第二話 【異世界カルマ】
流河は疑問を解決するために、魔道書クルアレイクに質問することにした。
「クルアレイク、気になることをどんどん聞いちゃっていいかな?」
「構わないから、じゃんじゃんどうぞ。」
よかった、意外と簡単にOKしてくれた。相変わらず上から目線なのが気になるが、放っておくことにしよう。
「じゃあまず、この世界の名前を教えてもらえないかな?」
「いいわよ。この世界の名前は『カルマ』っていうのよ。」
「カルマ?」
「そうよ、この世界の神『神竜 イシュナ・カルマ』が創造した世界だから『カルマ』よ。」
「なるほど~。この世界の神の名前から取っているのか。」
この世界はどうやら神ではなく神竜が創造したらしい。神竜が神なのか・・・?
「じゃあ次に聞きたいのは、さっき君が『魔族』って言ってたけど、この世界には何種族いて、どんな種族がいるの?」
「全部で5種族あって、『人族』、『獣人族』、『魔族』、『精霊族』、『竜族』よ。私は『魔族』の王『カルテナ』に作られて、あなたは『竜族』に属しているわね。」
「なるほど。僕はやっぱり竜になってるんだ。」
「そういうこと。」
僕は、小説で得た知識から僕が竜になってしまった原因をいくつか思い浮かべていたが、そのうちの一つに、「この世界に転生した瞬間に、現在存在する種族にランダムで変化した」というものがあったので、あまり驚いていないし予想の範囲内だ。
「じゃあ、その5種族の特徴を教えてくれないかな?魔族以外の王の名前も知りたいし。」
「はいはい、了解。え~とまずは、それぞれの王について話そうかしら。あなたのいう通り、5種族すべてに王がいるわ。」
「ふむふむ。」
「で、それぞれの王の名前が、『人王 アルド・ヒューマルム』彼は魔法と体術の併用が得意で幾つもの魔法体系を編み出したわ。次に『獣人王 ウルフォード・セリアーノ』あれは武闘派で面倒くさいの一言しか言えないわね。次に我が王『魔王 カルテナ・サタナーガ』彼女は多夫一妻の王で有名だから夫は不特定多数いるわ。」
「君の元ご主人様は、かなりの男ったらしのようだね。」
「ほっといてよ。次行くわよ、『精霊王 ゲルザイド・フェリアリア』その妻『精霊女王 ナリアーナ・フェリアリア』とは仲睦まじい夫婦として知られているわ。で、最後に『竜王 ヴェルヒルド・ドラグニル』自由気ままで王らしくなかったけど五人の王の中で最強と謳われていたわ。」
5種族それぞれの王はしっかり政治を行っているのかは分からないが、一応王という位は存在し、魔王以外は結婚もしているらしい。
「ふ~ん。じゃあ今、その王たちはどこにいて何をしているの?」
「・・・」
「どうしたの?」
「・・・分からないのよ。」
「分からない?他の王の事ならまだしも、君の元ご主人様の魔王カルテナの事も?」
「うん・・・分からない。」
「まったく分からないって訳じゃないでしょ?」
「そうなんだけど・・・知っている限りのことでもいい?」
「構わないよ。今はこの世界の情報は知れる限り知っておきたいから。」
「じゃあ、知っていること全部話すわ。」
「よろしく頼む。」
「人王は寿命で100年以上前に亡くなっているわ。彼は人族にしては長生きしたほうよ。で、獣王は戦死したと言われているわ。武闘派の彼にお似合いの死ね。わが主のカルテナは、行方不明になって今は死亡説が上がっているけど実際のところはわからない。」
「君の元ご主人様のことだよね?」
「そうよ。わが王のことなのに何もわからないのが悔しいわ。続けるわね。精霊王は、国ごと世界を放浪中で今はどこで何をしているのか分からないのよ。最後に竜王ね。彼は行方不明でどこにいるかわからないの。死亡説が上がっていないのが不思議ね。」
「ほう。王についてはわかったけど、この世界の現状を教えてほしいな。」
「了解。今、世界は危うい状態にあるといっても過言ではないわね。」
「危うい状態?」
「そ。それぞれの王の所在が分からない(分かっていても死亡している)今、治める者がいないため、各種族の均衡が破られようとしているの。」
「ふむふむ、具体的には?」
「まず顕著に表れているのは、人族と獣人族、魔族の3種族の対立ね。彼らは常に力を求めている。求めるがために争いが起きる。争いを止めるのにも力が必要。ゆえに争いが止まらない。」
「なるほど、それは確かに危ういな。ほかの種族は?」
「竜族は王が居なくなったために、生活のバランスが崩れ絶滅の危機に瀕しているわ。」
「なんだって!竜族がそんな事になっていたなんて。」
「きわめつけは精霊族ね。彼らの王は何を考えているのか、この世界の大地から精霊族の国を切り離し、国を浮遊させ、3種族の対立を治めるどころか傍観しているらしいのよ。」
「はぁ~。この世界の現状はだいたい把握した。つまりは、最悪の状況だっていうことだよな?」
「そういうことね。」
この世界に関して深く知った流河は、ため息とともに落胆した。
どうも、作読双筆です。
二話目をお送りします。
この話は会話メインになってしまいましたが、内容は充実したものとなっています。
次回は、竜についての話をしていく予定です。
次回もよろしくお願いします。
※この作品は不定期更新です。