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星空のパッセージ【改稿対象】  作者: 小林汐希
4/12

4話

『弥咲! すぐに来て!!』


 この日は宿泊客もいなかったので、全員がそれぞれの部屋で寝静まっていた時、凪紗の叫び声が全館放送で流れた。


「どうした!」

「何かあったの?」


 呼ばれた弥咲だけでなく、奏空も飛び起きてパジャマのまま凪紗の部屋に集まった。

 自動管制にしてある機器から、個人の部屋のモニターに転送してあるデータに赤い文字が点滅している。


『遭難信号・テレメトリバースト受信』


 凪紗や弥咲には一番恐ろしいメッセージだ。


 自動的に発信されたもので、船体のコンピュータが自己修復できないと判断したときに、いわばダイイングメッセージのように保存していたデータを一気に送信する仕組みだからだ。


 弥咲はその場でデータを見て断言した。


「機体のダメージはなさそう。今のところみんな無事だと思うよ」


「ねぇ……」


 それまで二人のやり取りを見ていた奏空が座り込んだ。


「どうしたの奏空ちゃん?」


 顔が真っ青になった奏空に驚く二人。


「便名見て……。渚珠ちゃん……」

「えっ!」


 今度は二人とも顔が固まった。

 レーダー記録の一番上を見る。奏空の言うとおりだ。


「と、とにかく私管制室に行ってみる。二人とも力を貸してちょうだい」


 凪紗がすぐに着替えて飛び出していく。


 さすがにパジャマでは行けない。二人とも各々の部屋に飛び込んだ。





 10分後、三人は管制塔のモニターを見つめていた。

 先ほどの遭難信号のニュースはすでにテレビなどでも速報で流れていた。

 緊急特番が組まれている局すらある。



「とにかく、何が起こっているのか確認しないと」

「うん……。弥咲ちゃんどんな感じ?」


 奏空の問いかけに、弥咲は難しそうな顔をしていた。


「うん……、機体は大丈夫だと思うよ。空気漏れとかではなさそうだし。でも、たぶん……」


 弥咲はレーダー画面を見ていた。


「音声とデータの通信はどう?」

「ううん……どっちも」


 凪紗が首を横に振る。


「ブレーカーが切れてるデータが来てる。だから、それを何とか戻せれば……」

「ブレーカー切れても予備電池があるでしょ?」

「うん。でも出力が弱いから通信に回せるかどうか」


「渚珠ちゃん、何とか出来るかな。お話しさえできればなぁ」

「コックピットにさえ入れればなんとかなると思う」

「でも、普通の人は中に入れてもらえ……あっ!」


 奏空と凪紗が顔を見合わせる。


「本人、気付いてるよね……」

「渚珠ちゃん……、お願い。気付いて……。渚珠ちゃんなら入れるんだよ……」


 航行中の船内で、操縦室に入れるのは、当然ごく限られた人物に限られる。

 それは、仮に弥咲や凪紗でも同じこと。許可がなければ入ることはできない。

 しかし、この非常時に例外的にそれが許されている資格がある。


 これだけの強力なメンバーが揃うALICEポートの中で、渚珠だけが唯一持っている一等航行士。周回軌道上だけでなく、外宇宙をコンピュータなしでも計器と誘導ガイダンスだけで運行させる事ができる技術。

 渚珠はこれを史上最年少で習得していた。勉学には関係なかったので、学校では公表してこなかったけれど、彼女のIDを確認すれば保有資格にきちんと登録されている。


 コンピュータを使用して運行ができる二等航行士でも、連絡船の運航は可能で、船長となっている場合も多いし、凪紗もそれは持っている。

 奏空の捜索で、この船についてもそのパターンだと分かった。ならば、例え相手が船長だとしても、渚珠が身分を明かせば指揮権を持つことも可能だ。


「渚珠ちゃんと連絡さえつけばきっとなんとかなる。私たちは信じて準備しましょう。弥咲は機体についての情報を集めてちょうだい。奏空は情報収集と、来たら報道の対応お願いできる?」


 二人が部屋を出ていった後、凪紗は星間運行本部を呼び出した。


「あの、無線の出力制限を一時解除お願いします」

『どうしましたか?』


「A1592便にコンタクトを試みます。標準出力ではアンプなしでは聞こえません」

『まさか……』


 受話器の向こうが絶句した。


「まだ、船内の状態は分かりません。でも、バーストの内容は解読ほぼ終わりました。船体は無事です。最後の位置から各レーダーサイトを使って場所を割り出しています」


 それ以上聞くまでもない。運行本部よりも、傍受していた凪紗たちの方が対応が進んでいる。


『分かりました。周波数についてはモニターに出します。出力については無制限とします。進捗が分かりましたらお知らせください』


「ありがとう」


 これで弥咲の準備はできた。あとはレーダーからの結果を待つだけだ。



「みんな、アンテナには近づかないでね。溶けちゃうわよ」

「まさか?」


 戻ってきた弥咲に冷や汗が浮かんでいる。


「もうすぐ、場所が分かる。そこに向けてフル出力でコンタクトを試みます」


 普段は見えない電波でも、最大出力ともなれば近距離で照射された場合、もはや兵器だ。しかし、25万キロ離れた、しかも砂粒のような宇宙船にアンプなしで声を届けるには、かなり乱暴だがこれしかない。


「凪紗、見つけた!」

「どこ!?」


 弥咲の叫び声に即座に反応する。


「ルナの天文台経由で見つけたよ。モールス信号にてSOS発信中。場所座標はモニター1番に出てる」

「さすが渚珠ちゃん」


 闇雲に動き回るよりも遭難信号を出して、指示を待った方が良い。


「渚珠ちゃん、受け取ってよね……」


 凪紗は信号を受信したレーダーにそのまま追跡を依頼して、操作台に座った。


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