第八話 【出会い】
ながらくお待たせいたしました。
久しぶりの投稿となります。お楽しみください。
「あー、気分はどうだ?俺の言っていることは分かるか?てか大丈夫なのか?」
青年は息を継ぐ暇もなく、質問を繰り出した。
「えっと〜・・・・・」
「・・・見れば分かるんじゃないの?」
「精神面では異常なし、か・・・・・いやよかったよかった!いきなり天井から落ちてきたからびっくりしたぜ〜!しかもそれが子どもだったとは・・・俺もガキが一人いてさ、まぁ、今年にはもう一人生まれるんだけど・・・」
友好的な青年の口から出る次々の言葉のマシンガンにたじたじになる流河とクルア。会話がそれまくってる気がしたクルアが口を開いた。
「あんたの子どもの話なんてどうでもいいわ。それよりあんた誰?ここはどこ?」
「まだ言ってなかったな、俺の名はバッシュ・ベルビア、もうすぐ二児の父親だ。」
「最後のは余計よ。」
「で、ここは俺の家兼仕事場、これでいいか?」
「まぁ、それでいいわ。」
「じゃあ、今度はこっちから・・・」
一瞬、バッシュの気配が鋭くなった気がした、流河は身を固くする。
「君たちは・・・何者だ?何故空から落ちて来たんだ?それに同時刻、空に灰色の爆炎が見えたと言う報告もある、それについては何か知っているかい?」
あのブレス見られてたのかと思い、頭が痛くなる流河。そしてふと見るとクルアが流河の方を見返した。多分、なんでもいいから疑われない言い訳考えなさい!と言っているのだろう。
流河は考えた。そう、名案を思いついたのだ。
(ようは、調べようにも調べられない言い訳をいえばいいんだな、想像力を働かせて・・・)
流河は喋り方を五歳のそれにして、バッシュに言った。
「えっと、僕はリュウガ・ヴェルバーンで、こっちはクルア・レイク、僕たち先生に今まで育ててもらってたんだ。」
「先生?」
「普段は優しいんだけど、魔法の教え方はスパルタでさらに女の人らしくなくて、行き当たりばったりな世間知らずで人嫌いな女の人だよ、趣味は魔法の研究、あと僕らをからかうこと、魔法と研究以外はめちゃくちゃズボラで僕はクルアに色々教わったんだ。家事とか言葉とか・・・」
「・・・それは大変だな。」
「でそろそろお前ら独り立ちしろ〜〜とか言っていきなり魔法ぶっ放して、気がついたら空の上、僕気絶しちゃったよ。」
「魔法をぶっ放して?」
「うん、難しいからよく知らないけど、あの灰色の爆炎は多分先生の魔法の演出だと思うよ。あの人魔法は無駄にド派手にして放つのが癖だったから。」
「・・・・・・・・・・はぁ。」
「あ、住んでいた場所は知らないよ。僕たち一歩も外に出たことなかったし凄い田舎の山ばっかな場所だったから、まぁ話はこれくらいかな。」
「ず、随分大人びているんだね、五歳くらいなのに。」
「この子は色々大人びているのよ、魔法の才能も凄いしね?」
「じゃあ、君も魔法を使えるのか?」
「ふふふ、そちらの想像にお任せするわ?」
「う〜〜〜ん、そっか〜・・・」
そんな中ふいにドアが開いた。
「あなた、もうこれくらいでいいんじゃないの?」
そこに立っていたのは二十代後半の青い髪をした女性だった。顔立ちも整っており、見るからに美人だが、お腹は異常に膨らんでいた。多分妊婦さんだろう。
「セ、セレナ!動いて大丈夫なのか?」
「歩くことぐらい平気よ、それよりあなた、さっきからドア越しで聴いていたけど、もうそれぐらいでいいんじゃない?」
「は、はい・・・」
どうやら妻には弱いみたいだ。そしてセレナと呼ばれた女性は流河達の前に出てそっと微笑んだ。
「こんばんは!確かリュウガ君とクルアちゃんだったわね、私はセレナ・ベルビア、そこにいるバッシュの妻で〜す!よろしくね?」
「よ、よろしく・・・・です」
「・・・以下同文よ」
「ふふふっ、結構照れ屋さんなのね、クルアちゃんは。」
「・・・ほっといて。」
「はははははは・・・」
「・・・話が逸れたが君達はこれからどうするんだい?家は分からないんじゃあ、この国で暮らせばいいが・・・あまり世間には詳しくないんだろ?」
「「・・・・・あ」」
そうだった。自分達は確かに世間知らずと言ってもいい。このままだとかなりマズイ状況に・・・しかし、その時救いの手が差し伸べられた。
「そうよね〜〜、あなた、この子達の家って何処にあるか分かんないんでしょ?」
「ああ、分からないらしい。」
「ん〜〜〜〜〜、あ!じゃあ家で引き取る?」
「え?いいんですか?!」
「・・・・・本当に?」
「ちょ、待っ・・・」
「もう、そうしましょ!二人ともうちの子になっちゃいなさい!」
「い、いや、セレナそれは・・・」
「いいでしょ?あ・な・た?」
「・・・はい。」
なんだか急展開だったが、これでしばらくの滞在先と衣住食が決まった。クルアと内心で助かったと思ったのは秘密である。
「さ!これからよろしくね!リュウガくん、クルアちゃん!」
「はい!よろしくお願いします!」
「・・・とりあえず、よろしく。」
「はぁ・・・まぁ、金銭面は問題ないからいいけど・・・」
バッシュは疲れたような顔をしているが何処となく嬉しそうな顔をしていた。
そんな中、またドアが開いた。
「お父さん、お母さん、ど〜したの?」
そこにいたのはエメラルドグリーンの髪をした少女だった。顔立ちがバッシュとセレナに何処と無く似ている。どうやら彼らの子どものようだ。それと年は見た感じ4歳くらいなのは分かる。
「あぁ、セルピナ!」
「あれ?お父さん、あの子達だ〜れ?」
「あぁ、この子達は・・・」
「新しいお姉ちゃんとお兄ちゃんよ!」
「え?」
「いや、セレナ・・・」
「いいじゃない、もうそれで。」
「え?え?・・・・お姉ちゃんとお兄ちゃんって・・・」
すると混乱する会話を断ち切るように。
グゥゥゥぅぅぅぅ!
「あ・・・・すいません、そういえばお腹減ってたのすっかり忘れてました。」
流河の腹の音がした。
「ふふふっ、リュウガちゃんたら、待っててね、確かバッシュの夜食がまだ・・・」
「って、それは俺の仕事後の楽しみーーーーー!」
そんな夫婦の会話をしながらバッシュら夫婦は部屋を出て行った。そして残された流河達は・・・。
「・・・・・とりあえず、よろしくね?セルピナちゃん?」
「ん・・・・・はい・・・」
「はぁ・・・これからどうなる事やら・・」
「あぁ・・・」
リュウガの異世界ライフが始まった瞬間だった。
どうも、作読双筆です。
またまたお久しぶりの更新です。
今回はリュウガ・クルアとバッシュの三人+αの出会いの話になりました。
バッシュは陽気で明るい性格で、気軽に話しかけられるような人物です。
リュウガたちはたじろぎながらも自分たちのことについて嘘をつきつつも、
話を進めていき、衣食住を安定させることに成功しました。
次回は、人帝国「イエスト」の中をいろいろ巡る話になると思います。
次回もぜひお読みください。