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異界の旅路  作者: Posuto
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第14話:男のロマン、再び

 もうすぐ首都に着く。

僕は、獣車の窓から身を乗り出し、首都のほうを見た。

首都の上空には、飛空挺が飛んでいる。


飛空挺とは、この世界の航空機だ。

船の形をしており、ボルトノ鉱石というものを動力とし、エーテルを反射することで浮力と推進力を得る。

僕の世界の航空機と違って、スピードはないが、船の形であるため大きく、多くの物が運べる。


カスロア首都ペルートは、広大な湖、フロリア湖に面しており、湖には多くの飛空挺が着水している。


その景色はとても壮大で、しばし見とれてしまった。



獣車が乗り場に到着した。

僕とセラは、獣車を降り、中央通りまで来た。人が多い。さすが首都!


 「やっとついたねー」


 「・・・・・・ああ。」


なんかセラの元気がないような気がする。

さて、僕はこれから国立図書館に行って、異界人について調べてみよう。

セラはどうするのかな?


 「セラはこれから・・・・・」


 「ここでお別れだ、ユウ。そういう約束だったからな。」


 「ちょっ、ちょっと待った!そんな急いで別れなくてもいいだろー?」


 「首都までと言った。」


なんか拗ねたような口調だ。

相変わらず頑固だ。んーどーしよ。

僕が考え込んでいると、セラはさっさと歩きだした。

あわてて僕はセラに伝えた。


 「僕は国立図書館にいるから、何かあったら来てよ!そっちは?それぐらい聞いてもいいだろ?」


 「酒場とかで、情報収集。」


セラは歩みを止めることなく、答えた。すぐに人ごみに紛れて見えなくなった。


 (せっかちだなー。何か心配だから、後で探しに行こう。)


セラは、外套を着てフードをつけているが、目立つ。探せば見つかるだろう。

そう考え、国立図書館に向かった。



〜〜〜〜〜〜



国立図書館は、誰にでも入れるようになっている。さすがは学術都市!

中に入ってみると、本の多さに驚いた。

本棚は、どれも僕の身長の二倍以上ある高さだ。そうした本棚がどこまでも続いている。


 「うわ〜・・・・この中からどうやって捜すんだ?」


僕は途方に暮れてしまった。

とにかく、図書館の職員の人に聞いてみることにする。

受付みたいな所にいる女の人に聞いてみた。


 「あのすいません。異界人についての本を探しているんですが・・・・・」


 「イカイジンですか?・・・・・少々お持ちください。」


そう職員さんが言うと、何かの結晶のようなものを操作した。タッチパネルみたいだが・・・・

僕は思わず聞いてみた。


 「それ何なんですか?」


 「はい?・・・ああ、これは記憶結晶メモリーブロックという、ペルート魔法学院で新開発された技術です。情報を記憶させることができます。」


すごいな。僕の世界に負けてないなー、この技術。

それにしても学校か・・・・

僕は何となく自分の通うはずだった、高校を思い出していた。

僕が昔を思い出していると、職員さんが本を見つけたようだ。


 「ありました。二階、IG列、31番、133−12の本棚に異界人についての本が集められています。」


なんじゃそりゃ!!本棚までたどり着けるのか・・・・?

職員の人に礼を言い、二階に昇る。


30分ぐらい探し回り、ようやく発見した。


 (つ、疲れた・・・・・・)


本の種類は少なく、20冊ぐらいだ。あまりにも大量の本に囲まれているので、20冊程度でも、少なく見える。

正直、僕は本を読むのは嫌いではない。でもこの量は・・・・・・

しょーがないので、一冊手に取ってみる。


 『空間転移の可能性』


うわっ!!読む気失せた!!題名からして固い!!

だが我慢だ!

ペラペラめくると、数式みたいのが書いてある。

目次で寝るわ!!


