迷宮に入るとそこは
お久しぶりです。
ニックは後悔の真っ只中にいた。
ここは岩の迷宮の中の、いわゆるセーフティーエリア。
地下10階の、俗に言うフロアボスルーム前の小部屋である。
フロアボスとは、10階ごとに居る、中ボスみたいなものである。
セーフティーエリアとは、中ボスと戦う前に準備する部屋のようなもので、なぜかそのエリアだけは、魔物が出没しないし、近づいても来ない。
であるから、ここで体力回復に努めるのが、冒険者のセオリーである。
なぜ後悔しているのか。
ニックは白爪パーティと合流して迷宮に入った。
パーティは、超イケメンの剣士ヒューマン。
渋い男前の戦士、狼獣人。
誰が見ても美人の魔法使いエルフ。
可愛いスポーツ女子的な剣士、ダークエルフ。
男2人女2人のパーティだった。
剣士2人と戦士で前衛、魔法使いが後衛。その後ろをニックが歩いて、2日でセーフティーエリアという速さ。
普通の冒険者なら、5日はかかるはずだ。
それだけこのパーティが強さと、経験を持っているという事だろう。
セーフティーエリアで、ニックは背中に背負った、小山のような背負子を降ろすと、テントの準備を始めた。
テントは3つ。
2人用テント2つと、ニックの1人用テントである。
テントの次は食事。
荷物の中から食材を取り出して、即席スープと干し肉とパンという、なんとも味気ないものだが、スープが有るだけ豪華である。普通干し肉とパンだけというのが、一般的だ。
さて、食事が終わって一寝入りして明日、中ボスに挑むという流れになったまでは良かった。
イケメンも獣人も、ニックに気さくに話かけてくれるし、美人と可愛子ちゃんも、笑いかけてくれる。
テントには片方にはイケメンと獣人の男組、もう片方には美人と可愛子ちゃんの女組と分かれた。
「うん、風紀的にも乱れてない!」
そんな事を言った数十分前の自分を殴りたいと、ニックは思った。
男テントから聞こえる男同士の愛の行為の声と、
女テントから聞こえる百合百合しい声。
1人用テントで、耳栓して毛布を頭から被っていても、声が聞こえる。
誰得たよ?俺はノーマルだ!
と、思わず叫びたくなった。