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 とりあえず折角作れるようなので、早速試しにキルモーフの影で初級と下級をそれぞれ1つ作ってみる。MP消費はゲージを見た限り普通のポーションを作る時と変わらず10と40だった。そして出来上がったマナポーションは初級は透明で下級は白色、つまり見た目では普通のポーションとまるで違いがなかった。おかげで本当にマナポーションなのかと少し不安になる。


「ちょっと、話聞いてるミューラー?」

「ん、おぉすまん少し考え事をしてた、何の話だったか」


 まぁ、念のために鑑定で確認したところ初級は『HPを極微量、MPを微量回復する』、下級は『HPを微量、MPを少量回復する』という何処かで見たような説明文。この様子だと純粋に効果量が逆転しているだけだろう、要は初級は『HPを5%、MPを15%回復する』、下級は『HPを15%、MPを30%回復する』という感じか。


「白いポーションなんて聞いた事もない。もしかしてこれもまたマジックアイテムだったり...?」

「違う違う、こいつは普通に俺が作ったポーションだ。俺が作るのは無色のポーションとこの白いポーションなんだよ。まぁ、無色ポーションの効果を高めたのが白ポーションってだけで、根本的には同じ物なんだがな」


 普通のポーションにしろ、マナポーションにしろ、俺の作るポーションはHPMP両方を回復する複合ポーションになるらしい。どちらも初級は何故か無色で下級は白色だったりと同じ色になるのはそこら辺が関係しているのだろうか...?


「で、結局貴方の作るポーションってどんな物なのよ?」

「んー俺が作るのは簡単に言えば複合ポーショ......ん?」


 あれ......コレ言ったら不味い話じゃね?

 あ、ヤッベ。考え事しながら話してたからつい普通に答えてしまった。ついぞ今さっきMP回復するマナポーションは薬師じゃ作れないって話したばかりなのに、MP回復するだけのマナポーションすっ飛ばして複合ポーション作れるなんて知られたらヤバいのでは......?


「複合?......生命力も魔力も同時も回復する?」

「はぁ? そんなポーションあるわけないじゃない」


 あ、信じてもらえなかった。まぁ、もしかしたらこの世界には本当に存在しなかった物かもしれないしな、信じられないのも当然か。


 危なかった、これでもし世間にMPも回復するポーションを作れるなんて知られた日には、この世界でまともに薬師をしている人間には疎まれ、国や軍にはその製法を明かすように迫られ、挙げ句には悪の組織的な奴らに囚われ延々ポーション作るだけの日々......いや、流石それは考えすぎか。でも、少し考えただけもあまり先行きの良くない未来しか見えないのだ、なるべく隠しておいた方が良いだろう。

 

 んーむ、しかしそうなると薬の詳しい効果すら説明出来ない怪しさ百点満点の薬屋として活動することになるんだが......。


「よう、お前さん随分変わった薬を作ってんな」

「あら、マスター。盗み聞きなんて品がないわね」


なんだ、誰かと思えば酒場の親父じゃないか。


「いやなに盗み聞きするつもりは無かったんだが複合ポーションだぁ?」

「そんな物あり得ないと思う」

「いやーそうとも限らねぇだろ? 現に俺ぁ長らく冒険者として生きて、今じゃギルドマスターなんてやってるが、白いポーションなんざ見たことがねぇ」


 .........ん?

 ギルドマスターぁッ!?

 え、なに、この親父がギルドマスターなの!


「それに本当に複合ポーションなら面白いじゃねぇか、ってわけで1つ俺に試させてくんねぇかあんちゃん?」


 えぇ、勘弁。隠していこうって決めたばっかりで即座に知れ渡るような展開はホント勘弁。えーと、どうするよ.........あーとりあえずは......。


「せめて人のいない場所にしてくれないか? 俺はパーティーを組んだ2人だから教えたんであって、あんまり人には知られたくはねぇんだよ」


 ミーアとニーアならキルモーフというエサがあるし、この2人もマナポーションは欲しいみたいだし、その辺りをダシにすれば口止めも出来るだろう。


「それくらいなら勿論構わねぇぞ、今の時間帯なら訓練場の方には人も居ねぇだろからそっちに移動するか」

「あと、この件に関しては他言無用で頼むぜ? それが約束されねぇんなら付き合えねぇ」

「わーった、分かった。俺の口から漏らしゃしねぇよ」


 親父、もといギルドマスターの方に関しては......まぁ、仮にもギルドの長だしな、信じても大丈夫だろ。というか何気にHP12700なんて途方もない高さしてるからなこのオッサン、HPがこれなら他のパラメーターだのステータスだのも凄いのだろう。力ずくでの口封じとかはまず無理そうだ。




