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金貨が一枚

もうちょい軽い感じに書くつもりだったんですが^^;

登場人物増えれば軽くなるかも?

 思えばろくでも無い人生だった。


 親の借金から始まって、親友だと思ってたバカ野郎に勝手に連帯保証人にされ(良くウチに遊びに来た時にたまに手の離せない時に宅配便の受け取りとか頼んでたんで判子なんかの場所知ってたせいか、留守番頼んでコンビニ行ってる間にやられたようだ、通帳とかは無事だったんで気付くのが遅れた)、死ぬほど働いて返したと思えば体がぶっ壊れて雇用保険暮らし、再就職先はブラック企業でサビ残当然、給料遅延も当たり前、そして週明けの今日、会社の入り口に貼られていた事務的な紙切れ一枚。

 再びの無職確定・・・。


 次の給料まで、となんとか保たせていた気力がすっかり抜けたら、魂まで抜けそうになってやがる。

 

 「過労死かよ・・・。ホントついてねぇな、次の人生なんてもんがもし有れば、次は金に苦労しないで済むといいな・・・。」


 『よっしゃ、わかったで~』


 薄れていく意識の中で、そんな声が聞こえた様な気がした。




 ◆

 ◆



 

 死んだと思った俺は、生まれ変わったらしい。

 人の恋路を邪魔した訳でも無いのに馬に蹴られて死に掛けたのをきっかけに前世を思い出した。

 金に困ることの無い暮らし・・・確かにそうだけどよ、生まれてから一度も金に触った事すらねえし、それで生活には困った事はないしな。

 

 割と豊かな村の農家の四男に生まれた俺は、将来的には家で飼い殺しにされるか、追い出されるかが確定していた。


 貧乏は嫌だ。


 俺は空いた時間を使って薬草やら木の実を取ったり、成長して武器が扱えるようになると自作で弓をこさえては狩りをしたりと、色々な手段を使って小銭を稼いだ。

 そのたびに速攻で親に取り上げられたけどな・・・。


 そうして迎えた12歳。

 12歳で成人、15までは見習い職業に就くことが認められ、15を超えると完全に大人扱いされるこの世界。

 俺は独立し、ともかく街に行ってみることに決めていた。


 ゲームする余裕も、テレビを見る暇も無かったがたまにコンビニで漫画の立ち読み程度はしていたから知っている。

 この世界、魔法やダンジョンがあって、モンスターや亜人がいるいわゆるファンタジー世界だ。


 村には魔法が使える人間はいなかったが、冒険者が使う薬草なんかは取れて、たまに冒険者たちが立ち寄ることもあった。

 

 まあ、体力なんかは人並み程度だし、魔法とか使える兆しも無いんで冒険者になる気はないが、そういった人間相手に商売かなんか出来ないかと考えている。



 「僕は町に行く」

 この世界での父親(前世の父親に比べれば随分とマシな親だ)にどうするか聞かれた俺は、そう答えた。

 内心での一人称は「俺」だが、村の男の子の一人称はみんな「僕」である。

 俺も会話では「僕」と言っていた。

 

 兄たちは長男は畑を継ぎ、次男は隣村へ婿入り、三男は跡継ぎの居ない村の鍛冶屋のところで12から見習いを始めていた。

 

 「そうか・・・なら、これを持って行け、お前が稼いだ金だ、ほんの少しばかりだが俺の方からも足しておいた。」

 そういって父が手渡してくれたのは、生まれて初めて見る金貨が一枚。

 

 俺が稼いでいた小銭は銅貨レベル、今まで稼いだものを全部合わせても金貨には当然足りない。

 貧乏ではないとは言え、贅沢をしまくれるほど裕福でも無い俺の家だ。

 有り難さに視界がにじむ。

 

 「街まで三日はかかるでしょ? ちょっとずつ食べれば街まではもつはずよ。貴方ならしっかりしてるから大丈夫だと思うけれど、良く考えて食べなさいね。」

 今日の昼夜の分になりそうな弁当と、干し肉、干し果物に固い薄焼きパン、慣れ親しんだ母の味もこれを食べ尽くせば当分お預けだ。

 

