっちり整備しておきました。刀身の砥ぎと、内部術式インサイドコードの微調整、その他劣化部品の交換などしておきました。たぶん、エーテルの徹りが良くなっていると思います。」


刀を受け取り、抜刀。

エーテルを徹す。


チコの言うとおり、エーテルの徹りが少し良くなっている気がする。


 「ありがと、チコ。いい感じだ。お代はいくら?」


整備費用のことだ。


 「お代はいいです。その刀でいろいろ勉強させてもらったので。とってもすばらしい作品でした!感激でした!」


 「そ、そう。どういたしまして。じゃあ、チコ。またねー。」


チコの興奮した様子に押されつつ、別れの挨拶をする。


 「はーい。またいつでもどうぞー」



〜〜〜〜〜〜



僕は港まで来た。


首都ペルートの東側は広大な湖、フロリア湖に面しており、飛空挺の港として賑わっている。

港には各国からの定期便や、貨物船などがある。


以前セラの母親のについて依頼した情報屋は、この近辺に店を構えている。

この情報屋はユウラさんの紹介なので、おそらく信用できる。

何かいい情報が入っているだろう。


店に入る。ぱっと見は雑貨屋だ。


 「こんにちはー。」


 「いらっしゃい。あんたは確かユウラさんとこの人か。」


店の中にいた老店主に挨拶する。


 「写真の人見つかりましたか?」


情報屋はセラの母親の唯一の手がかりである、母親の写真を複写して調査してくれていた。

情報元が写真だけという状況なので、前金だけでかなりの額を払った。

セラには内緒だ。


 「ああ、そのことなんだが・・・・・すまない。この仕事降りさせてもらってもいいか?当然もらった前金は返す。」


 「な、なんですか突然?」


予想外だ。だまされたか?


 「あんたはユウラさんの紹介だ。できる限りのことはしてやりたい。だがまずい。帝国にいる俺の仲間が、その写真について軽く探りいれたんだがな。みんな消された。」


消された?

殺されたのか。どういうことだ?


 「すまんな。あんたも、その写真について調べるのは止めたほうがいい。」


僕は頭が整理できないまま、店を後にした。



〜〜〜〜〜〜



港をあてもなく歩く。


写真を見る。

そこには金髪の美しい女性が微笑んでいる。

目元がセラに似ている。


どこかの部屋の暖炉の前に椅子を置き、そこに座っている構図だ。


身なりの綺麗さ、暖炉などの調度品などから考えて貴族の女性だ。

情報屋の仲間は、帝国で殺されたらしい。


ならば帝国の貴族?

だが、なぜ殺される?

情報屋は軽く探りを入れたと言っていた。


その程度で普通殺されるだろうか?

セラの母親は相当ヤバい存在なのだろうか?


そこまで考えて、ため息をついた。

僕の予定では、今日明確な情報を手に入れ、セラを喜ばせることができるはずだったんだが。

帝国の貴族かもってだけしか分かっていない。

しかも、危ない存在というおまけつき。


伝えるべきなんだろうか?

ああーどうしよう・・・・・


僕はいつのまにか倉庫街まで来ていた。


 「おっと・・・ぼーっとしすぎたかな。」


もと来た道を帰ろうとした。


 「ああ?払えねぇってのか?」


 「お代は全部払ったはずです!」


男の声。片方はドスの利いた声。片方はひ弱そうな声だ。

僕が今通り過ぎた、倉庫と倉庫の間の道から聞こえる。

この近辺は、人通りが少ない。


 「あれは前金だ。ほら、ちゃんと依頼完遂したんだからもう半分よこせ!」


 「そ、そんな無理です!お金がありません!」


 「うそつけ。まだ持ってんだろ?」


僕は声の聞こえる道を覗いてみる。


傭兵らしき人が8人、1人の商人風の男を取り囲んでいる。

おそらく飛空挺の護衛だ。


飛空挺は空賊や、空に住む凶暴な生物に狙われやすい。

そのため護衛をつけることが多い。

こいつらは護衛を請け負った、たちの悪い傭兵だろう。


ほっとこうか・・・・

という思考が出てきたが、さすがに後味が悪い。

でも8人だ。一人でも腕のいい奴がいるとつらい。


不意打ちで2、3人倒してから、どうにかするか。

いざとなれば逃げればいい。


僕が飛び出そうとした瞬間、


 「おやめなさい!!」


僕の計画を完全に潰す大きな声。

女性特有の高く、よく通る声。


僕のいた位置から、傭兵たちをはさんでちょうど反対側。

そこには、仁王立ちした、女騎士がいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NEWVEL投票ランキング
HONなびランキング
「この作品」が気に入ったらクリックして、投票してください。励みになります。(月1回)
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