レーザーシステム起動
「向かうところ敵無しだな」
ディスプレイに映し出されている映像を見ながら、ベルッチファミリーのボスが嬉しそうに言う。
その後ろに立っている原はソルジャーたちが無残に殺されていく映像に、うつむき加減に目を背けていて、左右の拳はぎゅっと固く握りしめられていた。
ディスプレイ上に血みどろの手が映る。その手が棚に手をかけ、ずらし始めると、その奥に細く暗い、通路が現れた。
ディスプレイ上の映像が暗くなったかと思うと、色彩のない明るい映像に切り替わった。
「これがあれか?
暗視スコープと同じものだな」
その映像を見ながら、ボスが原に言う。
「はい。
高速撮像は行えませんが、照度0の環境下でも、自ら発光する赤外光で撮像は可能となっております」
そう答えた原の声は少し震えていた。
しばらく、階段の映像だけが映し出されている。
その先に鋼鉄で造られた扉が現れた。
映像の中、その扉に勢いよくぶつかるアーシアの拳が映しだされると共に、鈍く鉄が振動する巨大な音が広がった。
アーシアの拳が当たった部分には軽いへこみだけが映し出されており、大きなダメージが与えられていない事が、映像から読み取れる。
アーシアは自らの物理的攻撃では破壊できないと考えたのか、再度殴ることはせず、取っ手に視線を移した。
ディスプレイにズームアップされるドアの鍵穴。
次に表示されたのはアーシアの手だった。
左手で右の手首を掴んだかと思うと、右手首を引き抜いた。
その手首の無い右腕が鍵穴に向けられる。
ディスプレイの右側に新たなメッセージが表示された。
レーザーシステム起動。
パワー100%接続。
その瞬間、映像が落ちた。