===ギルド内 訓練所===




「ちょっ、勘弁、お姉ちゃんが悪かったって! いや、正直何が何だか分ってないけど、だからちょっ、待ッ......!」


「うっふ、ウフフ......フフフフフ!」

「っぶなぁッ!? ピンポイントでメイスで頭狙うのとかやめてってばロロォ! そんなゴッツいので打たれたら流石のお姉ちゃんでも死んじゃうからぁ!?」


「ふふ。ふふ。ふふ。ふふふふふふ。!」

「あっつぅい! は? いや冗談じゃ、ちょ、バッ、つぅぅぃッ!? いやいや、洒落になってないから! 生身の人間にファイアボールとか正気の沙汰じゃないよルルゥ!?」




 誰も居ないだろう、という話で来てみたギルドの地下に設けられた訓練場。想像に反してそこには先客が3名おり、3名とも顔見知りと言ってまぁ差し支えない間柄......そんな3人がなにやら御取り込み中......っていうか。


「......なーにやってんだお前ら......?」

「アァ! ミューラー良い所に! 助けて、私殺される!」


 うん......まぁ、うん。

 言葉だけ聞いてると何を大袈裟なという感じだが、実際のところララは何故かロープでぐるぐる巻きにされた簀巻き人間になっている。

 そんなララに向かってスイカ割りの如くフルパワーでメイスを打ち込むロロ、丸ッとララを飲み込めそうな程巨大な火球を躊躇無く撃ち込むルル、簀巻きにされながらも死に物狂いで紙一重の回避を続けるララ。


 おーぅ? 俺と別れてからの1時間足らずで一体何があったんだよコイツら、なんでルルとロロは血の涙流しながらララを亡きものにしようとしてんだ。


 まぁ.........うん。触らぬ神に祟りなしって事で。


「お邪魔しまs「待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!??」......いや、どうしろと?」


 なんかもうさっきから徐々に妹2人の目が虚ろになってきてるし、壊れた笑い声みたいなのから、なんか怨霊みたいな声で『お胸さまに死を。お胸さまに死を。』って言霊に変わって無気味さがランクアップしてんだよ。

 こーれ絶対ララが何かしでかしたに違いないわ。いや、別に何がとは言わんのだが、こう......1人は『ツルン』、1人は『ペタン』、1人は『バイーン!』なんだよな。同じ顔で同じ背格好なのに1人だけ自己主張激しいんだよ、誰がとは言わんが。


「お前、2人に何言ったんだよ?」

「酒飲んで酔いが醒めたら簀巻きにされてたんだよ! なんで私がこんな目に遭うのかなんて私が聞きた、つぅうううぅういッ!?」


「覚えて、ない? フッフフフ......! 酔って絡んで人の頭に胸乗っけて、『お姉ちゃんの偉大さに押し潰されるがいい~』を覚えてない? アハ、アハハハハハハハハ!」

「......。......。『ほらー見てみてお姉ちゃん特製谷間酒ー! ルルとロロには特別にお裾分けー』......。......。......。あ"ぁ"?」


「.........ぁー言われてみれば、ソンナコトもあったような......無かったらいいなー。あ、あははははは......」

「アハハハハハハハハハハハハハハ」

「んふ。くふふ。んふふふふふふふ」


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「.........ん、じゃ、ごゆっくりー」

「お願い助けてミュウゥゥラァアアアアァァァァアアアアアアアァァァアアッッッ!!???!??!?」




===長女絶望中===




     (ピチャッ)

「しかし、ミューラーさんはこんな時間になんで訓練場に来たんですか? しかもギルドマスターや『口裏合わせ』の御二人まで」   (ピチャッ)

