昨夜はお楽しみでしたね。
何とか寝たが、目覚めは最悪のニックと、スッキリした4人の男女。
「せめて、最初に言っといてくれたら、この仕事断ったのに…」
ニックは絞り出すように言った。
「いやー、これまでもポーター雇ったけど、次から誰も受けてくれないんだよね〜」
明るくイケメンがほざく。
「そりゃそうだろ!地獄かと思ったわいっ!」
ニックが怒鳴る。
「まあいい!受けた仕事はキチンとするから、さっさと行こうぜ。」
畳んだテントを背負子に乗せて、小山のような荷物を背負うニック。
フロアボス
事前の話通りロックゴーレムの登場
だったのだが、話が違う。
一体というふうに聞いていたのに三体も居る。
フロアボスルームは、入るとフロアボスを倒すまで出られない。倒したら次の扉が開くのだ。
帰りはなぜかフロアボスルームには行きあたらない。
迷宮の七不思議の一つだ。
話が逸れた。
「何で三体も居るのっ!」
美人エルフが叫ぶ。
「とにかくやるしかねぇ!」
渋い獣人が走り出すと同時に剣士2人も剣を抜く。
エルフは魔法の詠唱を開始する。
ニックは背負子を壁際に降ろして、邪魔にならないように少し離れて様子を見る。
戦闘要員には数えられていないはずなので。
戦闘は熾烈を極める。剣士2人が左右のロックゴーレムを相手して、獣人とエルフで中央のロックゴーレムを攻撃しているのだが、ロックゴーレムは戦士の攻撃に対して特にダメージを受けていない。
戦士の攻撃は、スピードを活かしたヒットアンドウェイ式、狼のスピードを活かしたものだが、いかんせん軽いようだ。
エルフの魔法は、風の刃。
岩を切るまではいかず、削る程度。
ダメージは与えているものも、決定打にかける。
剣士2人の方はというと、イケメンが斬りつけるが、こちらも削ってはいるが、もう一声という感じ。
可愛子ちゃんは、剣では削れず、炎の魔法で何とかダメージを与えている感じか?魔法剣士だったようだ。
だいたいロックゴーレムに、1人で立ち向かうというのが間違っている。
それなりの実力者三人ぐらいで、共闘して倒すべき相手なのだから。
1人や、2人で渡り合えている時点で、それなりの実力者だという証明にもなるが、このままではこの部屋から出られない。
数分の戦闘で、パーティ側に疲れが出始める。
よく持ったほうだろう。
最初に中央のロックゴーレムの拳が、獣人をとらえた。
吹き飛ぶ獣人、
「ハイドっ!」
美人エルフが叫ぶ。
獣人の名はハイドというらしい。
慌てて風の防御ネットの様なもので、獣人を助けたエルフ。
だが、それが隙になる。
エルフが気がついた時、ロックゴーレムの拳はエルフの腹に当たっていた。
「アドリンドっ!」
ダークエルフの可愛子ちゃんが叫ぶ。
エルフの名はアドリンドと言うようだ。
「ゴフッ…」
とても美人が口から漏らす声ではない声が聞こえ、エルフが壁に向かって一直線。
壁に衝突する刹那、どこからともなく冴えないオッサンが、エルフを抱き止めた。
ニックは体力には自信がある。力も強い。
飛んでくる女性1人受け止めるのは、簡単だった。
受け止めてから、荷物の所まで走り、荷物の中きら、中級ポーションを取り出して、エルフ、アドリンドに飲ませようとした。
ところで、ポーションとは?
低級、中級、高級と、3種類存在し、
低級は、体力回復や、軽傷の治療に使う。
中級は、重傷の治療や、魔力回復に使う。
高級は、肉体の欠損や、重体の治療。
死んだ人を生き返らせるポーションは存在しない。
アドリンドにポーションを飲ませていたら、ロックゴーレムがニックに向かってきた。
ハイドは殴られた時に気を失っていたようだ。
つまり誰も中央のロックゴーレムを足止めできていなかったのだ。
ニックが振り返った時、すぐ目の前にロックゴーレムの拳があった。