 「お前のナイフ、研ぎ過ぎて薄くなっちゃってるだろ? こっち持ってけ?」

 畑仕事の合間に顔を見せてくれた兄が、まだ鞘の皮も真新しいナイフを手渡してくる。

 年が離れていることもあって、あまり一緒に何かをする機会は無かったが、気がつくと見守ってくれたり、ちょとしたアドバイスをくれたりと、今思うといい兄だったと思う。


 「それじゃ、行って来ます!」


 護身具を兼ねた背丈ほどある木の杖をつくと、俺は村の外へと歩き出した。

 

 何度か振り返る。


 兄が最初に仕事に戻ったのか姿を消し、父もその内、姿を消していたが、見えなくなるまで母は手を振り続けていた。



 ◆

 ◆



 街道沿いにある高さ2メートル程の石の塔、町から一定の距離ごとに立っているというこの塔は、ちょっとしたモンスター払いの力を持っていて、旅人がここで休息したり、今の俺の様に野宿をしたりする場所になっている。


 俺の他には誰も居ない。

 収穫のシーズンからは外れているため、村の人間が街に物を売りに出ることもないし、村を定期的に訪れる商人もこの間来たばかりで、次に来るのは当分先だ。

 

 背負い袋を枕に、皮のマントを体に巻きつけるようにして、杖を脇に突き立てて眠りに入る。

 なんとなくまさぐった上着のポケットの中には金貨が一枚。

 落として無くしてしまっては敵わないと、どこに仕舞い直そうか考えつつも、急速に襲ってきた眠気にそのまま俺は眠りに落ちた。



 

 ◆

 ◆



 ポケットの中には金貨が・・・2枚。


 これはどういうことだ?


 寝ている間に誰かが入れていったのか?


 そんなバカな。


 無くなったならまだ分かるが、なんで増えているんだ?


 まあ、これ以上、ここで考え込んでいても仕方が無い。

 俺は立ち上がり、落ち着きのある位置に背負い袋を調整すると杖をついて歩き始めた。



 ◆

 ◆



 街に着いた。


 ポケットの中には金貨が8枚。


 何故なのかは全く分からないが、一日経過するごとに所持金が倍になっている。


 これだけあれば仕事がすぐに見つからなくても生きてはいけるが、持ち慣れない大金に周りの人間がすべて犯罪者に見える。


 まあ、どこから見ても農村から出てきた子どもにしか見えない。

 この国はそんなに治安が悪くなく、経済状態もいいため、人買いなども居ない。

 警戒するだけ無意味と言うか、かえって不自然に見えてトラブルの元になるだろう。


 ともかく疲れたので宿を確保する事にする。


 この街には冒険者などが泊まる酒場と一体になった宿と、商人が主に利用する食堂と一体になった宿があるそうだ。酒が入るとただでさえ荒っぽい冒険者は余計荒っぽくなるだろう。村に来る商人のハンスさんも利用することがあると言っていたし、商人が泊まる宿に泊まることにする。


 金貨を出し、一週間分の宿代のお釣りとして銀貨60枚を受け取る。

 これでポケットの中は金貨が7枚と銀貨が60枚になった。


 田舎者丸出しのこの服はこの街では目立つ。

 金貨1枚きりなら躊躇したところだが、なんでかわからんが金はある。

 銅貨30枚で汗と埃をぬぐう水の入った桶と布切れを借りて、体をぬぐってから宿の女将さんに服屋の場所を聞いて出かける。

 

 下着を上下3枚ずつと旅行用の丈夫な服を2着、街中用の服を2着それぞれ買う。

 金貨1枚で銀貨33枚お釣りがきた。

 金を余り持っていない様に判断された上で言われた金額なので、ボラれたりはしていないだろう。

 

 買った内の街用のものに着替え、店を出る。

 着てた服を処分するかと聞かれたが、旅立ちに際して母が用意してくれたものである。

 街の住人からすればボロく見えるのかもしれないが、「それをすてるなんてとんでもない」である。保存食や弁当が無くなってぺたんこになっていた背負い袋に買った他の服と一緒に入れる。

 

 初めて見る街、当然村よりは物が多いが、前世の日本の記憶がある俺の目から見ると実にローカルだ。

 腐敗臭がする肉屋、扱っている肉は腐ってはいないが、解体やらなんやらで出たものの処理が完全ではない、まあ、この辺は現代日本レベルを求める方が間違っているのだろう。まだ原型をいくぶんか残した吊るされた肉を見る限り、牛や豚だけでなくモンスターの肉も扱っているようだ。


