第9話:男のロマン
朝の光に目が覚める。
僕は、木の根元で、コートを布団の代わりにかぶせ、寝ていた。
意識は、もう覚醒しているが、眼は開けない。
セラは、もう起きているようで、近くにいない。
朝食の準備をしているようだ。
僕が、寝たふりを、続けていると、
「ユウ。起きろ。いつまで寝ている。」
と言い、セラが近付いてきた。
(これが!!これこそが待ち望んでいたもの!!女の子に朝起こしてもらうシュチュエーション!!)
僕の体を揺らして起こそうとしている。
「朝食を準備した・・・・・ん?・・・・・・君、起きてるだろ。」
「ハテ?ナンノコトヤラ?」
あっ!?しゃべっちゃった!!
セラは、僕からコートをはぎとり、肩をつかんで持ち上げた。
この細い腕のどこに、こんな力があるんだろ?
「あれっ!?ちょっと、どうするき!?」
持ち上げられたままの僕は、勢いをつけて投げられた。
5メートルほど向こうの、木にむかって。
「ぐおっ・・・・・!」
僕は、木にぶつかり、地面に落ちた。
倒れたまま顔をあげると、彼女は呆れた顔でこちらを見ていた。
「目は覚めたか?」
「はい!!ばっちり!!」
「なら、さっさと起きて、飯を食え。」
「はい。」
セラと旅を初めて、三日。
いろいろと気付くことがあった。
彼女は、ツッコミ体質だ。僕が冗談を言うと、(というか変な事をすると)ちゃんと突っ込んでくれる(というか殴ります)。
そしてクールである。初めて会った時こそ、かなり激しい気性をしていたが、普段の彼女はかなり冷静で、無口だ。
今も、首都に向かう街道を歩いているのだが、僕の前を黙々と歩いている。
その格好は、僕の高校の制服という格好だが、意外と似合っている。
ブレザーは重いらしく、脱いでいるためワイシャツにズボン姿だ。
僕の制服であるのに、長身である彼女は、ズボンのすそをあまり折っていない。
僕より足が長いんだね・・・・・・べ、べつに悔しくなんてないんだからっ!!
そんな格好のため、後ろから見るとワイシャツが透けて・・・・・・
「今、変なこと考えてただろう・・・・」
いきなり、セラが振り向いた。
するどいっ!!
だが、必要なこと以外で、セラが話しかけてきたのは珍しい。この機会に、いろいろ聞いてみよう。
「え〜とっ。セラって、何歳?」
「なんだ急に?」
不思議そうな顔をしてる。
「まあいいから、いいから。」
「15だ。」
「えっ・・・!?」
てっきり自分と同じか、上だと思っていた。背が高いうえに、顔も美人で大人っぽいので勝手にそう思っていた。
このまま続けて、質問しまくろー
「そういえば、あの時なんで裸だったの?」
「なんでそんなこと今聞くんだ・・・・・龍化した後なんだから当然だろ。」
少し赤くなって、セラは言った。
「じゃあ、あの写真の人は誰?お母さんとか?」
「まあ・・・・な・・・」
おっと、セラのテンションがガタ落ちだ。この話はやめよ。
「初めて話したときさ、すっごい警戒してたけどあれは何で?」
「ああ、あれは私を龍の国から出してくれた人に、人間は信用するな、って教えられていたからだな。」
「なるほど。」
初めて話した時いきなり、なんで助けた!、だったのはそれでか。
「じゃあ今は?今でも、人間はみんな信用できないって思ってる?」
彼女はこっちをちらりと見て、顔をそらした。
「自分で見て、考えることにした。」
うーん。今どんな顔をしてるのか見たいなー。
歩いていると、夕方になった。街道には人の気配が少なくなる。
するとやばい連中が現れる。
「おい!!そこの二人、ちょっと待てよ!!」
後ろから、いかにもガラの悪そうな声が、僕らを呼びとめた。
振り返ってみると、声の印象の通りの男が5人ほどいた。
「有り金、全部おいてきな!!それと、その女もだ!!」
振り返ったセラが、予想以上に美人だったことに、連中は喜んでいる。
僕はこういった連中に絡まれるのは、初めてではない。
パッと見ると、気の弱そうな僕は、カツ上げされやすい顔なんだろう。
どうしようか考えながら、右手は、さりげなく刀の柄にそえておく。
僕が、武器に手をかけていることも知らず、連中はセラに夢中だ。
「おい、ネーチャン!!俺らとイイことしよーぜ!!」
みたいな言葉や、完全にピーという効果音が入りそうな言葉を、セラにぶつけている。
(あれ?変だな?セラの性格なら、すぐにこんなやつら、フルボッコにするのに・・・・?)
不思議に思って、セラの顔をのぞいてみた。
真っ赤だ。
色が白いので、よくわかる。なんか、とても、からかいたい衝動にかられた。
「顔、真っ赤だよ。もしかして、恥ずかしがってる?」
と、僕は声をかけてしまった。その瞬間、セラの右の拳が僕の顔面を捉えた!!!
「ハゴッ・・・!!」
僕は、街道の横の街路樹をなぎ倒しつつ、吹っ飛んだ。
僕が起き上がって帰って来た時には、連中はとっくに逃げ出していた。
「今のは、君が悪い!!」
セラは、帰ってきた僕に言った。
いまだに顔が赤いままで、とても可愛かった。
いいもの見れたなー
夜になってから、セラに事情を聞いてみた。
「私に、ここの言葉を教えてくれたのは、父上の古い友人の方なんだが・・・・その・・・性格にちょっと問題があってな。あの人は私にワザと、あのてのヤラシイ言葉を覚えさそうとしてくるんだ!恥ずかしがってる私を見て、楽しんでいたんだろ!!」
後半は怒りだして言った。
まあ、その人の気持ちもわからなくはない。
普段クールを装ってるため、どうにかして恥ずかしがらせたい、という気持ちはよくわかる!!!
僕は、見ず知らずのその人に、大変共感した!!!
「言っておくが、私に変なことを言わそうと考えるなよ。さっきの五倍の力で殴るからな。」
しっかり釘を刺された。
だが僕は、暴力に屈しない!!
あっ、ごめん!うそです!
すごい視線で睨まれた。
そんなこんなで、今日はセラについて、いろいろ知ることができた。