違う本をとる。


 『異界人とこの世界の成り立ちについての仮説』


これは大丈夫そう・・・・・すごい、字ばっかりだ・・・・

言葉を習うとき、読み書きも習っているので読めることは読める。

頑張って読むことにした。


『異界人の存在は、はるか昔から確認されている。最近では、200年前の魔物の大量発生によって起きた「魔王戦争」時、数人確認されている。

また、10年前のシグルド帝国トリスタン皇帝の暴虐によっておこった、「サガルバフ内戦」で一人確認されている。』


へー結構いるんだな、異界人。この10年前に現れたって人が、おっさんがよく話す異界人の人かな?

少し飛ばしながら、読んでいく。


『そこで一つの疑問が出てくる。この異界人という存在は、一体どうしてこの世界に来たのか?自然現象によるものか、それとも何か人為的なものなのか?』


人為的?そんなこと、できるやついるのか?神様とか?そう言えば、僕はこの世界に来ることになった瞬間の記憶がない。

これはどういうことなのか・・・・・・・?さっぱりだな。考えてもわからん。つづきを読む。


『この世界には、多種多様な人種がいる。人、エルフ、ドワーフ、等々10種類以上だ。これはおかしくはないだろうか?これほど多種多様な人種が、普通存在するだろうか?』


おかしいのか?よくわからん。


『ここで私は、一つの考えにいたった。この世界の住人の祖先はすべて、もともと異界人であったのではないか。そう考えると、この人種の多さに、納得できる。』


この世界の人たちが、もともと異界人?そんなことありえるのか?


『この仮説を証明する上での証拠として、龍族の存在が挙げられる。』


龍族!?なんで龍族がでてくるんだ!?


『龍族の存在が確認されたのは、300年前。それ以前には、どんな文献を探しても龍族は現れない。つまり、龍族は300年前に、突然この世界に現れたことになる。

これは、龍族が異界人としてこの世界にきた、という証明にならないだろうか。』


龍族が、セラが、異界人?いや、セラは異界人の末裔ということになるのか?

ホントかよ?この本の著者を見てみる。


シグルド帝国特殊エーテル技術研究機関「ラファエロ機関」異界転送技術研究員 モルドス ライツ


帝国の人か・・・・・この人に会えないかな?

次の目的地は、帝国にしようか・・・・・



もう昼食の時間だ。

よし!今日はここまでにして、どこかで昼食を食べるついでに、セラを探してみよう。

龍族についても、聞きたいことがある。


僕は中央通りの看板で道を探す。首都だけに広い。

酒場などが多い、歓楽街を探す。アルプス通りという所が、歓楽街のようだ。


アルプス通りに向かっている途中、


 ドカッ!!


という、爆発音のような、何かを破壊するような音が聞こえた。

何だろ?

近くにいた、若者達の会話が聞こえてきた。


 「おい!!氣闘士ファイター同士の喧嘩らしいぜ!!片方はすっげー美人だってよ!!」


 「おもしろそうだな!!見に行こうぜ!!」


片方が美人・・・・・氣闘士同士の喧嘩・・・・・・・

ああー・・・・すっごい嫌な予感がする・・・・・

僕はさきほどの破壊音のほうに急いだ。



〜〜〜〜〜〜



そこは、酒場だった。昼は定食屋で、夜は酒場としている店のようだ。

店の名前は『ニニギ亭』というようだ。

その店には、いくつか穴があいている。ちょうど人が通れそうなぐらいの大きさだ。

店の前の通りに、一人、男が倒れている。店の中から、ぶっ飛ばされたんだろう。かわいそー。


僕は、野次馬をかき分け店の中に入る。


そこには予想とは違う光景があった。


店の中はぐちゃぐちゃで、壁にめり込んで、気を失っている男が二人。ここまでは予想通りだ。

予想外なのは、セラのことだ。いや、ここにいることは予想の範囲内なんだが・・・・・・


セラは、店の真ん中で正座させられ、店長と思しき黒髪のお姉さんから、説教を受けていた。


 「あんた、この状況どうしてくれんの?」


 「いや、その、申し訳ありません・・・・」


 「まあ、あんたに絡んできた男どもが、しつこかったのはわかるわ。だけどやりすぎじゃないか?」


それはそうだ。セラにしては、この状況は少しやりすぎな気がする。セラは冷静なほうだ。


 「それはその・・・・少し気が立っていて・・・・・・」


 「ふ〜ん。それは、なんで?」


 「えと、その、さっき仲間と別れて・・・本当は別れたくはなかったけど、そうしないと・・・・・」


ん?僕のこと?もしかしてセラは、あのまま僕と合わないつもりだったのか?