「いやなに、俺のポーションの出来を確かめようってだけさ」


 返り血どうにかしてくれ。声が震えそうだ。


「白色。呪殺。珍品。焼殺。興味。削殺。」

「やっぱお前らも気になるかよ? なんなら一緒に見ててくれてもいいぜ」


 頑張れルルの好奇心、そのまま殺意を忘却しろ。


「......ねぇ、お兄さん、あっちのララは無視でいいの...?」「なんかさっきから視界の隅で痙攣してて怖いのだけど......」


 折角気を失ってるんだ、そのまま寝かせて置いてやれば良い。下手に起きてまた2人が暴走し始めたら、今度こそ息の根を止められるぞあいつ。

 そんな訳でここは無視する。決して2人の様子が怖いからその話題から避けてる訳じゃないぞ。ララの身を案じた結果触れないだけだとも。


「さーて、んじゃ張り切って行ってみよう! で、具体的にはどうやって確かめるつもりなんだマスターさんよ?」

「お、おぅ、あんちゃんマジで無視すんのか。やっりずれぇ......」


 話題変えたんだから早く話進めてくれ。


「ま、確かめるつっても簡単な話だ。そこの嬢ちゃんに軽い魔法で俺を攻撃してもらって、その後にあんちゃんのポーションを使ってみるってだけさ。俺は魔力もねぇし魔法も使えねぇが、そっちは魔法で攻撃した嬢ちゃんに確認してもらやいいだろ」


 そう言いながら少しミーアから距離をとるギルドマスター。


「マスターは生命力が、私は魔力が本当に回復するのかって事ね。それなら早速始めるけどいいかしら?」

「おう構わねぇぜ、念押しするが軽めで頼むぞ」


「分かってるわよ。火よ穿て『ファイアアロー』!」


 思いの外短い呪文ののち、何処からともなく現れた火の矢がギルドマスターへと真っ直ぐ飛んでいく。それを真正面から特に防ぐでもなく平然と受け止めるギルドマスター。服すら燃えてないのはどういう原理なんだ......?


「まぁ、下級魔法だとこんなもんか。んーじゃ早速あんちゃんのポーションを試してみようか」

「ほらよ、投げんぞ」


 ギルドマスターに初級ポーションを投げ渡し、ミーアにも初級ポーションを渡す。


「ちょっとミューラーなんで透明な方なのよ、どうせなら効果が高い方くれればいいのに」

「馬鹿言うな、あっちは高く売れんだから実験なら無色ので十分だろ。グダグダ言わずに飲んでみろよ」


 まだ小声で何か言ってたが、程なくミーアもギルドマスターも初級ポーションを飲み終える。


「俺の方は確かに回復したな。まぁ、生命力が回復すんのは店売りのポーションでも回復するんだからおかしな事はねぇが...そっちはどうよ嬢ちゃん?」

「...............本当に、魔力も回復しちゃってる」


「.........マジでか......?」

「.........マジでよ......」

「「「.....................」」」


 いやなんでそこで黙り込むんだよ。最初から複合ポーションだって言ってただろうに、『いや、まさか本物だとは思ってなかったわー』みたいな顔で固まるのやめーや。


 ちなみに今この沈黙の意味を図り兼ねる人間が1名。


「あのー、皆さん何をそんなに驚かれているのでしょう?」


 なんとなく流れで意味を察した人間が1名。


「複合。回復。魔法。逸品。」


 あ、2人共正気に戻ったようでなにより。半ば話聞いてなかったのかロロは何が起きてるのか分かってないみたいだけど。


「......マジかぁ......ぇ、マジでかッ!?」

「信じられない、下級品ですら銀貨数枚はするのに」


「い、いやでも、流石にダンジョン産のマナポーション程回復はしてないわね、精々下級マナポーションの半分位しか魔力しなかったもの!」




「あ、魔力なら3割位回復するのも作れるぞ?」




「「「「「...........................」」」」」




 ......あっれ、なにこの沈黙?




「それ、中級マナポーションと同等じゃねぇかッ!?!!?」


「中級なんて時にはオークションに出てくるような物なのに」「仮に店で売られてても大銀貨は下らないわよね。下手すれば金貨すら......」


「えっと、あの、皆さん先程から何の話を......?」

「魔力。3割。自作。奇跡。」


 あ、これは俺が思ってた以上に白マナポーションは凄い一品だったらしい。改めて俺の認識と世間一般の認識のズレがひどい。

 っというか大銀貨だの金貨だのが動くのかよ。昨日、白ポーションを銀貨1枚でララに売った形になってるけど、アレでも白マナポーションの半分はMP回復する事考えると大分安く売り捌いてたんだなぁ俺。


 そんな風に『勿体無い事したかなー』とか考えていたわけだが、驚きから立ち直ったギルドマスターからの提案で今度は俺の方が驚かされる番になった。




「なぁ、あんちゃん。もし良ければなんだが、あんちゃんが作るポーション───ギルドに卸す気はねぇか?」




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