第三話 【竜の身体】
異世界「カルマ」について知った流河は、思わずため息をしてしまったが、気持ちを切り替えることにした。
(この世界の事については分かった。まさかドラゴンが絶滅し掛かっているとはな〜、とにかく竜族の特徴とか聞いてみないとこのままじゃあ・・・マズイ)
なんの知識もなく下手に動き回れば、騒ぎになってしまうと思った流河はクルアレイクに質問する事にした。
「クルアレイク、すまないけど竜族の情報とか知ってる範囲で話してもらえるかな?」
「いいわよ。生態から特徴までちゃ〜んと教えてあげるから」
相変わらず上から目線なのは放っておこう。
クルアレイクの説明によると、竜族は一般的に二つの姿があり、一つは竜の姿である【竜化】、この姿だと基礎能力が大幅に上がり、空を飛んだり、炎を吐いたりできるという。もう一つが【人化】、これは俗に言う変化の術みたいな物だ。竜族が小さくなったり、人目を避ける際によく使っている。また力を抑えるこの姿だと竜の力は使えないが、人族と同じように魔法も使えるようになるようだ。だが二つの姿を自由に使えるのは一握りだけらしい、なぜなら自分の姿が竜、又は人となるイメージを掴むのが難しいかららしい。
「私の知っている竜族についての情報はこれくらいね、何か質問は?」
「その【人化】って具体的にはどうすれば使えるの?」
「確か人の姿を強くイメージすればできるらしいわ、ちなみに竜王は獣人族にも魔族にも化けられたらしいわよ」
とりあえず試してみることにした。自分の元の姿を強くイメージする。
「まぁ、あなたは生まれたばかりみたいだしすぐに人の姿になんて・・・・・えぇ!」
いきなり声をあげたクルアレイク、無理もない、何故なら・・・・。
「どうしたの?」
そこにいたのは先ほどの竜でなく、一人の少年だった。
「あ、あなた誰?!もしかしてさっきのドラゴン?!しかもいきなり【人化】したの?!」
「あぁ〜〜〜、なんかイメージしてみたら・・・その・・・できちゃった♪」
「できちゃった♪・・・じゃないわよ!問題はそこじゃなくて!なんで生まれたばかりの赤ちゃんドラゴンが5歳の男の子になっているのよ!」
「へ?・・・ご、五歳の男の子おぉぉぉ!?」
そう言って流河は自分の顔がどのようになっているのか見る為に、泉の近くまで近寄っていく。
そこには五歳の人間の男の子が写っていた。しかも流河の小さい頃そっくりな顔で。しかもなんか灰色のローブみたいな服を着ている。裸じゃなくて助かったが。ここまで来ると凄いを通り越して、怖くなってくる。
「な・・なんでこんなちっこくなってるんだ・・・・」
そう、流河は元々の、つまり高校生の自分の姿をイメージして化けてみたのだが、何故か5歳の子供の姿になっている。
(まさか、あれか?俺の体が小さいか生まれたてだからか?)
分からない。いくら考えても分からない。考えながら頭を掻きむしっていると。
「ちょっと!あなた何さっきから黙り込んでいるのよ!」
「へ?・・・あぁ、ごめん」
「それよりも、今度は私の質問に答えなさい!あなたは普通の赤ちゃんドラゴンじゃないわね。一体何者なの?」
「あ〜・・・・・・・・・」
どうしよう。俺は元々異世界に住んでいて、さっき突然転生して身体がドラゴンに変わってました〜・・・って言って信じてくれるかなぁ。
「すごく突拍子なくて理解できないかもよ?」
「別に大丈夫よ。不思議な事には慣れているから」
「とてもじゃないけど信じられない事ですよ?」
「信じるわよ!あなたが嘘つけるほど器用な子じゃないのは分かるのよ?さあ、とっとと話しなさい!」
流河はクルアレイクの事を信じてみようと思った。彼女の言葉が無性に嬉しかったのだ。
「俺はさ・・・・元々人間だったんだ」
「はぁ?」
〜数十分後〜
「・・・・・というわけなんだ」
「・・・・・・・」
クルアレイクに全てを説明した。異世界からいきなり転生してドラゴンになってて、そんな中うろうろしてたらクルアレイクに出会ってこの世界について知って、そして今の状況に至ると。
クルアレイクはただ黙って聞いていた。顔がないから表情が分からない。
「ふ〜、信じられない話だけど、これでいろいろ納得したわ。赤ちゃんドラゴンにしては不釣り合いな知能、そして完璧に人の姿になったイメージ力、人から転生したからこそできる事ね」
「けど何故か5歳の姿なんだよな〜。俺本当は18歳なのに・・・」
「人間の18歳なんて竜になったらまだ1歳くらいよ。5歳でまだマシと思いなさい」
「・・・はい」
まあ若返ったと思えばいいか。
「そういえば、まだあなたの名前を聞いてなかったわ。おしえてくれない?」
「・・・流河だよ、天野流河。いやここではリュウガ・アマノがあっているかな?」
「リュウガ・アマノねぇ・・・ちょっとそのアマノってのはないわね。ハッキリ言ってダサいわ」
「ちょっ、なに当たり前のように人の名前を否定しているの!?」
「そんな名前じゃ舐められるわよ。変だし。ここはこの魔王によって作られた魔道書様がなんとかしてあげるわ。私が新しい名前をつけてあげる!」
「できればかっこいい名前でお願いします」
「分かったわ。じゃあ・・・・・・・あなたの名前はヴェルバーン、リュウガ・ヴェルバーンよ!」
「ヴェルバーン・・・意味はなんていうの?」
「灰色の翼っていう意味よ。ドラゴンなんだからドーンといきなさい!」
「か、かっこいい・・・!」
「気に入ったなら良かったわ」
「うん!」
クルアレイクがくれた新たな名前であるヴェルバーン、彼女がくれたこの異世界での名前を大切にしようと心に決める流河だった。
どうも、作読双筆です。
今までは書き役が叢雲だったのが、今回は八握が書き役になっています。
文章構成が少し違うのに気がついた人には違和感が有ったと思いますが、違和感の正体はこれです。
さて、今回は流河の容姿と名前について触れた内容となっております。
流河の現在の姿は『一歳の竜』ですが、元の人間になるイメージを浮かべると『五歳の男の子』になります。
名前は『クルアレイク』の辛口評価により、『天野流河』から『リュウガ·ヴェルバーン』になりました。
次回は、夜空に舞う内容の予定です。
次回も宜しくお願いします。
※この作品は不定期更新です。