かぐや姫の憂鬱
僕は彼女のことが好きだった。
そこで、放課後に呼び出して告白することにした。
「嫌」
即答。
ヒグラシの泣き声が僕を慰めているようだ。
『ゲンキダセヨ』
やかましいわ。
もうすでに泣きそうになるが、勇気を出してその理由も聞いてみた。
「なんとなく」
一番ダメな理由だろう、それは。
欠点を指摘されればそこを直せばいい。
だがこれは直しようがない。
彼女は僕のことが『嫌い』なのではなく、『興味がない』のか。
───もう泣いていいですか?
すると、そんな僕の様子を見て、彼女が口を開いた。
「私が条件を一つづつ出すから、それを全部果したら、付き合ってあげる」
僕は涙目で即座にうなずいた。
【その一:私が好きな理由を800字以内で記述すること】
彼女からメールがきた。
これが条件なのか?
どこの大学入試小論文だよ。
机に座って一時間、考え続けた。
やはり800字きっかりで終えたらいいのか?
いや、短く簡潔のほうがいいのか?
少し考えて、原稿用紙にちょこっと書いた。
『君が好きな理由? それは君が君だからさ』
即座に破って燃やして土に埋めた。
結局、ありのままの自分の気持ちを800字に込めた。
二時間かけて書き上げた。
自分で読むとめちゃくちゃ恥ずかしいが、これで彼女が好きになってくれるなら、と思った。
翌日、僕はさっそく彼女に渡した。
後日、お昼の全校放送で朗読された。
名前のところまで、丁寧に放送された。
読み上げている放送委員が途中で笑いをこらえているのがわかる。
僕は思わず口に含んでいた弁当を目の前の友達に吹きかけた。
穴がなかったので、机の下に隠れて泣いた。
それでも、僕は彼女が好きだった。
【その二:野球選手、井原のホームランボールを取って来ること】
ネットオークションで井原のホームランボールを検索した。
野球は全然知らなかったが、有名なホームランバッターらしい。
とても高額で取引されていた。
全く手が出せないので試合を見に行って直接取りに行くことにした。
1日目は、ホームランすらなかった。
2日目は、ヒットすらなかった。
3日目は、試合さえやっていなかった。
毎日通っても取れなかった。
警備員さんに顔を覚えられた。
チームの全選手のデータが分かるようになった。
井原のホームランが次どの辺りに来るのかが分かるようになった。
僕の数年分の貯金が底をつきかけた。
ある日、ついに自分の所にホームランボールが飛んで来た。
とても喜んだがよく見ると相手チームのよく分からない外人バッターのだった。
そのままキャッチャーの所までレーザービームで投げ返した。
そしてついに、井原のホームランボールが僕の元に飛んで来た。
歓喜して踊り狂う僕。
それがバッチリカメラに撮られてその日のベストサポーターになった。
僕は翌日、早速彼女に渡した。
後日、草野球の少年達が使っていた。
すっかり野球通になってしまった僕が見間違えるはずがない。
僕が必死になって取ったボールが少年らによって打たれまくってる。
ボールとしては本望だろう。
僕は涙目になりながら家に帰った。
それでも、僕は彼女が好きだった。
こうして、僕は彼女の願いを次々に叶えていった。
ときには近所のケロべロス(隣の家の妙にゴツイ柴犬)と格闘した。
ときには近くの川を泳いだ。
はっきり言ってしまえば散々な目にあった。
だけど、僕の彼女に対する気持ちは変わることはなかった。
今日も彼女からメールがきた。
───それを見て、僕は泣き出した。
【title/これで最後だよ。
本文/
私の手術が、成功すること】
僕は急いで病院に向かった。
君が望むならどんなことでもする。
なんの願いでも叶える。
───だから、月には帰らないでくれ。
完全に勢いで書いた小説です^^
「エネルギックゴースト」の息抜きに書いたものです。
もしかしたら小説にすらなっていないと思う方もいらっしゃるかもしれません。
それでも、もしよろしければ感想・一言をよろしくお願いします。
また、気が向きましたら「エネルギックゴースト」の方もよろしくお願いいたします。
1/6 彼女視点の話を書きました。
もしよろしければ、そちらもよろしくお願いいたします。