 「それ、男?」


 「え、は、はい。」


 「恋人?」


 「ち、違います!!」


そこまで強く否定しなくてもー・・・・・男の子は繊細なんだぞー。


 「その仲間ってのは、そこで隠れている男のことかい?」


お姉さん、こっちに気づいてたのか!

セラも僕がいることに気づいた。うわ!こわっ!!めっちゃ怒っとる!!

しょうがなく、僕は二人の前に出て行った。セラがすごい低い声で声をかけた。


 「いつからいた?」


 「さ、さっき来たとこです!!」


 「本当か?」


 「本当です!!」


顔は怒っているけど、すごい赤い。ふふふ、かわいいですよー


 「で、この状況、あんたが何とかしてくれんのかい?」


店長のお姉さんが聞いてきた。


 「あ、はい。弁償します。」


 「いくら持ってるんだ?」


 「2000Rxぐらいです。」


この前の依頼で、僕とセラが得たお金の残りだ。


 「へぇ、結構持ってるんだねぇ。じゃあそれで許してやろう。」


 「ちょ、ちょっと待った!何で君が払うんだ!?私がやったことだ!私が払う!!」


 「あなたは、黙ってなさい。」


 「うっ・・・・・」


セラが割り込んできたが、店長さんが速攻で黙らせた。すげー


 「セラ。これは君の分のお金も入ってるんだからいいだろう?」


 「ううー」


持っていたお金を渡す。


 「はい。確かに受け取った。でも、このままだと君たち困るんじゃないのか?」


まあ、確かに困る。依頼請負屋クエストショップでも探すしかない・・・・・・・ん!?

そこで僕の眼に、この店のウエイトレスの人が入った。

メイド服!!しかもスカートみじかっ!!すばらしい!!

ここで僕がすべきことはーーーーーー


 「セラ!ここで働かせてもらったらどうかな!!」


 「な、何だ急に?」


 「どうですか、店長さん!!」


 「ん?ああ、なるほど・・・・まあ、いいんじゃないか。こんな美人がいたら、うちも繁盛するねぇ〜」


僕の真意を瞬時に理解した店長のお姉さんは、同意してくれた。グッジョブ、お姉さん!!


 「あ、はい!そちらがよろしければ、お願いします!」


よし!セラも了解した!


 「じゃあ、明日から働いてもらうよ!私はここの店長をやってる、ユウラだ。よろしくな。」


僕とセラは、自己紹介した。従業員は住み込みで働かせてくれるので、セラはこのまま『ニニギ亭』に泊めてもらえるそうだ。

その後、店の片付けを手伝った。


もう夕方だ。

僕は宿を探しに、店を出た。宿に泊まれる分のお金は返してもらった。ユウラさんは、結構いい人だ。

それにしても、ん〜セラのメイド服姿が楽しみですなー


 「ユウ、待ってくれ!」


店からセラが追ってきた。


 「すまない・・・・また君に迷惑をかけた。もう会わないつもりだったのに・・・・」


 「この前言っただろー。僕はセラのこと仲間だと思ってるって。気にしなくていい。それから、もう会わないって、なんで?」


 「もう、巻き込みたくなかったんだ・・・・・」


 「セラは気にしすぎなんだよ。もしかしたら、もう狙われてないかもしれないだろ。」


 「でも・・・・・・」


セラは、泣きそうな顔だ。


 「じゃあ、首都にいる間は、気にしないことにしよ!ねっ!」


 「ん。わかった。ありがと。」


鼻をぐずぐずいわせながら、セラが言った。

うん、うん。素直なセラも、かわいらしいね!!


そのまま、宿を探すためセラと別れた。



こうして、セラは酒場『ニニギ亭』で働くことになった。

僕は、依頼請負屋で依頼を受けてお金を稼ぎ、図書館でもう少し異界人について調べようと思う。





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