 そうして歩く内、皮細工の店を見つけた。

 いつまでもポケットに入れておくのもなんだろう。

 俺は財布を買う気になって店に入った。


 皮製の財布、前世で立ち読みした雑誌で「いいなぁ」などと思っていたものもあったので、そんな感じのものがあればと思って入ったのだが、よくよく考えてみればこの世界には紙幣は無い。

 ・・・バイカーズロングウォレットみたいな財布があるわけが無かった。

 固めの皮で出来た筒状の腰に紐でくくりつける小物入れと、柔らかい皮で出来た巾着袋の様な袋の2つを購入したところ、胡散臭げな目で見られたが合わせて銀貨40枚にまけてくれた。

 目つきは悪いがいい人なのかもしれない。


 とりあえず今日はこの辺で、と宿に戻ることにする。

 女将さんがあと少しで夕食が始まると教えてくれた。

 

 部屋に戻り、巾着の方に銀貨を全てと金貨を1枚、小物入れの方に残りの金貨を入れた。


 夕食を取り、部屋に戻って寝る。

 久々のベッド、板の感触が直に来る村の自宅のベッドよりも寝心地はいい。

 旅の疲れもあって、すぐに眠りに落ちた。


 

 ◆

 ◆



 巾着袋の中に金貨が2枚と銀貨が132枚と銅貨が140枚。

 小物入れの中に金貨が12枚。

 昨日の残高がそのまま2倍になっている。

 分散して持っていても関係無いようだ。

 

 金に苦労しないで済みそうだというのはいいのだが、理屈も何故なのかもわからないのは不安だ。

 

 それにだ。

 倍倍ゲームで所持金が増えると出来るだけ金貨を残す形にしても10日後には金貨が1千枚を超えてしまう。

 一ヶ月もすれば億の単位だ。

 そこまで行ってしまうと、流石に誰にも気付かれないという訳にはいかないだろう。

 

 かといって定期的に使って減らすと言ってもこの田舎町では限度がある。

 目立たず金を使える場所、都に行くしかないだろうな。

 ここからどの程度かかるかは分からないが、ある程度行けば同じ方向に向かう人間も増えて乗合馬車などもあるだろう。

 以前、そんな話を村に立ち寄った冒険者に聞いたことがある。

 お金を使うという意味でもそうした馬車を利用するのはいい方法だろう。

 出来るだけ移動にかかる時間を減らさないと、金貨の重さのあまり動けなくなるか、金貨を捨てる破目になりかねない。


 そういや、この世界、魔法があるんだよな。

 重さや大きさ無視できるバッグとか袋とかあるかな?

 あったらまず最優先でそれを買おう。


 それから買うとしたら家、いや店かな、自宅兼用の。

 なんかの商売をしている体裁を取った方が、金を持っていても不自然じゃない。

 元々商売人になるつもりだったしな。

 うん、そうしよう。


 ネックは俺がまだ見るからに子どもな外見をしてることなんだよなぁ。

 せめて二十歳超えてりゃ多少金持ってても不自然じゃないけどなあ。


 これが奴隷とか居るところなら、まあ、制度的には俺も抵抗感あるけど、ただ、そういうのがあれば、大人の奴隷を買って、表向きの対応をさせるとかも出来るが、あいにくというか運良くというか、少なくともこの国には奴隷は居ない。

 かといって、普通の大人に頼んでとかいう話も、信用出来る大人かどうかなんて、親友だと思ってたヤツに前世で借金背負わされた俺に見分ける目があるなんて自信の持ちようが無い。

 まあ、村レベルの知識しかない俺だからな、実際都に向かう途中や都に着いてから情報を集めるしかないか。


 ともあれ、これからの旅を考えると、この街にいる間は所持金を金貨一桁枚に納めておきたいな。

 普通、逆だろ?

 いかに金使わずに済ませるか頭悩ませるトコを、いかに金を使うかで頭を悩ませるなんて・・・。


 前の人生考えりゃ、文句言ったら罰が当たるけどな。


 

 

金貨のみ保持でも一月で2の30乗=10億枚強

ハーフオンス金貨相当として1万6千トン以上

個人で対応出来るどころか国家備蓄レベル^^;

国際的に金の価値が暴落してしまいます

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