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お茶会バトル シュタインベルクのターン

たった一度会っただけなのに…


伯爵家の敵なのに…


なんで、こんなにトゥルカナの事を考えてしまうんだろう。


同い年なのに僕より全然背が高くて大人みたいだった。


僕の赤い顔気づかれただろうか…


僕はトゥルカナに見とれてぼーっとしてたけど、

トゥルカナはなんだこんなちびすけかって感じで見下ろしてた。


きっと安心したんだろうな、ライバルが僕で。


ああ………僕はバカだ…。


ライバルで男で僕を目の敵にする奴を好きになるなんて、本当にバカだ。


トゥルカナ………はあ………トゥルカナって珍しい名前だな。


こっちの綴りだっけ………。


僕は羊皮紙を取り出して、トゥルカナと何度も書いて見た。


トゥルカナ…はあ…………。


ミューリッツ伯爵

「シュタインベルク!我が息子よ!


突然、ノックもせずに父親が部屋に飛び込んできた。


シュタインベルク

「わっわっわっ………父上!


ミューリッツ伯爵

「どうした?なんだいバラトンの息子の名前など書いて。


シュタインベルク

「こ、これは…呪いをかけているのですよ。あいつに。


ミューリッツ伯爵

「おお!さすがは愛する息子。


僕は横に目を逸らした。


ミューリッツ伯爵

「ところでな、プリンセスからお茶会のお誘いがあったぞ。

よいか、メンバーはプリンセスとそのご友人が5人。

お前を含め貴族の子息5人ほどだ。

どういうことかわかるか?


シュタインベルク

「はい、つまり女性たちを会話で喜ばせ、心を掴んだものの勝利ですね。


ミューリッツ伯爵

「その通りだ。女性のファッションやメイク、

最近の人気のあるものなどにくわしい者を呼んである。

そのものからいろいろ学ぶように。


シュタインベルク

「はい!お任せください!


ああ、トゥルカナに会える!


僕は嬉しくてウキウキした!


ライバルとして情けない姿は見せたくない。


女性が喜びそうな会話や知識を毎日学習した。


そして待ち遠しかった一週間が過ぎ、ついにあのトゥルカナにもう一度会える日がやってきた。


家庭教師の先生が選んでくれたゆったりとしたパステルブルーのブラウスと白いチュニックを着て。


城の中を案内されて扉を入るとお茶会の会場で、

すでに何人かの男が来ていた。


そしてプリンセスに挨拶しているのは、トゥルカナだった。


赤い軍服を着ている、とてつもなくカッコいい。


ああ、僕の心臓の音おさまれ、聞こえてしまう!


落ち着かないと、顔がすぐに赤くなる。


僕はプリンセスに近づいた。


横目でトゥルカナを見てフンっと鼻で笑う。

(ああ…近くで見てもやっぱりカッコいい!)


トゥルカナもフンっと鼻で笑い返して来た。

(ああ……、嫌われてるけど、でも無視されるより全然いい。)


僕はプリンセスの手を取ってキスをした。


プリンセスオルタはプラチナブランドのくるくるした髪の毛に、

ピンクの頰、優しそうな瞳、

とっても愛らしい。

なんでもエルフの血が入っているとかそんな都市伝説がある。


僕が挨拶すると頰を染めて喜んだ。脈アリかもしれない。


いよいよ開幕、お茶会対決。


プリンセスオルタの隣を僕とトゥルカナがゲットする。


場所どりは成功。


おしゃべり大好きなプリンセスが中心になって、会話を進めていく。


早速、男子にはわからないお菓子の話が始まった。


僕のチャンスが到来だ。


オルタ姫

「今日のお菓子、今街で流行りのものですの、いかがです?


貴族の娘

「とっても可愛くて美味しいですわ!初めていただきました。


シュタインベルク

「イゼーヌのマカロンですね。僕も以前から気になっていたんです。

まさか今日いただけるなんて、姫に感謝せねば。


娘たちからハートが出るのが見えた。


(よしっ!)


