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「マスター、オススメの定食二つお願いねー」

「あと何か飲み物も適当にお願いー」


 偶然だろう、うん。偶然俺のテーブルに来ただけだよな、俺には目もくれずに注文してるくらいだし偶々に決まってるわな。まぁ、下手に面倒に巻き込まれるのはご免なので早いとこ俺は退散させてもらうとしよう。


「あら、何処に行くのお兄さん?」

「折角だし私達とお話していきましょうよ」


「いや、俺はもう食い終わったから......」

「まぁまぁ、そう言わずに」「少しだけ、ね?」


 訂正。

 理由は分からないが俺のテーブルに座ったのは俺に用があるからのようだ。言葉にこそしないが2人の目が『逃がさないぞ』と雄弁に語っている。

 はて?しかし一体何の用があるんだろうか...まさか俺が異世界人だと気付いて声をかけてきている訳でもあるまい。が、かといってそれ以外で俺に何か特別な何かがあるわけでもないし...はて?


「......何か俺に用かよ?」

「んー用って程でもないのだけど」

「少しだけ貴方の着てるコートを見せて欲しいのよ」


 コート?

 コートってもしかして俺が羽織ってる着る毛布の事か。あぁ、いやコレ『不滅のキルモーフ』とか言う怪しげな名前になってたか。


「このキルモーフがどうかしたのか?」


 元を正せば通販で買った何処でもあるような品物だ。まぁ、確かこっちの世界じゃ多少珍しい物かもしれないが、かといってそんな目の色変えるような物でもないように思う。現にララ達は特に興味を示したりしてなかったしな。


「貴方...もしかしてそれがどういう物か気付いてないの?」

「あん? 何の話だ?」


 いや、まぁ何故か脱げないし、呪われてでもいるのかと思わないでもないが、コレそのものは只の着る毛布だと思っているんだが...違うのだろうか?


「呆れた、本当に分かって無かった」

「貴方の着てるソレ、何かしらのマジックアイテムよ」

「「私達でも全容が見抜けない程のね」」


「マジックアイテム?」

「そう。まぁ今は殆どの製法が失われてるから、現存してる大昔の代物か」「或いはダンジョンで運良く手に入れた代物くらいしかないけどね」


 んん?ダンジョン?

 やっぱりそういうのもあるのか、まぁ今は関係ないか。


「そして私達はマジックアイテムを収集するのが趣味なのよ」「で、そんな私達がマジックアイテムを持つ貴方に声をかけた」

「......つまりこのキルモーフが欲しいって話か?」


「「そういうこと」」


「んな事急に言われてもなぁ...」

「当然それ相応の金額は払うつもり」


 金額の問題じゃないんだよなぁ。俺が元の世界から持ってこれたのはコレとパンツだけである。元々はそんな大切な物でも無かったが、異世界に持ってこれた数少ない物というだけでも多少愛着があるのだ。しかも何かしらのマジックアイテムに変わっていたというのなら尚更手放す気はない。そもそもそれ以前の話としてだが...。


「悪いがそりゃ無理な話だな」

「あら、お金で無理なら別のモノで支払ってもいいわよ?」


「いや、何を支払われても売れねぇんだ。なんせどうやったって脱げないからなコイツ」


 色々と試してはみたが無理だったのだ。一時的に着替えで外す事は出来るが、着替え終わると襲い掛かるように飛んできて俺に覆い被さるのである。そういや、風呂の時はどうなるんだろう...着衣入浴は嫌だなぁ。


「脱げない?」

「あぁ、脱げない」


「...試してみてもいいかしら?」

「いいぜ、無理だと思うが」


 その後2人がかりでキルモーフを引っ張ったり逆に押してみたり、果ては捻り回してみたりもしたが、結局キルモーフが俺から離れる事はなかった。


「ちょ、お前らタンマタンマ、ギブッギブゥ...ッ!」

「あと少し、もう少しだから」

「お兄さんもう少しだけ我慢してて」


 というか俺の方が首が絞まったりと大変な思いをさせられた。そうした行動は店員が注文された料理を持ってくるまで続けられた。


「カヒュー、ゼヒュー...!」


 空気、美味しいなぁ。


「本当に無理だった」

「コヒュー...だから言っただろうが、分かったならキルモーフの事は諦めてくれ」


「嫌よ、むしろ何があっても手に入れたくなったわ」

「所有者を自ら選ぶマジックアイテム...そんなの物語の中でしか見たことない」


「つっても脱げないもんはどうしようもないだろ?」

「いいえ、きっと何か方法はあるはず。今はまだ無理だけど、いつか必ずその方法を見つけてみせる」

「だからその時こそはキルモーフとか言うそのマジックアイテムを譲って貰うわよ!」


 その後2人はどうすれば俺のキルモーフを外す事が出来るのか、食事をしながら話し合い始めた。あぁ、折角の出来立てが話してる間に冷めていって勿体無い...あと、何気に俺が売る事前提で話を進めてんじゃねぇよ。売らねぇっての。




===双子相談中===




 そういえば今更だが、この2人も同じ顔をしている、つまり双子だ。この世界は双子だの五つ子だのが多いのだろうか。まぁ、ララ達がそれぞれ違う服装で個性的な姉妹だったのに対し、こちらは2人共同じローブに身を包み、似たような性格をしてるが。


「......そういや、お前ら名前は? 先に名乗るが俺はミューラー、一応薬師なんかやってる」


「あら、言ってなかったかしら、私はミーア」

「そういえば名乗ってなかった、私はニーア」


「一応私達は魔法使いをやってるわ」

「魔法剣士としても戦えるけどね」


「「そして金級冒険者よ」」

「......銅級冒険者だ」


「あら?」「あらあらー?」


 ッチ!

