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異界の旅路  作者: Posuto
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第18話:文化遺産的な何か

 セラをはじめとする、住み込みの従業員たちの部屋は、『ニニギ亭』の二階にある。

セラに連れられて、ぎしぎし鳴る階段を昇る。

階段を上った先には、廊下があり、左右に二つずつ扉がある。


セラは右の奥の部屋に入った。僕もそれに続く。

部屋中には、二つのベッドとタンスなどの家具が少しあるだけだ。


 「さっきから言おうと思ってたんだが・・・・・・」


部屋に入ってから振り向いたセラが言った。


 「なんでそんな歩き方なんだ?右手右足が同時に出てるぞ。」


なんと!?

緊張しすぎて、いつの間にかロボット歩きになっている!!


 「いや、ほら・・・・女の子の部屋に入るのって緊張するんだよ。」


セラは怪訝な顔をしている。


 「なにをいまさら・・・・君は私と同じ部屋で寝たこともあるだろう?」


そういえば前にお金がなくて、二人で一部屋に泊まったことがある。


 「わからないかなー、この気持ち。そーいうこととは違うんだよ。なんというか、ドキドキワクワク?」


 「私に聞くな!あいかわらず君は変態だな!」


 「失礼な!僕は普通です・・・・・よね?」


何となく自信がなくなって来た。


 「言っておくが、私に変なことしようと考えるなよ変態・・・・」


しません。そんな勇気ないです。

このままではちょっと癪なので、反撃してみる。


 「変なことって、例えば?例えば?」


 「ぬ、それは、なんというか、君がいつも私にするようなことだ!!」


セラの顔がどんどん赤くなる。

よいものですな。


 「えー?僕、セラに何してたっけ?おしえてー。」


とぼけるように言う。


 「う、う、うぅぅ・・・・・」


 「さあ、さあ、具体的に、細かく、しっかりと、説明したまえ!!」


調子に乗ってたたみかけるように言ってみた。


セラは真っ赤な顔を隠すようにうつむいてしまった。

その顔を覗き込もうとした瞬間、セラの手のひらが僕の顔面をわしづかみにした。

いわゆるアイアンクローの状態だ。

セラの顔がマジだ・・・まずい・・・・


 「シネ・・・・・」


 「え、ちょっと!まっ・・・・イダダダダ!!ゴ、ゴメンナサーイ!!」



〜〜〜〜〜〜



僕とセラはベッドに座っている。他に座る所がないのだ。

普段ならドキドキするほどの近さだが、今は顔面が痛い。とっても。

なんか自分の顔が縮んでしまったような気がする。

さすがセラ。すんごい握力。


 「いたたた・・・ひどいめにあった。」


 「まったく!次はないからな!!」


怒ってはいるが、微妙に恥ずかしさが残っているようで怒っている姿もかわいらしい!

やめられませんなー・・・セラが恥ずかしがってる姿は、文化遺産ですよ!!


さて、冗談はここまでにして真面目な話に入る。


 「さて、真面目モードで話そうか。」


 「最初からそうできないのか・・・・・?」


呆れられてしまった。最初から・・・・無理だな。うん。


 「えーと、セラは今日どうだった?」


 「母についての情報はさっぱりだ。従業員のみんなには聞いたが、さすがに接客中に客とは話せないからな。仕事自体は大変だったが、なんとかなった。鬱陶しい客が多かったがな。」


ほー鬱陶しい客か。絶対ナンパ目的の客だな。今度見つけたらぶちのめしてやるぜー


 「で、ユウのほうは?そういえば聞こうと思ってたんだが、夕食を一緒に食べていた女の子は誰だ?君、ホントに仕事してたのか?まさか、遊んでたんじゃないだろうな・・・・?」


あれ?なんか、セラの機嫌が悪い?

なんか、まずい雰囲気だ。

仕事をしたこと、チコのことを話した。図書館で寝ていたことは伏せておこう。なんか怒られそうで怖い。


 「ふーん。そうか。あの女の子は依頼主か。」


なんか機嫌直った?助かった・・・・

そうだ!龍族のことで聞きたいことがあったんだ!

 

 「あのさ、セラ。図書館の本に書いてあったことなんだけど、龍族自体が異界人だって本当?」


 「どういうことだ?」


僕は図書館で読んだ本の内容を伝えた。


 「なるほど。私は知らないが、古い世代の人に聞けばわかるかもしれないな。」


やっぱりそんなうまいこと情報が入るわけないか・・・・

しかたがない。


 「じゃあお互い何の進展もなしか・・・・・やっぱり、しばらくはここに滞在することになりそうだね。」


 「そうだな。あまり一か所にいることが、周りの迷惑にならないと良いが・・・・・」


セラは、自分を捕まえようとした集団によって周りに迷惑をかけないか、不安に思っているようだ。


 「セラは心配しすぎだよ。奴らは目立った行動ができる立場の人間じゃないと思うよ。君が襲われたところは、滅多に人が通らない森だったし、それに目撃者の僕を排除しにかかった行動から考えて、人目に付く行動はしないと思うよ。」


 「そう・・・かな?」


 「そうだよ。今はお店の仕事に集中していたらいい。何かあったら助けるよ。」


 「ん・・・ありがと。」


セラは少しは安心してくれたようだ。

うんうん、不安そうな顔は似合いませんよ!


他に話すことは・・・・・

あ、そうだ!


 「あのさ、セラのお母さんの写真あるだろ?あれ僕に預けとかない?セラは仕事でなかなか情報集められないだろ。僕でよければいろいろ聞いといてあげるけど?」


 「いいのか?君だって他にやることがあるだろう?」


 「へいき、へいき。そんな苦労してるわけじゃないし。」


セラはしばらく考え込んだ後、写真を手渡してきた。


 「すまない。無理しなくていいからな。」


 「まかせなさい!」


写真を受け取り、コートの内ポケットに大事にしまう。

セラのお母さんの唯一の手掛かりだ。大事に扱う。


さてそろそろ宿に戻ろうか・・・・

と、思った時、気づいてしまった!!


セラはミニスカメイド服のままだ。

そしてベッドの僕の隣に座っている。

必然的にセラの美しい長い脚がよく見える。


なんか・・・・近くで見ると、いつもよりさらにエロい。

ほー、へー、合格だ!!(意味不明)


 「ユウ。ぼーっとしてどうかし・・・・・またかっ!君はそればっかりだな!!」


セラは立ち上がって構えた。

やっべ!!


 「一度生まれ変わって、やり直してこい!!」


 「ぶっ・・・・・・!!!」


セラの高速の拳が僕の顔面に突き刺さった。意識がぶっ飛んだ。


一時間後、僕は『ニニギ亭』の前の道で意識を取り戻した。

セラさん、おきっぱなしはひどいっ


しばらくはこんな毎日が続きそうだ。


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