トゥルカナ

「この丸っこいの?俺にもください。」


トゥルカナが姫の食べかけのマカロンを奪って、パクッと口に放り込んだ。


トゥルカナ

「うん、美味いですね」


トゥルカナの改心スマイルが炸裂して、

娘達の目からハートが飛び出した。


オルタ姫も顔を赤くしている。


ついでに僕もキュンとしてしまっている。


とにかく全部持っていかれた、このままじゃライバルとして僕は失格だ。


僕は覚えたてのファッションの話題に持っていくことにした。


シュタインベルク

「オルタ姫のドレス、ボルセーナの新作ですね。

淡いピンクが姫のプラチナブロンドの髪にとっても似合ってますよ。


周りの娘達から感嘆の声がもれる。


オルタ姫

「わかってくれるのね!この可愛さ!シュタインベルク、あなたと話し合いそうだわ!」


オルタ姫は僕の手を握った。


(よしっ!)


僕はにっこり笑った。


オルタ姫

「ねえ、シュタインベルク、実わね、とっても可愛いドレスをこの前手に入れたの!

ボルセーナの丈が短いドレスなんだけど、なかなか正式な場所では着れないドレスなの!

そのドレス、絶対あなたに似合うと思うの!」


(は!?)


僕は危うくマカロンを噴き出すとこだった。


オルタ姫と貴族の娘達は僕の周りを取り囲んで、二階にある姫の部屋まで連行した。


まるでギロチンにかけられる気分だ。


僕は急に姫達が魔女の集団に見えて恐ろしくなった。


姫達は躊躇なく僕の服を脱がせて、人形のように着せ替えていく。


膝上までしかないひらひらのピンクのドレスに、

ひらひらがついた太ももまでの長い靴下まではかされた


頭には馬鹿みたいに大きなリボンが付いている。


なんだか泣きたくなって来た。


これはもう、姫は僕のこと男として見てないよな。


魔女達はキャーキャーと声を上げながら僕をお茶会の会場まで連行していく。


扉を開けると貴族の男子達が大笑いした。


トゥルカナなんか、お茶を吹き出した。


僕はこの馬鹿な格好のまま姫の隣でお茶会に参加する羽目になってしまった。


もう、浮いたセリフの一つも言えない。


トゥルカナはよほど気持ち悪いんだろう、

僕を汚いものを見るような目でじろじろ見ている。


女子からはベタベタ触られ、男子からはかわい子ちゃんとからかわれ、

胸くそ悪いが、オルタ姫は相当ご満悦なご様子、まあ、よしとしよう。


話題の中心はさらった、トゥルカナには勝ったはずだ。


しばらくして頃合いを見計らい、靴下のフリルが痒くなってきたとか適当な事を言って、

着替えに行くことにした。


通路に出てふうっと、ため息をついた瞬間、目の前に腕が飛び出てきて壁を叩いた。


僕は行く手を阻まれて、壁を背中にして張り付いた。


見上げるとトゥルカナの顔が至近距離にあった。


心臓がばくばくと音を立てる。


ああ、気づかれる……。


トゥルカナはハアハア言いながら僕を睨みつけている。


トゥルカナ

「ま…まるで雌豚みたいじゃないか。シュタインベルク。

よく似合ってるぜ。」


自分の名前を呼ばれて胸がキュンと高鳴る。


なんてカッコいいんだ、こんな至近距離で見つめられたらおかしくなりそうだ。


それに……ああ、いい香りがする。


すごく色っぽい香り。


僕のように貴族としてのうのうと暮らしてた人間とは違う、

もう戦さの経験もあるって言ってた、

生死の境をくぐり抜けてきた戦士の香りだ。


きっとフェロモンってやつだ。


シュタインベルク

「臭うな……。

オークのゲロの臭いがするな。きさまから。

どけよ、吐き気がする。」


どいて欲しくない、このままキスして欲しい。


ああ……僕は馬鹿だ。


トゥルカナがフッと馬鹿にしたように笑って戻っていった。


ぼくは震える身体を自分で抱きしめながら走った。


ダメだ、好きが止まらない………。




つづく









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