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異界の旅路  作者: Posuto
21/53

第20話:抜き足差し足忍び足

フロリア森林地帯、内部。

チコはスキップしつつ、歌を歌って僕の前を歩いている。 


 「ハンマーぼこぼこ撲殺だ〜強いぞドワ〜フ力持ち〜♪」


テンポはとても楽しそうな歌だが、歌詞が凶悪だな・・・・。

前回と変わらず保護者的な気分で歩く。

僕の横を歩くセラを見ると、なんか子を見る親のような穏やかな表情をしている。


 「セラ、なんか楽しそうな顔だね。」


 「そうか?まあチコを見てると、何となく穏やかな気分になるな。」


 「実はチコは僕たちより年上だ。20歳だって。」


 「は・・・・?冗談か?」


驚いている。僕も今でも信じられないよ。


 「いや、ほんと。」


 「そ、そうか。完全に年下の子供を相手にするように会話していたんだが・・・・彼女、怒ってないかな?敬語を使うべきか?」


 「大丈夫だろ?僕も年下を相手にしてる感覚でしゃべってるけど、怒られてないし。今さら敬語を使いだしても、気味悪がられるだけだと思う。」


子供扱いすると怒るが・・・・


 「それもそうだな・・・・・。ところで、気づいてるか?」


 「ん?まあ・・・・」


セラはこちらにちらりと視線を送る。

下だ。地面の下に何かいる。


 「チコー、こっちおいでー。」


チコを手招き。おいでおいで。

プンプンという擬音がつきそうな怒り方でチコはこちらに来た。


 「な、なんです!その子供を呼ぶような感じの言葉は!わ、わ、なんです!?」


近ずいてきたチコを抱える。


 「セラ、先制攻撃よろしく。」


 「まかせろ!跳べっ!」


体内エーテル操作による、身体機能強化。

僕はセラに言われたとおり、チコを抱えたまま真上に跳んだ。


その瞬間セラは右の拳を地面に叩きつけた。


ボゴンッ!!


龍族生来の圧倒的な膂力によって、砲弾が直撃したよう音と共に地面が陥没した。

そして、地面を伝播した衝撃波は、地面の下にいた者達を地上に弾き飛ばした。

跳び出てきたのは、緑色の物体。


トカゲだ。二足歩行しているので、恐竜のようにも見える。

グロウリザードと呼ばれる、爬虫類型の生物だ。

体は小柄な人間程度の大きさ、爪はナイフのように鋭い。皮膚はとげのついた丈夫な外殻だ。


こいつらは、意外と賢い。今も地面の下から奇襲をかけようとしていた。


四匹。セラの一撃で混乱している。

僕が地面に着地した時には、セラはもういない。


すでにトカゲに接敵している。

移動のスピードそのままに拳を叩きつける。


ボグッ!!


肉を打つ音。グロウリザードは吹っ飛び、近くの木に激突、絶命した。


セラの背後にもう一匹のトカゲが飛びかかる。

セラはまるで後ろに目がついてるかのように、振り向きざまに裏拳。

叩き落とした。


そのまま叩き落としたトカゲに足を引っかけ、もう一匹に蹴り飛ばす。

三匹目は飛んできた仲間と、背後にあった木に挟まれ押しつぶされた。


三匹、これを一瞬でセラは無力化した。強い。やはり、僕とは比べ物にならない。


 「ユウ!いったぞ!」


 「あいよっ!!」


最後の一匹はこちらに来た。

僕はチコを抱えたまま高速移動。飛びかかってくるタイミングで、後ろに回りこんだ。

背後からトカゲの頭部をつかむ。


バチィッ!!


雷撃。

グローブに取り付けられた簡易詠唱杖ライトスタッフによって、体内エーテルを雷撃変換。

スタンガンのように相手に直接電撃を流し込んだ。

トカゲは体をぶるっと震わせると、動かなくなった。


ふー・・・・終了。

チコを地面に下ろす。


 「ユウさん、セラさん、すごいです!!ぱっ、ぱっ、って倒しちゃいました!!それに、二人とも息がぴったりです!!」


チコがぴょんぴょんはねながら、拍手している。


 「ユウさんが強いのは知ってましたけど、セラさんもすごいんですね!!すごいバカ力です!あっ、バカは失礼でふた!?えーと・・・かしこい力ですね!!」


かしこい力って・・・・あ、セラ、微妙にへこんでる。




〜〜〜〜〜〜




森はどんどん深くなる。木々は巨大で威圧感がある。

マルカポ草は結構貴重らしく、森の深い位置にしかないそうだ。


 「それで、それで、簡易詠唱杖はどうでしたか!?」


森の奥に進みながら、チコが興奮気味に聞いてきた。


 「便利だね。でも、んー、やっぱり変換効率が悪いから、使うとちょっと疲れるかなー・・・」


 「そうですねー、もともと簡易詠唱杖の使用は、エーテル供給の調整が難しいですから。でも、ユウさんエーテルの操作がうまいですね。普通慣れてない簡易詠唱杖を使うときは、エーテルを徹しすぎて、オーバーヒートさせたりする人が多いんですよ。」


