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星空のパッセージ【改稿対象】  作者: 小林汐希
10/12

10話

 先に乗客を下ろして、ようやく二人のクルーと一緒に、兄妹を連れた渚珠が出てきた。


「終わったぁ……」


 画面を見ていた三人もようやく緊張が解けた。


「ねぇ、みんなでお風呂に入って、ご飯たべて寝ようよ」

「そうだなぁ。3日間入ってないのか?」

「私お風呂用意してきます」


 報道陣が片付けを終わり、凪紗たちもテーブルを中に入れた。


「どうもお世話になりました」


 あの、一番最初からここにいた記者だった。


「お構いできずにごめんなさいね」

「いえ。やはり皆さんは最強のチームですね」

「一番の誉め言葉ですよ。光栄です」


 渚珠が帰ってきてから、また取材に来ると残して引き上げていった。




 その日の食事は予想に反して質素なもので終わった。誰もそんな気力もなく、奏空も最小限で済ませたからだ。

 豪華なものは渚珠が帰ってからでいい。みんなで食卓を囲みたいと。


 久しぶりに三人で風呂に一緒に入った。


「やっぱり、渚珠ちゃんいないとなんか足りないなぁ」


 当初はいなかった渚珠が今では絶対に必要なピースだ。


「あ、帰ってきたら今度は正式な所長さんだよ?」

「しまった。任命式むこうでやられちゃうか……」

「いいじゃない。ここはここでやれば」



 すっかり静けさを取り戻した建物の中を抜け、パジャマのまま凪紗は管制塔でつけっぱなしだったモニターを消していく。


 今日は申し訳ないが臨時休業とさせてもらおう。

 休業モードに更新して、最後に彼女も部屋に戻った。






「おねえちゃん!」

「姉ちゃん」


 佑都と佳奈がアテンダントに連れられて入り口まで来ていた。


「よく頑張ったねぇ。もう大丈夫だよぉ。おうちに帰ろう」


 自分が居ないことで、不安にさせてしまった。やむを得ないことだったけれど、やはり責任は感じている。


「姉ちゃんは凄いんだなぁ」

「えっ?」


 佑都が予想に反して面白そうに話してくれた。


 周りの乗客やアテンダントたちが、ずっと二人の相手をしていてくれたと同時に、あの場で飛び出していった渚珠の事を分かりやすく説明してくれたとのこと。


 二人にとっては単なる姉という存在だったものが、羨望の的に変わった。


「俺、将来は姉ちゃんみたいになる」

「あたしも……」

「あらぁ、どう話せばいいのかなぁ」


 ゲートまで来ると、やはり二人の両親は迎えに来ていた。


「お待たせしました」

「よく頑張ったな。渚珠」


 二人を連れてその前に行く。これまで自分の保護者として世話になっていたし、今回の旅のもうひとつの目的が、この一家から自分の部屋を無くすことだったから。


「疲れました……」


「渚珠!!」


 後ろから駆け寄る音がして、彼女はその人物に飛び付かれた。


「よく……無事で……。あんた頑張りすぎだよ……」

「桃ちゃん……。ただいまぁ」


 カメラがあるのもお構い無し。桃香は渚珠を抱きしめたまま号泣した。


「やっぱ、凄すぎるよ……。最初は絶望ってニュースばっかりだったんだから」


 やはり通信まで途絶えたということで、悲観する声が圧倒的で、彼女たちの名前も犠牲者扱いされた報道もあったそうだ。


「卒業式も簡単にされたし、まぁ、うちのクラスはそれどころじゃなかったけどさ」

「卒業式かあ……。出られなかったなぁ……」


 本来なら、卒業式前日には到着していたはずで、本来の目的には間に合わなかったことになる。


「あ、そうそう。今日の夕方5時に学校に集合だって。うちのクラスは連絡来てるよ? もちろん渚珠も」

「へぇ?」


 証書を取りに一度学校に行かなくてはならないと思っていた。


「じゃぁ、あとでまた迎えに来るよ」

「うん、たぶん寝てると思うから起こしてぇ」


 久しぶりに懐かしい玄関を開けた。


「ただいまぁ」

「お疲れさま。少し休むでしょ?」

「うん、シャワー浴びてもいい?」


 結局、4日間で目をつぶったのは数時間だ。夕方出掛けるなら髪の毛も洗っておきたい。

 両方の制服をクリーニングマシンに入れておく。これで次に出掛けるときには出来上がっているはず。桃香から、学校に行くときに仕事の制服も持っていくように言われたからだ。


 手早くシャワーを使って体を洗った。やはり湯槽にお湯を張って自由な時間使えるアクトピアとは違う。やはり、自分はあちらの生活の方があっているのかもしれない。そんなことを思いながら、自分の部屋に戻った。

 まだベッドと机、壁の時計、カーテンと若干の私服を残してあるけれど、それ以外の装飾はほとんど外してある。今回、この家を出るときは、まだ個室をもらっていない佳奈のために明け渡す予定だ。彼女が必要なものを残して明日処分して、明後日には再び旅立たなくてはならない。


 そんな予定を考えながら、渚珠はベッドの上で目をつぶった。



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