 どや顔ウッゼェ...!


「今日冒険者になったばっかなんだ、しゃあねぇだろ」

「あら、貴方なりたての新人だったの?」

「そんな凄い物を装備してるから上級冒険者だと思ってた」


「コレはまぁ、なんつーか偶然の産物ってやつだ」

「ふーん......ねぇミューラー、貴方私達とパーティーを組む気はないかしら?」


「パーティー......ってなんだ?」

「そうね、同じ依頼をこなす仲間って所かしら」

「もしお兄さんが何か依頼を受けた時は私達が手伝ってあげる」


「それ、逆に俺がお前らの依頼を手伝う事にもならねぇか?」

「ないわね。銅級のミューラーに金級の仕事なんて無理だもの」

「そもそもたとえパーティーメンバーでも階級が足りてなければ依頼に参加出来ないようになってる」


「......それだとお前らに何の得も無くねぇか?」

「ミューラーの近くでキルモーフを見てれば、何かしら脱がす為のヒントが得られるかもしれないでしょう?」

「それに1人で依頼先で野垂れ死んだり、キルモーフごと行方不明になられたら困る」


 ちょ、縁起でもない事言うなや怖いわ。


「まぁいいか。俺に不利益が有るわけでもねぇみたいだし、パーティーを組むのは構わないぞ」

「そう、じゃあこれからよろしくねミューラー」

「じゃあ受付に行ってパーティー登録を済ませましょう」




===薬師登録中===




 パーティー登録もあの謎水晶にそれぞれが手をかざして登録完了だった。今思えばあれもマジックアイテムなのだろうか。そんな事を思いつつ先程にテーブルに戻ってきた。


「そういえばミューラーは薬師だと言っていたけれど、どんな物が作れるのかしら?」

「ん、基本的にはポーションだな、ほらこれだよ」


「何これ、普通に売ってある物とは色が違う」

「お店のは赤色だし、ダンジョン産のは水色だけど...白色...?」


「別にポーションである事に違いはないし、色はあんま関係無くないか?」

「ミューラー...貴方薬師なのにもしかして知らないの?」


「あ? 何がだよ?」

「薬師が作るポーションとダンジョンで採れるポーションは色に違いがある、けれどそれ以前に根本的に効果が違う」


.........ふむん?


「ダンジョン産のポーションは対象の生命力に応じて回復量が決まる物」「対して薬師が作るのは誰が相手でも同じ量を回復するように出来てるのよ。と言っても、赤ポーションは青ポーションを参考にして作られた物でね」「上級でも赤はそんなに回復量の多くない劣化品」


「つまり簡単に言うと、回復量の変わらない赤ポーションはまだ弱い下級冒険者向きで」「強さに合わせて一定値回復する青ポーションは上級冒険者向き」


「......知らなかったなぁそりゃ」

「貴方...本当に薬師なんでしょうね...?」

「薬師じゃなくても割と常識」


 しかし、その話からすると俺の白ポーションは、ダンジョン産の青ポーションと同じ様な物だということか。これまで使ってきた経験からすると、初級は『HP15%、MP5%を回復する』、下級は『HP30%、MP15%を回復する』で間違いないはずだ。まぁ、そこは別に良い、特に問題があるわけでもないし。さっきの話で問題があるとすれば...


「なぁ、ダンジョン産の青ポーションってのは普通は作れねぇモンなのか?」

「は? 当たり前じゃない。そんな事出来たら回復魔法がメインの神官なんて要らない子になっちゃうわよ」


 ぁー、やっぱ普通の薬師は作れないのか。あともうひとつ気になってるんだが。


「MP...あぁ、いやえっと...魔力を回復するようなポーションってはないのか?」

「マナポーションの事? そりゃ有るには有るけど、あっちは劣化品すら出来てないから、ダンジョン産の黄色いポーションだけよ......アレ、青ポーションと比べて滅多に出ないから買おうとすると高いのよね......」

「それに運良く手に入ってもパーティー内の魔法使いに持たせる事もあるから、そもそも中々店頭にも並ばない。私達だってもし手に入れたら売らずに自分達用に取っておく」


 なるほど、つまり多少とはいえMPまで回復する俺の白ポーションは大分貴重な物なのか。

.........というか、話を聞いてて思ったのだがHPをメインに回復する俺の白ポーション...MPをメインに回復する白マナポーションも作れるのでは...?



 薬物生成スキル

 ┗ポーション生成━━━マナポーション生成

  ┗初級ポーション  ┗初級マナポーション

  ┗下級ポーション  ┗下級マナポーション⇐


 はい/いいえ



 あぁ、うん出来るねぇ......出来ちゃったねぇ。




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