たしかに、使うとき神経を使う。

この扱いにくさが、簡易詠唱杖があまり多くの人には使われない理由だろう。


 「私にも使えるかな?」


セラも興味をひかれたようで、聞いてきた。


 「無理じゃないか?」


 「無理だと思うです。」


僕とチコは同時に言った。

セラはすこし不服そうだ。


 「な、なんだ、2人そろって・・・・。やってみないとわからんだろう?」


 「いやー・・・・セラのエーテル操作は豪快だからね・・・・・それに案外不器用だし。」


セラの体内エーテル操作は腕力強化に特化しているため、基本的に豪快なのだ。

簡易詠唱杖を使わせたら、十中八九オーバーヒートさせるだろう。


 「ゆ、ユウさん、不器用は言いすぎですよ。」


 「そう?実際セラは基本的になんでも力任せの、筋肉魔人だから。すぐ僕のこと殴るし・・・・・え、あ、うそ、うそです!!」


からかうつもりで言葉をつづけていたのだが、いつの間にかセラはニコニコ笑っていることに気づいた。

目が笑ってない。

怒っとる!!


 「あれか、君は私に喧嘩売ってるんだろ?」


 「ま、まさか、そんなことしませんとも!!冗談っす!!」


セラは僕の両肩をつかんで、その怪力で固定した。う、うごけない。


セラのひざ蹴りが僕の腹に直撃した。連続で。


 「うっ、ごっ、がっ、いっ、やめっ、ごふぅ・・・・」


六発入れられた。僕は崩れ落ちた。


 「ふー、すっきりした。ユウを殴るとストレス発散できるな。」


そんなストレス発散法を発見しないでくれ・・・・




〜〜〜〜〜〜




マルカポ草発見。

発見したのだが、とれない。

なぜかと言うと・・・・


 「あれは、やばい。」


 「だな。あれを相手にするのは面倒だ。」


 「こ、こわいですぅー」


マルカポ草の群生地帯があったのだが、その前に大きな生物が丸まって寝ている。

このフロリア森林地帯に生息する生物の中で一番危険度の高い相手だ。


コッホラゴーと呼ばれる、類人猿だ。

見た目はゴリラのようだが、毛は赤く、体は立ち上がったら5メートルぐらいはあるだろう。

トラックでも投げ飛ばせそうだ。

気性は荒く、凶暴なんだそうだ。


 「チコ、前みたいに薬でどうにかできない?」


 「ん〜・・・・効きそうなのはあるんですが、実際に試してみたら利かない可能性もあります・・・・」


 「そっか、どうするかな〜」


僕たちは離れた位置から、隠れて様子を見ている。

チコの薬が効いた場合はいいが、効かなければおそらく戦闘になる。

正直がんばれば勝てるだろうと思っている。

だが、戦う必要もない。

よし!!


 「僕が行ってくるよ。」


 「おい、ユウ。戦うなら私が・・・・」


 「戦わないよ。こっそり行って、取ってくるだけ。」


僕を止めようとする、セラに言った。


 「で、でも、あの生物は敏感です。気づかれちゃいますよ。」


 「まあ、なんとかなるよ。セラもチコも僕が気付かれたら、動いてくれ。それまでじっとしててくれ。」


そう言うと、セラはしばらく考え込んでからしぶしぶ頷いた。


 「む・・・・わかった。気をつけろよ。」


 「が、がんばってくださいです!もし気づかれたらこの薬をぶつけてください。効くかはわかりませんが、足止めにはなるはずです!」


そう言ってチコは僕に瓶に入った薬を渡した。


行くか・・・


アルベイン流 秘戦術 五号 『影渡し』


これは、体内エーテル操作によって体から発せられる気配、匂い、音を消し、存在を薄くする移動術だ。

暗殺者が使う技術の一種だが、アルベイン流に存在する技だ。

おっさんに教えてもらった時は、まさか暗殺術まで教えられるとは思っていなかったので驚かされた。

正直得意な技じゃない、がそんなこと言ってられない。


ゆっくり進む。

歩くことで生み出される空気の流れを極力小さくし、近づいて行く。


緊張。


コッホラゴーの巨体の横を通り抜け、マルカポ草の前まで来た。

慎重に採取。


油断するな。帰りがある。

横を通り抜けた。


よし、あと少し。


 「おーい!!セラちゃんじゃないか!!何してるんだ?僕に会いに来てくれたー?」


ば、ばかやろー!!!!


突然の大声、その声は先ほど会ったイケメン野郎の声だ。

セラ達のほうを見ると、見慣れない人が4人。

例のイケメンのパティーなのか?


セラはイケメンに拳を一発入ている。


ガウゥゥゥ


僕の横にいる生物から不吉な唸り声が・・・・・


コッホラゴーがゆっくり起き上がり、あたりを見回す。僕と目があった。


ガアァァァァ!!!


ひいっ!!


チコに渡された瓶を投げた。

瓶は顔面に当たり、われた。


コッホラゴーは、顔をかきむしるようにして苦しんだ。

効いた!?と思ったら、こちらを怒り狂った目で見た。

逆効果!?完全に怒らせたようだ。


なんて運が悪いんだ・・・・・・




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