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 問題。明らかに不良と思われる人に捕まって倉庫と思われる場所に連れてこられました。さて、この場合、どうすればいいでしょう。




 答え。…………とりあえず、状況の整理?




 純花は、こっそりため息をつく。目の前では明らかに不良ですね?と言いたくなるような容姿の男たちが数人、いや、十数人たむろっていた。






 ショッピングモールを歩いていたところ、この男たちのメンバーが急に純花を取り囲み、可愛いねオネーサン、一緒に来てくんない?と言ってきたのだ。あからさまな、何とあからさまな、あからさますぎる、ナンパ……もどき。その鈍さでは定評のある純花といえど、流石に行きたくはなかった。だがしかし、拒否権はあるはずもなく。周りの人がチラチラと見ていたので、もしかしたら警備員を呼んでくれるかと思ったが、そんな気配も感じられなかったので早々に諦めた。そして考えた。




 問題。明らかに不良と思われる人に絡まれて一緒に来いと言われました。さて、この場合、どうしたらいいでしょう。




 答え。慌てず騒がず、まずは深呼吸。反抗的な態度をとると、大上の時の様に変に気に入られるか、神経を逆なでされるだけなので、俯いて指示に従いましょう。日本の警察は優秀だろうと期待できるかもしれないので、とりあえず信じましょう。なお、下手に泣いて助けを乞うたら助長させる可能性があるので絶対にしないようにしましょう。






 一瞬でその答えに辿り着き、即座にその通りにする純花。因みに、この答えは大上に初遭遇した後、純花が質問したことに、狩野が笑顔で答えたものである。大人しく待っててくれれば必ず助けに行くからね!という言葉つきでもある。




 その結果。




 純花はどこぞの倉庫らしき場所に連れ込まれていた。


 今までの事を反芻していた純花はふと首を傾げた。そう言えば、どうやって純花の居場所を特定するのだろう?だが、純花はその疑問を頭の隅に押しやった。


 お兄ちゃんですからね。きっとどうにかしてくれます!!


 根拠のない自身に支えられたその答えを純花はだした。そしてぼんやりと不良たちを見つめた。すると、不良たちのリーダー格の男がこちらに歩いてきた。見下ろされた純花は首を傾げると、気になっていたことを尋ねてみることにした。


 「どうして私を攫ってきたのですか?」


 すると不良男はニヤニヤしながら、言う。


 「大上の奴に一泡吹かせてやるのさ」


 そして不良男は聞きもしないのにペラペラと喋りだす。大上と昔つるんでいたこと、ちょっとガキに手を出したことくらいで大上が組織(?)を抜けたこと、その際、思い切りボコボコにされたこと。完全に逆恨みでは?と首を傾げる純花の前で不良は、オトシマエをつけさせる!と意気込んでいるようだ。


 「まあ、そんな訳で、お前は餌だ。大上をここに誘い出すためのな」


 その言葉に純花は寂しそうな、悲しそうな顔をする。


 「……きっと意味無いのです。大上さんはもう会ってくれません…」


 しょぼんとした純花に首を傾げる不良男。


 「は?どういう事だよ。お前、大上の女だろ?」


 「でも、飽きたって、今までのは遊びだったんだって…」


 目をウルウルさせて訴える純花。だが、不良男たちはガハガハと笑うだけで信じてはい無い様だ。


 「だってよぉ、あんな大上見たことねぇし、電話越しに警告されたし?それで大上の女じゃないなんて信じられないよなぁ?」


 けど、と言って不良男は純花の体を舐めるように見回した。悪寒が走った純花は体を縮ませる。不良男は卑下た視線を純花の体に注いでいた。


 「大上の女じゃないってなら、俺の女になるか?」


 そう言って下品な笑い声を立てる。周りも口笛を吹いたりしてはやし立てる。むっとした純花は精一杯自分を奮い立たせて、不良男を睨む。


 「ふざけないでください!!」


 「別に良いだろ?もう大上に可愛がってもらってんだろ?」


 「はい?」


 可愛がるの意味が分からず首を傾げる純花。そんな純花に男は下品な笑みを浮かべて言い換える。


 「手ぇ出されたろ、って意味だよ」


 「⁈な、なんてこと言うんですか!!」


 真っ赤になって叫ぶ純花。だが、不良男たちはどっと笑うだけだ。悔しくて恥ずかしくて、それでも、唇を噛むことしかできなくて。細かく震える純花の耳にある言葉が飛び込んできた。




 「ま、しょせん大上も俺らと同じって事だよな」




 純花は目を見開く。そんな彼女の目の前で不良男たちは言いたい放題言い始める。


 大上も結局女で遊んでいる、暴力を平然とふるう、ふらふらと遊びまわっている、など。好き勝手に言われる内容を聞いているうちに純花は、お腹のあたりが熱くなってきたのを感じた。目の前が赤く染まる。気付いたら叫んでいた。


 「いい加減にしてください!!!」


 その叫ぶ声に、不良男たちが一瞬静まり返る。そして振り返り、純花の憤怒に燃える瞳と纏う雰囲気に言葉を失う。


 「あの人はいつも意地っ張りで、偉そうで、意地悪な人だけど、でも!!本当は優しくて、あったかくて、とっても綺麗に笑う人なんです!!そんな事も知らない人に何も言われたくないですっ!!少なくとも、たった一人を襲うために人質まで用意するような卑怯な貴方達とあの人は全く違います、一緒にしないでください!!!」


 キッと涙の滲んだ目で不良男たちを睨み、渾身の力で叫ぶ。


 「私の大好きな大上さんを、馬鹿にしないでくださいっ!!!」


 そこまで言い切って純花は肩で息をした。憤懣やるかたなしと睨み据える純花の視線の先であっけに取られていた不良男たちが、我に返って赤くなった。


 「おんなぁ」


 目をギラギラさせ、今にも飛び掛からんばかりの不良男たちが何人も向かってくる。目の前に立った不良男が、怒り狂った目で指を鳴らし、拳を大きく振り上げる。純花は思わず固く目を閉じた。刹那。


 ズゴン!!!凄まじい音が入り口付近から聞こえてきた。


 「なんだ⁈」


 慌てて不良男たちが振り返る。純花も恐る恐る目を開ける。するとそこには。


 「良い度胸だな。ソイツには手ぇ出すなって言ったってのに。余程痛い目を見たいようだな?」


 「うちの可愛い妹分、返してもらえるかな?そうしたら、ちょっとは手加減してあげるかもよ?」


 そんなセリフを吐きながら乱入してきた二人は男たちの前に立った。

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